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136話 リーレスト訪問その2

王宮へは直接赴くことが出来ない。


そのためまずは衛兵達の詰所へ赴き、王に面会を求める。


しかしいくら★7冒険者と言えど、一国の王相手に突然面会をすることは当然出来ない。


人魚についても今はまだ黙っておいた方が良いだろうと、面会の目的も明かせず、話は進展しないまま時間が過ぎていく。


そんな衛兵達との騒ぎを聞きつけ1人の男が現れた。


「何の騒ぎだ…」


「これはバンギ様っ!!突然、王に面会を求める者達が現れまして……普段なら即座に追い返すのですが、★7冒険者が相手となると、相手が相手だけに我々には判断が出来ず……」


バンギと呼ばれた男は説明を受けた後、アクセル達のもとへ姿を見せた。


そしてすでに顔に巻いた布をとっていたアクセルの顔を見るなり、体を震わせ声を漏らした。


「おぉ、おぉ!!!英雄たち……帰ってきたのか!」


「ぅえっ!?……隊長!!!!久しぶりだな」


このバンギという男、かつてアクセル達が戦った人型魔獣との戦闘においてリーレストを率い、戦闘後アクセルやミラを救った、当時隊長と呼ばれていた人物なのだ。


「バンギ様、お知り合いでございますか?それに英雄とは…」


「かつてこの国を救った英雄、その本人達だ。随分と人数は増えているようだが」


「前から言ってるけど英雄はやめてくれ……それで王に重要な話があるんだ。隊長、案内してくれよ。あと今は内密に頼む」


「承知した。……お前は先に王宮へ行き、英雄の帰還を王達に報せよ。他のことは捨ておき、最優先で行動するのだ」


衛兵に指示をだすバンギの言葉を聞き、苦笑いを浮かべるアクセル達。


そしてバンギの案内のもと、王宮へと辿り着いたアクセルは玉座ではなく、応接間へと案内される。


しかし応接間の扉を開いた瞬間、異様な光景が目に飛び込んできた。


かつて人型魔獣と戦闘に参加した兵達が壁際に整列し敬礼、さらには王と王妃までもがアクセル達を見た瞬間頭を下げ迎えてくれたのだ。


「おいおいおい……大袈裟すぎるよ。俺はこういうの苦手だって前々から言ってたのに…」


「だからこそ、これだけに留めたのだ……息災でなによりだ」


リーレスト王はそう言うとアクセルに歩み寄り、力強く抱きしめ、それに続き王妃ミレリアはアクセル、ミラの双方と熱い抱擁を交わした。


その後は十分再会を喜んだ後、本題を入る。


アクアもいつもとは雰囲気をかえ、人魚国の女王として立ち振る舞う。


そして魔法を解き、人魚であることを明かし交易の話が始まった。


アクセル達に出来ることはここまでだ。

あとはリーレスト王とアクアが話し合っているのを静かに聞き、話し合いが終わるのを待った。


そして夜、話し合いは良い方向で纏まり一旦終わりを告げる。

それからは歓迎の宴が始まった。


リーレスト王や王妃とだけでなく、かつて兵士ともアクセル達は和気あいあいと過ごし、さらには新米の兵士に握手を求められ困惑するといった場面もあった。


アクセルはそんな場の空気に耐えきれず、テラスに移動する。


「ふぅ………」


「随分とお疲れだな…」


そんなアクセルの隣にリーレスト王がやってきて声をかけた。


並び立つ2人は街を見渡しながらしばし沈黙を保つ。


「本当にこの国はいい所だ。色んな国をまわったけど、ここまで1つになった国は他に見たことがないよ」


「そうか!それは何よりも嬉しい言葉だ。そしてこの国が在るのはあの日、そなた達が脅威を討ち滅ぼしてくれたおかげだ」


「何回も言ってるが成り行きだ。…………そうだ!あの時の薬の代金払うよ。今はかなり懐も潤ってるからな」


「ふっ…それには及ばんよ。英雄…いや、未来を担う若者達を救うことが出来たのだ。それに対し見返りなど求めるはずもない」


「そう言わないでくれよ…何も言い返せないだろ」


「それでよい……それに、だ。あの秘薬には人が定めた価値など無意味なのだ」


「うん?」


「君の提案のおかげでこの国はさらに潤うことになるだろう。それに対する礼だ。秘薬について秘密を明かそう…皆でついてきなさい」


王妃と親しげに楽しんでいるアクアはそのままに、ミラ達を誘い、王の後に続く。


そして地下と向かい、見張りもいない重厚な扉の前に王は立ち止まる。


「この扉は、私…リーレストの王位を継ぐ者にしか開くことが出来ない物だ。とても強い誓約の力で護られている」


王がそう告げながら扉に手をかざすと、扉に触れた箇所から光が扉に走り、全体に行き渡ると重々しい音と共に開いた。


そしてさらに奥へと案内され、広い空間に出る。


そこには小さな泉があり、その中央には生気に溢れかえる苗木が植えられていた。


「ま、まさか世界樹か……」


「ほう……知っていたか。そう!あれは世界樹の若木。あの若木の葉から滴る雫が、我が国の秘薬の素となる」


リーレストの秘薬とは、世界樹の葉の雫にさらに材料を加え、優れた技術によって生み出されているのだ。


それは初代リーレスト王から続き、王位と共にその製法が受け継がれてきたという。


「この若木は生命力と共に意思があるとされている。秘薬を間違った使い方をすると、たちまちこの若木は生命力を失うと言い伝えられておる」


王の説明を聞きながらも、世界樹に見いてしまうアクセル達。


今まで見たことのある世界樹は加工された物か、枯れた物であったが、目の前にあるのは青々とした葉をつけた、言わば生きた物だ。


只只見入ってしまう。


そんなアクセル達の様子を察してか、リーレスト王は少し距離をおくため、アクセルに背を向ける。


リーレスト王が動いたことでアクセルは我にかえり、何気なしにチュチュ袋から世界樹の枝を取り出した。


「……………っ!?」


しかしその瞬間、目の前が真っ白になったかと思うと、先程とは全く違う景色が広がっていた。


「な、なんだ…」「うわっ!」「こ、これは」


仲間達の声に安堵するアクセルだったが、当然景色が変わったことで困惑を隠せないでいた。



読んで頂きありがとうございます。

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