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118話 東大陸へ

「見えてきました」


ソニアの声に皆が前方に視線を集める。

少しすると3人にも陸地が徐々に見え始めた。


一行は人魚の国を訪問した数日後、ステラの希望した投擲武器を求め、さらには以前知り合ったシンとアヤメに会うためナズナの情報を元に東大陸に向けて出発した。


当初はのんびり船旅で向かう予定をしていたのだが、東大陸に向けて出る船は、アートランのさらに東にあるポロからしか出ていない。


しかしポロはステラにとっても、アクセルにとっても、出来れば近付きたくない場所。


さらには東大陸まではかなり距離があり、長期の船旅となる。それも旅の醍醐味とはいえ、あまりに変わり映えしないのは退屈であると、ソニアに運んでもらうことになった。


そして都合の良いことにソニアは過去、祖父に連れられ東大陸を訪れたことがあるとのことだったが、幼い頃だったので位置を朧気にしか記憶していないとのことだ。


しばらく空を旅しているとソニアの言う通り陸地が見えたのだが_____



「あれは不味いだろ……………」


そこは確かに陸地ではあったのだが、まだ遠目でも分かるほど、嵐が荒れ狂う場所だった。

風が渦を巻き、竜巻が海面からいくつも伸び、まるで陸地を覆い隠してるのかのようだった。


「おじい様はこの辺りを東大陸だとおっしゃっていましたが…………すみません……思い違いだったのでしょうか」


「いや、すこしズレただけってこともあるだろ。そう落ち込まないでくれ。……それにあの嵐…魔力を帯びてるな…」


「……であれば、薮にいる蛇をわざわざ刺激する必要も無い。迂回するのが妥当だろう」


恐らく危険であろう場所を迂回し、すこし飛んでいると今度は島がいくつも連なり出来たかのような巨大な陸地を発見する。


「これが東大陸か………とりあえずナズナの言ってた港町が多分あそこに見えてる所だから行ってみようか」


ソニアは拓けた場所から人目を避け離れた山の中に降り立つと、そこからは港町に向けて徒歩で向かう。


山を降ると、海岸沿いに整備された道を見つけ、その道に沿って歩いていく。


「うわぁ!面白い木…腰が曲がったおじいちゃんみたいに幹が曲がってる」


「はは、ホントだな。…でもよく見ると葉は針みたいに細くて鋭いな」


恐らくこの地特有の樹木を眺めながら歩いていると、町が見えてきた。


そして入口に門番であろう者達が居るのだが、やはりこの地特有の格好をしている。

服装に関してはある程度予想の範囲内だったのだが、特に目を引くのが頭頂部。

側頭部の髪を結い、後頭部あたりで纏められている。


「っ!?止まれ!!………異国の者だな」


「お、おう…あ、これ身分証だ」


独特な髪型に気を取られながらも、身分証である冒険者ギルドカードを差し出す。


「……何だこれは…そもそも異国の者達が乗った船が到着したと報告は聞いていない!どのようにしてこの地にまいった!」


「……空を飛んできた!」


まさかギルドカードが通用しないとは思ってもなく、ならば誤魔化しても仕方ないと正直に答える。


「っ空を……異国の者達が使うという妖術の類か…して、この地にまいった理由は?」


「あぁ、人を探してる。シンとアヤメっていうんだけど…」


「シンにアヤメ………この町にいるのか?」


「いや、何処にいるのか知らない」


そういうと難しい顔をしながら門番達は、警戒を解かないまま何やら相談を始める。


「……指示を仰ぐ故、その間、町に滞在することを許可する…が、監視をつけさせて頂く。そして町の外に出ることも禁ずる。よいな?」


その後、門番の1人に連れられ、とある建物に連れてこられたアクセル達。


「沙汰があるまでここの宿を借りるがよい。異国の者達用に作られた宿だ」


男はそれだけ告げると頭を抱えながら去っていく。


すぐに宿で手続きをした後、宿の者に話を聞こうとしたのだが、避けるように足早に部屋の奥へと姿を消した為、それも叶わなかった。


そして割り振られた部屋にいくが、そこには藁で出来た簡素な寝床があるのみだ。


「うーーん、ちょっと考え無しすぎたか?」


「確かにそれは否めんな。しかし寛容な措置だとも思う。我らはいわば密入国者だ。勝手が分からなかったことを差し引いても宿まで紹介してもらえるのは有難いことだ。まぁ、投獄とあまり変わらんがな……しかしシンとアヤメの名を出したのは早計だったかもしれん…もしここが敵対国だとしたら…」


「うーーーーん、それも含めて仕方ないな……ま、折角だしこの町をゆっくり見つつ、指示を待とう」


その後、全員行動を余儀なくされ、買い物も出来ずにいたが、簡素ながら食事は提供してもらえ、監視は付いていたが町中を歩く事は出来た。


しかし数日後____



「随分と警戒されちまったみたいだな…」


今まで監視をしていた者は口出しもせず、無言でただ後ろを付いてきていた。


しかし現在はその者達とは別に、変装をして更に気配を隠し、物陰からこちらを見ているもの達が現れたのだ。


「ちょっと聞いてくるか…」


そう呟くとアクセルは監視をしている者達の指揮をとっているであろう人物のもとに時空間を使い飛んでいく。


「よう!」


声を掛けられた黒ずくめの者は突然背後から声をかけられ、体が跳ね上がる。

直後逃げようとしていたが、アクセルがその肩を掴む。


「待てよ…別に暴れる気なんかないからさ。でもお前らはシンとアヤメについて知ってる。そうだよな?」


シンとアヤメはこの地において何かしらの影響を人物なのは過去の言動から間違いない。

そして異国の者であるアクセル達からその名が出され、秘密裏にその真相を探るべく、こうして精鋭達を寄越したと推察したのだ。


「…………」


「ま、そう簡単に頷けないか……俺はアクセル。ポロって街でシンとアヤメには会ったんだ。よろしく伝えてくれ」


アクセルがそう告げると黒ずくめの者は音もなく姿を消した。


▽▽▽




「して、どうであった?」


「申し訳ございませぬ。不覚をとってございます」


「ほう?そなたほどの者が…して」


「はっ……その者はアクセルと名乗り、ポロという場所で会ったことがある…と」


「っ!?なんと!!……すぐに準備せよ」


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