134話 偶然の再会
翌日、ステラとソニアはダンジョンへ、ミラは療養を優先、アクセルはミラに付き添う為、拠点に留まっていた。
しかしそれほど時間をおかず、ステラとソニアが拠点へと帰ってきた。
「ん?どうした?何かあったか?」
「んー、うん。何でか分からないけど、ダンジョンの規制が解消されたみたいなんだ」
「……あぁ、そういえば、アイツがそんなこと言ってた気がする…」
「はぁ……どうせ君は世界樹に気を取られ話をちゃんと聞いていなかったのだろ…」
「悪い!その通りだ」
「なるほどぉ!どうせなら皆で行きたいって思って僕達帰ってきたんだ」
「そういう事ならミラがしっかり回復してからにしよう」
アクセルがそう締めくくる。
ミラの回復を待つのには理由があった。
アリスファミリー達との決闘では圧倒的な実力差を持って勝利となったが、だからといってアリスファミリー達は決して弱かった訳ではない。
そんな者達が足止めをくらっている敵が深層には存在しているのだ。
ダンジョンに本格的に潜るのであれば万全の状態で臨むべきだろう。
その後、ステラとソニアは拠点にそのまま留まるようで、代わりにアクセルが外出することになった。
アクセルは街をでて海へと向かう。
そして寝転がり世界樹を眺めながら物思いにふける。
ミラが襲われた時、ソニアとは違い自分は同じ街の中にいたのにも関わらず事は起きてしまった。
街全体に魔力を拡散していればこんな事にはならなかったのではないか。
そんな途方もないことをアクセルは考えていた。
(俺に出来ることは………)
アクセルであっても自らの力を全て引き出している訳では無い。
新たな可能性を自分の中で模索していた。
そんな時、海から知った魔力が凄い速度で近付いてくる。
アクセルは体を起こしその方向を見ていると、勢いよくアクアが水面へと飛び出してきた。
「アクセルーーー!!!!」
「おう!アクア、久しぶりだな」
偶然にも再びアクアと再会を果たし、近況を報告し合った。
「そうかぁ……ミラちゃんも大変だったんだね…アクセルが悩んでたのもそれが関係してる?」
「まぁそんなところかな…お前はまた陸上の情報集めてるのか?」
「っそうだ!私が手に入れたとっておきの情報教えてあげる………アクセルは魔獣って知ってる?」
「……知ってる」
「最近、その魔獣の中にね、体の1部を変異させた個体が混じって出現してるらしいの!さらにその変異した個体の1つは限りなく人に近い容姿をしてたらしいよ」
「人型………」
確かに最近はここ西大陸に留まり、世界の情勢についてそれほど詳しくはないのだが、それでも人型魔獣が再び現れたという情報は入っていない。
それどころか過去、アクセル達が人型を倒した1件から変異魔獣すら全く見かけなくなったのだ。
「でも安心して!その人型はたまたま旅をしていた人間が討ち取ったらしいよ。だからアクセル達も旅を続けるなら覚えておいて」
「…………………」
アクセルはアクアの言葉に疑問が生じる。
「なぁアクア、最近ってそれ、いつの話だ?」
「5、6年?多分それくらい前だよ?」
アクアは何食わぬ顔でそう告げる。
「………はぁ…………アクア、5、6年前を最近とは言わないだろ。それにその魔獣、倒したのは多分、俺とミラだよ」
「ぅええええええええ!?!?!?」
どうにも話が噛み合わないと思っていたが、アクアの情報源は中央大陸に住んでいる魚達らしい。
その魚が成長し、川から海にやってきたことで得た情報だったようだ。
「だ、だって仕方ないじゃん!私達にはそれくらいしか情報源がないんだし…」
「別に責めてるわけじゃないだろ…だけど、その方法だと新しい情報をすぐ手にするってのは難しいだろうな…」
「何か良い方法ないかなぁ?…そうだ!アクセルが私達に陸上の情報を教えてよ!」
「それは良いんだけど、俺達もそこまで詳しい訳じゃないし、何よりかなり偏った情報だからなぁ…人魚の国の役に立つかどうか…」
アクアが情報を求めるのは断絶された海に住まう人魚達を思ってのことだ。
アクア自身がそうであるように、陸上に生きる者達の文化や知識が全くといっていいほどない。
積極的に情報を欲しているためアクアに比べ、他の人魚達は皆無と言っていいほどだ。
「俺達もずっとここにいる訳でもないしなぁ…」
「確かに情報を教えてもらう為だけにアクセル達を縛り付けることになっちゃうか……他に教えてくれるような信用を置ける知り合いもいないし……」
「海も近くになきゃお前達も近付けないだろうしな……」
2人で腕を組み、うんうんと唸っていると、アクセルが何かを思い付く。
「………っ!!うんうん、これなら、なんとかなるかもしれない。アクア、ちょっと待っててくれ。皆を連れてくるから。すぐ戻る」
アクセルは即座に時空で拠点へと戻り、理由も告げず全員を連れアクアのもとに戻ってきた。
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