131話 ソニアの怒り
そして迎えた決闘当日。
時刻通りに闘技場へやってきたアクセル達。
すでにアリスファミリーの者達も揃っているようだ。
アリスに案内され内部へ移動する。
辿り着いた場所は舞台ではなく、舞台を取り囲むように造られた観客席がある場所。
そこから見える闘技場の舞台はとてつもなく巨大だった。
それもそのはず。
この闘技場の主な使用方はファミリー同士が行う擬似戦争なのだ。
そのため、かなりの人数が舞台に立てる広さとなっている。
聞けば最大で500人が戦いを繰り広げることが出来るらしい。さらに舞台と観客席は空間が隔たれており影響は受けないと、まさに馬鹿げた巨大建築だった。
そんな舞台に気をとられているとアリスから説明が成される。どうやら心を静かに落ち着け、目を閉じると幽体が舞台に生成されるとのことだった。
「では、行ってまいります」
ソニアはそう告げ、横になった後、目を閉じた。
そしてアリスの言葉通り、舞台に光が集まり、その光はソニアを象っていく。
少し透けていたり、形が歪だったりというような特徴も特に見当たらず、それはソニアそのものだった。
すぐそばで静かに眠るソニアを見た後、舞台にいるソニアにアクセルが声をかける。
「ソニア!!どこか変わったところはあるかぁ?」
「いえ!問題ありません」
ソニアは手を握ったり、開いたりした後に、アクセルに返事を返す。
そして改めて前に向き直るソニア。
そこにはアリスファミリーの精鋭達200人がやる気に満ち溢れ決闘の開始を待っていた。
そんな舞台の様子を確認し、アリスはアクセルに問いかける。
「本当に彼女1人でいいんだね?」
「あんたらこそ、精々200人くらいでソニアの相手するつもりか?」
そんなアクセルの返答を聞き、アリスはフッと笑うとアクセル達とは向かいの席へと去っていく。
そして。
「私の家族達……良く聞いてほしい。この戦い以降、遺恨を残すことは許さい。もし納得しない者がいるのなら………私の元から去ってくれ……………健闘を祈る」
アリスは最後の言葉を俯きながら告げた後、顔を上げ開始の合図をだした。
「はじめなさい!」
こうしてアリスファミリー200名、対するはソニア1人。
決闘が始まった。
最初に動いたのはアリスファミリー達だ。
司令塔エレンの指示の元、約半数に当たる者達の内、近接戦闘を主とする者達がソニアを即座に取り囲む。
その後方には弓や魔法といった遠距離部隊が展開。
魔法を詠唱し、いつでも対応出来るように待機している。
部隊を指揮するエレンに油断や慢心などは一切ない。そして余裕もなかった。
一瞬だけではあったが、ソニアが見せたドラゴンの姿。
あれを見かけだけの姿だとは到底考えられなかったのだ。
そしてエレンの号令と共に取り囲んだ者達が攻撃を開始する。
四方八方から遅い来る者達を見てもソニアは動かない。
しかしその身に炎が纏われた。
いの一番にソニアの元に迫った者が、炎を纏っていようが構わず武器を振り下ろす。
その武器は炎に触れた箇所から、何も残さず燃え尽き、更には腕、体、命と順番に焼き尽くした。
襲いかかったアリスファミリーの者達は全員が等しく同じ道を辿る。
それを見たエレンは慌てて指示を出す。
「ダメだ!!距離をとれ」
その言葉を受け団員は踏みとどまるが、ソニアが動きをみせる。
メキメキと音を立てながら頭部には角が、背中には翼が、腰には尾が生える。
僅かに宙に浮き、ボゥっと音を立てた瞬間、ソニアの姿が消える。
同時に後方で指揮をとっていたエレンの上半身がソニアの繰り出した拳により消え去った。
さらにその隣にいたドワーフのガンドールの胴体がソニアの振るった尾で真横に引き裂かれる。
そしてそれからは戦いではなく、ソニアによる蹂躙が始まった。
ボゥと音がする度に1人、また1人と消えていく。それは幹部である実力者達でさえも同じく……
魔法を放つがソニアの纏う炎がそれを飲み込み、玉砕覚悟で突撃を試みても、その全てがソニアに届くことは一切なかった。
瞬く間に数が減っていく舞台上。
そんな光景に、先に目を覚ましたアリスファミリーの団員達はボゥと音がなる度に怯え、震え、蹲る者もいるほどだ。
そして現在、舞台に立っているのは僅か3人。
ソニアは当然とし、狼の獣人オーグと、鳥の亜人そしてアリスファミリーの団長でもあるギザンだった。
「クソがクソがクソがぁあああ!!!!!!」
オーグが吠え、装備した爪で襲いかかる。
だが、爪諸共腕が燃え尽きる。
それでもオーグはソニアに蹴撃を放ち、その蹴撃はソニアの顔面を捉えた。
「これ程の力を………これ程の力を!!貴様は無抵抗な者に振るったのかぁ!!!!」
オーグの蹴撃はソニアの顔面を捉えはしたが、同時に燃え尽きている。
すでに身動きがとれないオーグに向け、ソニアは渾身の力を拳に込め、叩きつけた。
その一撃により地面から炎が吹き上がり、オーグはおろか舞台を砕く。
そんなソニアの背後から剣閃が襲いかかるが、避けることはせず、その剣は炎に呑まれ燃え尽きる。
そしてソニアは着地したギザンに射殺すかのような視線を向けた。
ギザンは着地しソニアに振り返ると、指をさしながら口を開く。
「貴様がどれほど強大な力を秘めていようと、私の正義にかけて貴様を討つ!仲間は、私が護るのだ!」
その言葉を聞き、ソニアが抱いていた感情が爆発する。
「貴様がその言葉を口にするなぁあぁあ!!!!!!!」
ソニアが吠えたと同時に、感情を映し出したかのように周囲に炎が荒れ狂う。
「仲間を護るだと?私にその言葉を言ってくれる方達は常にその背中を私に見せてくれた!あの獣人は私が意図的に最後まで残したが、しかし貴様は違う!!貴様は私が近付くと仲間を盾にし、その背中に隠れていたではないか!!そんな貴様があの方達と同じ言葉を口にするな!」
捲し立てるようにソニアが声を荒らげた。
そしてソニアの言う通り、ギザンは仲間を盾にし最後まで残っていたのだ。
観客席から見ていればソニアが言っていたことが真実だと、その場にいる者にはすぐ理解できた。
「悪の権化が何を口にしても、私の正義が覆ることなど有り得ない。貴様を裁くのは私の正義だ」
「貴様と口論する気などさらさらない。すでに興味すら…な」
ソニアの言葉と同時に舞台全域をソニアの荒れ狂った炎が包み込む。
そしてその炎が収まったあと、舞台に立っているのはソニアだけだった。
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