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121話 問題解決へ

ステラがカタナを手に取ると嵐は収まった。


それほど時間を置かず帰ってきたアクセルから事の顛末を聞き、シンは腕を組み、目を閉じて何やら思案しているようだ。

おそらく思いがけない結末に頭の中を自分なりに纏めているのだろう。


「それで……原因は分かるか?」


「……ステラ、カタナちょっと見せてくれ」


シンの問いかけをうけ、アクセルはステラからカタナを受け取ると鞘から静かに刀身を抜く。その刀身は途方もない年月を経てなお輝きを失っていない。さらにその輝きは桜の花弁のような色をしている。


「……………あぁ……なるほど…………うん」


「1人で納得するな!」


カタナを両手で持ち、少し観察したあと1人で納得しているアクセルにミラが指摘する。


「…これには魔法銀が使われてるな」


「…………ふむ、なるほど……」


恐らく鉱石であろう名を口にしたアクセル、そしてそれだけで大体を理解したミラ。


「すまんが、具体的に説明してくれ」


「おう。つまりだな…____」


魔法銀、1部の者達からはミスリルと呼ばれるその金属は魔力との相性が極めて高い。

魔法の効果を飛躍的に上昇させることが出来るこの金属は、魔晶輝石と並び、とても希少な金属だ。


このカタナは、そんな希少な金属である魔法銀を使用されていることに加え、偶然、または膨大な時間を経ての結果なのか、様々な想いが蓄積するようになった。


このカタナが納められていた場所は魔力が濃く、それが元々なのか、魔法銀の力によって蓄積された想い達が影響してそうなったのか定かではない。が、恐らく後者。


何らかの方法でこのカタナに蓄積された想いや魔力を、消費もしくは発散させていたがそれがなくなり、周囲の濃い魔力の影響も相まって許容限界を超え暴走したことが原因だろうとアクセルが説明する。


「………と、いうわけだ」


「付け加えるなら、すでに滅びた一族が舞によって蓄積された魔力を発散していたのだろう」


最後にミラが補足を付け足すと、シンは少し思案した後に新たな疑問をなげかける。


「ということは再び舞を蘇らせれば良いということか?」


「……いや…多分、無理だな。勿論、舞も無関係ではないだろうけど、お前も言ってた通り、この地の奴らは魔力が少ない。このカタナは一定の範囲とはいえ、自然に漂う魔力を濃くするほどの影響力があるんだ。とてもじゃないが人間に扱える物じゃないよ」


「では何故……」


「これは憶測だが、舞を踊っていた一族の奴らは何か特別な力を持ってたんだろうな。魔力を扱うものとは別のな…」


「うぅむ………」


魔力は血によって継承される特別なものが存在する。

ミラの紅い雷もその1つだ。


そんな特別な力が滅びた一族にはあり、舞を通じてカタナに蓄積されたものをどうにかしていたのだろう。


「むむむ……では何故、ウサギの嬢ちゃんが…」


「それも簡単なことだ。ステラは特別な力……というより種族の特徴かな。それと、莫大な魔力とそれを扱う術。その両方を持ってるからだ。お前もポロで獣人は見たことあるだろ?ステラは普通の獣人達とはちょっと違うんだ」


太古の昔に存在していた獣人。

それは強靭な肉体に加え、莫大な魔力を持っていたとされている。さらに精霊との親和性も極めて高い。


ステラは先祖返りにより、そんな獣人達と同じ特徴を持っているのだ。


「なるほどな……つまり俺達が問題を解決するには、このカタナを叩き折るしかないということか…」


「シン!あのカタナは正に国宝。その答えは早計すぎる!あのカタナを扱える新しい者達を探し出せばいいではないですか」


今まで静かに話を聞いていたアヤメが声を荒げシンに詰め寄る。


そんなアヤメにアクセルが答える。


「いや、シンの言う通りだよ。あの嵐…多分だが、俺らが行かなくても溜まったものを吐き出し切ればその内収まったはずだ。だが、それは長い年月が経てばまた繰り返される。カタナを別の場所に納めたとしても、また月日を経てその地は魔力が濃い場所となって、結局は同じだ」


「うむ、それに俺達ではアクセルのいう特別な力というものを見分けることが出来ん。自己申告に頼るしかない。しかし、真実を告げる者達ばかりでもあるまい…」


仮に次の暴走が100年後だとした時、それまでに目先の褒美に釣られ、偽りの申告をするものがいた場合、100年後の暴走時までその偽りを暴けないのだ。


改めて説明をうけ、アヤメも静かになった。それに伴い、場も静寂が支配する。


しかしその静寂を打ち破ったのはステラだった。


「ねぇシンさん……このカタナ、壊すくらいなら僕にくれないかな…」


「…………………」


ステラはそれ以上何も言わず、シンもまた沈黙を保っている。

シンとしても即座に了承は出来なかった。

あのカタナはアヤメの言う通り国宝。価値云々というより、長い歴史を紡いできたものだ。

しかし、自分達ではどうすることも出来ないのもまた事実。


長い沈黙の後、シンが答えをだした。


「色々と考えたが、どうにもならんな。ウサギの嬢ちゃん…いや、ステラ殿。この国の宝、そなたに託そう」


「…………うん!ありがとう。大事にするね」


国のこと、カタナのことを思うと1番の形で話は落ち着いた。


「ま、そうなるよな……しかし、なんでこのカタナはこんなに赤い色してるんだ?魔法銀とは違う素材なのは確かだけど、見たことないぞ」


「それには希少な素材、緋緋色金という素材が使われているのだ。俺は最初、その素材を指して希少なものが使われていると言ったんだが…魔法銀だっか?他にも希少なものが使われているとは知らなかった」


「ヒヒイロカネ……知らない名だな…」


「緋緋色金は本来、もっと赤い色をしている。これは緋緋色金のみで作られたカタナだ」


シンはそういうと自身のそばに置いてあったカタナを抜く。


「おぉ!!真っ赤だな。焼けた鉄みたいな色じゃなく、こんなにも綺麗な赤なのか………」


「このカタナは代々、王となる者に受け継がれてきたものだ。武器というより、その証に近い」


「ほうほう……それに魔法銀を混ぜると色が薄くなってこんな色になるのか」


こうして問題は恙無く解決となり、再会と問題解決に対しての感謝として宴が催されることになった。

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