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126話 強襲

アクセルはアリスファミリーの拠点へと向かう。


すぐにでも駆けつけたかった。

持てる全ての力を使って、何よりも速く辿り着きたかった。

しかし、アクセルは普段と変わらない速度で歩いていく。


仲間を傷付けられ、拐われたミラを想うとアクセルの精神状態は限りなく限界に近かったのだ。


だが走り出してしまったら、押さえつけた理性のタガが外れ、怒りのままに暴れてしまうと自覚があった。





▽▽▽




教えて貰った拠点を視認したことで心が大きく乱れる。


ふぅ、ふぅ、と呼吸を荒げながらアクセルは門に近づいて行く。


そんな普通の状態でない者が近づいて来ているのだ。

門番をしている2人も警戒を強くし、止まるよう呼びかける。


「止まれ!!」


1人がそう口にした瞬間、アクセルはその門番との距離を詰め顔面を鷲掴みにし、問いかける。


「死ぬか、道を開けるか……選べ」


メキメキと音をたてながら、門番の顔面を鷲掴みにしたまま持ち上げる。


アクセルの腕にしがみつき、足をばたつかせ悶える門番。

もう1人の門番が慌てて口を開く。


「わ、分かった!!言う通りにする。離してやってくれ」


落とすように門番を解放し、奥へと進む。


当然、ただ素通りはさせてはもらえない。


すぐに連絡を受けとったのだろう。

アリスファミリーの者達数十名が武器を構え、アクセルから一定距離を保ちつつ取り囲み、ついてくる。


そんな状態のまま広い庭を進み、大きな建物を目指す。


しかし扉に近付くと、その扉が開き1人のドワーフが現れた。


全身を重厚な鎧で包み、巨大な盾と、片手で扱うには少々大きな戦斧を担いでいる。


「これ以上は…っ」


言葉を遮るように飛び出したアクセルは、ドワーフが持つ盾の上から横薙ぎに蹴り飛ばし、身体を"くの字"にしながらに扉に叩きつけられた。ドワーフが跳ね返って来たところ、顔を鷲掴みにし、再度、扉に叩きつけ扉を開いた。


「邪魔するなって言ってんだよ……」


それだけ言い残し、乱暴に開いた扉を潜る。


建物の中に入ると、予想だにしない状況に狼狽えながらもアクセルに武器を構える者達が数人。


アクセルはそんな者達には目もくれず、周囲を見渡す。


アリスファミリーの拠点に着いてから全力で魔力を展開し、ミラの行方を探っていたが、いっこうに見つからなかったのだ。


そしてすぐに、極太の格子で出来た移動式の牢屋のような物の中に、鎖で繋がれ磔にされているミラを発見した。


あれが牢屋がミラの魔力を遮断しているのだろう。


瞬時に牢屋の前に移動する。


消えたと錯覚するほどの速度で移動したアクセルにさらに動揺するアリスファミリーの者達。

それと同時に騒ぎを聞きつけた者達が続々と集まってきていた。


突然の襲撃に面食らったアリスファミリーの者達だったが、この街の頂点争いをしているファミリーの者達だ。

皆が熟練の戦士でもあり、人数が増えたことも相まってすぐに気を持ち直し、アクセルを排除しようと、アクセルの背後から迫る。


「主様…ここは私が…」


その言葉と共に、いつもより数倍巨大な狼姿でネロが現れ、迫る者を前足を振り、風圧で薙ぎ払った。


背後はネロに任せ、アクセルは極太の格子を無理矢理、素手でこじ開け、すぐにミラの首元にある物がミラを苦しめている原因だと理解し、全力で魔力を両手に集めた。


そしてその首飾りを掴んだ後、瞬時に引きちぎる。


同時にミラの身体を侵食していた蔓のような物も消えていく。


ホッと胸を撫で下ろし、ミラを拘束していた鎖も引きちぎる。


倒れ込んでくるミラを抱きかかえ、呼びかけるが返事はない。


すぐに胸に耳を当てると、弱々しいが確かに心臓の鼓動が聞こえた。


そしてそのまま立ち上がり、牢屋を出た。


「ネロ…ミラを連れて皆の所に戻れ」


その言葉を聞きながら、通常の大きさに戻りつつ近寄ってくるネロの背中にミラを預ける。


「承知致しました」


ネロは病的なまでにアクセルを慕っている。

普段なら例え自分の要求が通らないとしても、そばを離れたくないと言ってくる場面であったが、今回はそれをしなかった。


今回もその要求が通らないことは間違いない。

しかし普段なら優しくお願いされて、要求を撤回するのがいつもの流れだったが、現状はアクセルの機嫌を損ねるだけだと理解していたのだ。


そしてなにより口答え出来る雰囲気でもなかった。


ネロもアクセルとは魔力で繋がっている。

その恐怖を感じる程の怒りを感じとっていたのだ。


ネロは背中に降ろされたミラを自身の黒い魔力球で優しく包み込む。


「行け」


アクセルのその言葉と共に放たれた飛ぶ斬撃により人波が割れたところをネロは進み、離脱していく。


それを見届けた後、アクセルは剣をしまい、周囲に呼びかける。


「鳥の亜人と狼の獣人………そいつら以外に用はない」


それだけを伝え、押し黙った。

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