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150話 集う人々

「おっちゃーん」


「む?おぉ、坊主か。なんじゃ家に不具合であったか?」


「ある訳ないだろ!それよりちょっと話があるだけどよ……なんか、随分と人が増えたな」


「坊主の家を造った後、共に作業をしていた者達が弟子にしてくれと、幾らか押し寄せてきてな。それで?」


アクセルはイリナ同様、かつて自分達の拠点建設のため大きく貢献してくれたバンドルを訪ね、ピーサリア現状を話し移住しないか尋ねてみる。


「むぅ……よし、良いだろう!!」


「おいおい、良いのか?そんなあっさり決めて」


「無論じゃ!この地で暮らしていたのは酒が美味いという理由以外にはないからの。……それに暇を持て余しておったのだ」


聞くとバンドルはアクセル達の拠点建設を終えたばかりの頃は、共に作業をしていたドワーフ達が弟子にと押しかけ、それなりに充実した日々を送っていたそうなのだが、大都市と言えるほど大きな街でもないため、需要が日々ある訳ではなく、手を子まねいていたそうだ。


「それにワシらで街を1から建て直すなど、職人には誉れ以外なかろう」


「だけど、俺たちの時とは違って材料なんかも限られた物しかないんだぞ?」


「えぇい、喧しい!承知の上だと言うておろう。それを工夫するのも職人というものじゃ」


「分かった。それで他のドワーフ達はどうするんだ?」


「無論、問答無用で連れていく。そうじゃ!しばし準備の時間をくれ。1日あれば良い」


「分かった。じゃあ明日また迎えに来るよ」


続けてアクセルはエディオンへと向かう。


「よう!元気か?」


「アクセルさん!前回素材を卸してもらってから来てくれなかったので心配してたんですよ?」


「はは、まぁ色々あってさ…でさ、ちょっと話が………」


相変わらず露店で商売していた薬師のカミルと話していると大声をあげゾロゾロと近付いてくる者達がいた。


「アニキーー!!!ご無沙汰しておりやす!」


「ハウルさん、皆さんもおかえりなさい」


「お、おう!お前らも皆元気そうで良かった。今はカミルと話があるからちょっと待ってくれ」


かつてカミルに集っていたならず者達とそれを率いるハウルも見ればかなり身なりも良くなっている。

そんな者達を一先ず置いておき、カミルにピーサリアへ移住しないか持ちかけてみる。


突然の提案にカミルもしばらく考え込んでいるようだ。


「…………………」


「姉さん、行こうぜ。あんたはこんな所で燻ってちゃいけねぇ」


「待て、お前らが口を挟む事じゃない。ピーサリアは安全を保証されているここより危険だし、何もないんだ。…………カミル、お前も断ってくれて全然良いからな?」


「アクセルさん、私…………行きます!!」


「本気か?」


「はい!そんな危険な所で日々頑張っている方達が居るんですよね?私も力になってあげたいです」


カミルは真剣な表情でアクセルを見つめている。


「…………分かった。無理に反対するつもりもないしな」


「は、はい!じゃ早速準備するので、1度家に帰りますね」


「分かった。俺もついてくよ」


そういうとアクセルはカミルの荷台を押しながら共にカミルの家を目指す。


そしてそこにはハウル達も同行するようだ。


「ん?お前は?」


「俺は姉さんに素材を届けに来たんでさぁ。…………アニキ。姉さんのこと頼みますよ」


「あ?お前ら、一緒に来ないの?てっきりついてくるものだとばっかり………」


「俺らみたいなならず者がいつまでも姉さんに付き纏う訳にもいかねぇ。良い機会だ」


「そ、それは違いますよハウルさん」


「あぁ、お前らがどうしたいか決めろよ」


「俺だって本当は行きてぇけど……だけどよぉ……」


「お前はカミルに恩を返すんだろ?お前の覚悟はそんなもんか?」


アクセルの挑発にもとれるそんな言葉を聞きハウルは手下達に振り向き、問いかける。


「俺は姉さんと行くぞ!残りたいやつは好きにしろ」


「へへ、俺、実は料理屋がやりたかったんだ」

「俺は鍛冶を少しかじってる」

「俺は農家の出だ」


口々に盛り上がる者達を見れば答えを聞かずとも返事が分かる。


こうしてピーサリアに14人の住人が増えた。


さらに翌日にはドワーフ達、大工集団が総勢7名が新たに加わり、ピーサリアを賑わせた。


「たった数日でこんなにも人が………アクセル様、本当にありがとうございます」


「俺は声をかけただけだ。ここにきた奴はみんなお前の想いに惹かれたんだよ。俺達も同じくな」


こうして本格的に復興が始まった。


ドワーフ達が簡易ではあるが、みるみる家を完成させ、カミルが薬師として人々を癒し、1部のならず者達がそれぞれの得意を活かし貢献し、イリナが魔道具で街を発展させていく。


こうした日々の中、シャルロットはかつての国とは少し違った国を目指した。


それは前ピーサリア同様、争いがない国を目指すが、自衛するための戦力は保有するということだ。


以前の国は自衛戦力すら持たない国であったがために、抵抗することも出来ず滅んだのだ。


それをうけ、騎士アーサーを最大戦力とし、残りのならず者達で自警団を結成し、それをハウルが率いることになった。


それと同時にステラが領地内に伝承に記された、オムニの木という大木を発見する。


これは木1本で国を持ち直すと言われるほど、万能な木であり、その実は多くの人の腹を満たし、葉は薬草の材料となり、樹液が肥料となる。とかなり貴重樹木だ。


しかしオムニの木は非常に環境に敏感で、生息条件がかなり厳しいが、ステラの知識と努力のおかげで全て解明し、オムニの木を街の近くに移植することに成功した。


さらにミラにより世界に情報がばら撒かれた。


ピーサリアという南東の国が、争いがない国を掲げ復興を目指している。と………


こうした情報が広まり、戦争や身分により虐げられた者や、争いを嫌うものが国を捨て、種族関係なくピーサリアに集まって来ていた。


そんな人々だからこそ、自らが国の1部であるとしっかり認識し、新天地であるピーサリアを1人1人が国を大切に想い、復興を果たしていく。

読んで頂きありがとうございます。

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