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149話 ピーサリアの新たな住人

「疑いたくはないけど……封印解いて大丈夫なのか?」


イリナの店から出たアクセルはミラに問いかける。


「それは彼女が好き勝手暴れるといった疑問か?」


「まぁ、そうなるな」


「何かあれば私が責任を持つさ」


「…………りょうかい。しかしホントにあんな作戦で大丈夫なんだろうな………」


「安心しろ。君は君が思う以上に影響力を持っている。必ず上手くいくさ。ステラも頼んだぞ」


「まっかせてぇ!」


こうしてアクセルはステラと共に教会へと足を運ぶ。


ここでも門番が入口を護っており、アクセル、ステラがギルドカードを提示することで教会の中に入ることが出来た。


「すぐに司祭様を呼んで参ります」


「頼む………………………随分とすんなり話が進むな」


「そりゃあ、かの有名な金狼本人が来たんだから、僕は当然だと思うけど」


そんな会話をしていると司祭が姿を見せた。


「あなた方がかの有名な、金狼殿と銀兎殿ですか……話は聞いております。こちらに」


司祭に案内され地下へと案内される道中、司祭が話しかけてくる。


「疑う訳ではないのですが、本当に封印の中のものをどうにか出来るのですかな?」


「あぁ、それは問題ない…………あんなは何が封印されてるか知ってるのか?」


「とある魔族の力を封じている。………と伝え聞いております」


「まぁ、恐らく間違いないな」


「でも良かったね!封印が弱まってた時期に偶然アクセル様が立ち寄ってくれて!」


実際、封印は弱まっている訳ではないし、アクセルも何が封印させているのか理解はしている。

これは全てミラからの指示なのだ。

ミラの筋書きでは、アクセル達高位の冒険者が偶然訪れ、封印が弱まっていると言い張り、再び封印するのではなく、封印諸共、消滅させる算段となっている。


「えぇ、これも神のお導き………感謝を!」


「じゃ、さっさとやるか。あんたは離れてな」


司祭に封印から距離をとらせ、ステラに司祭の護衛を頼む。

これらも全て演出だ。


アクセルが封印の前にたち、手をかざし、全身に魔力を漲らせていく。



「ねぇねぇ、ミラちゃん。ホントに上手くいくの?」


すでにピーサリアへ移住の為、ミラと準備をしていたイリナが問いかける。


「彼に任せておけば問題はないさ。しかし……」


ミラはそう言いながらイリナに鋭い視線を向ける。


「そんな目で見ないでよ。貴女達の信頼を裏切るようなことはこの先何があってもしないわ」


「そうしてくれ。私も貴女を手にかけたくはないからな」


「はぁ……ミラちゃん、随分と強くなったものねぇ…………………きゃっ!?な、なに!?」


そんな会話をしている時だった。

全身が震え上がるほどの巨大で、強大な何かをイリナが感じ取り動揺を見せる。


「彼だ。予想以上に派手にやったようだ。封印は消滅したはずだが、どうだ?」


「………………あっ……うん、大丈夫なはず」


「では予定通り彼らが帰ってきたらピーサリアへ向かうとしよう。それまでにソニアも買い出しから帰ってくるだろうからな」


「………………あれが人、1人の力?嘘でしょ…………」


しばらくすると帰りの道中合流したのか、ソニアと一緒にアクセルとステラも帰ってきた。


「ただいまぁ」


「おかえり、帰りは随分と時間がかかったな」


「いやぁ、教会のやつらが礼をしたいとかなんとかうるさくてさ……断るのに1番時間かかったよ」


「教会の人間といえど、あれだけ派手に力を見せつけられたのだ。君を引き留めたかったのだろう」


普段、戦いとは縁遠い者達にも感じ取れるほど圧倒的な力を見せつけたことで、封印が解かれた後、万が一封印の中身が暴れ出すのではないか、などという不安すらも一蹴し、アシュリットを出て、ピーサリアに辿り着いた。


時空間を体験したイリナは最初唖然としていたが、ピーサリアの現状を見たことで我にかえり、言葉を絞り出した。


「酷い……………………でも、ここが私の新たな地」


そんなイリナを他所に、ミラがシャルロットにこれまでの経過を話す。勿論イリナが魔族の混血であることもだ。


「……なるほど、わかりました。以前にもお話致しましたが、私はせっかく来て頂いたイリナさんを魔族だからと拒むつもりはありません」


「済まない。先に言っておくべきだったな…」


「いえ、街の皆さんも必ず受け入れてくれると信じています」


イリナもそんな様子を黙って聞いていたところ、アクセルが話しかけた。


「あんなちっこいのが人を想い頑張ってるんだ。それを踏みにじるような事をすればミラの恩人であるあんたでも容赦しないぞ?」


「分かってるわよ!馬鹿にしないで。……決めたわ!私もこの国の1部となってあの子を支えてみせるわ」


イリナも幼いながら人々を惹き付けるシャルロットに惹かれ、覚悟を決めたようだ。


早速イリナはシャルロットに魔道具の提案などをもちかけ、復興に協力し始める。


―数日後―


「やる気で溢れてるのは良いんだが、やっぱり進まないな」


「それは当然だろう」


ピーサリアの人々は士気も高く、復興に励んでいるのだが、思うようには進んでいなかった。


慣れない作業で怪我をする者、眠るのも大人数が雑魚寝であり、休息をしっかりとれていない者。

恐らくこれが長く続けば、たちまち士気を失ってしまうだろうということは簡単に見て取れた。


「薬師や大工が居てくれれば良かったんだがなぁ…………一応聞いてみるか」


「ふふ、あぁ、頼む」


アクセルは1人、心当たりのある薬師と大工のもとを訪れる。


読んで頂きありがとうございます。

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