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115話 人魚の魔法

「明日は全員で海に行くぞ!」


事の始まりは今から数日前。


ミラから助言を受け、魔法陣作成に注力していたアクセルだったが、上手くいかず断念。


休む間もなく作業をしていたアクセルを見かね、ミラが気分転換に散歩にでもと誘ったのが始まりだった。


心身共に休まる場所をと、街を出て近くの海岸までやってきた。


そして海のそばまでくると、浜辺に2人揃って腰を下ろした。


「中々上手くいかないもんだなぁ……」


心地よい風と穏やかな波音を背景に、暫くぼんやりと海を眺めているとアクセルから愚痴が溢れた。


「時空間を使える者が少ない分、それを用いた技術もまた未発達。仕方のないことだ……」


それからまた長い沈黙が流れるが、それを破ったのは突然騒がしくなった海面だった。


遠くでバシャバシャと、何かが水面を跳ねる音が聞こえてくる。

魚が跳ねたにしては大きすぎる音に、音のあった方向を注視する。


すると何かが水中から浮かんできたかと思うと、それは勢いよく水面から飛び出した。


「アクセルーーーー!!!!」


水面から飛び出した人魚のアクアが、空中で手を振りながら大きな声でアクセルの名を呼んでいた。


アクアは1度水面に潜ると、泳いでアクセル達の近くまでやってきた。

そして近くの岩の上に腰掛けた。


「アクア!」


「もう!また会おうって言ってたのに全然来てくれないから心配してたんだよ?」


「悪い悪い!あの時は俺も舞い上がってたし、あれから色々あってさ…」


「そっか……それより、その人が前に言ってた仲間の人?」


話には聞いていたが、自分の目を信じられないのか未だに目を白黒されているミラに視線を向けながら尋ねてくる。


「あ、あぁ、ミラだ…よろしく頼む」


自己紹介が終わり、3人で雑談を交えた後、現在行なっている作業が上手くいかず、気分転換にここに来たことを伝えるとアクアも興味を示し、魔法陣作成について説明する。


「……なるほどぉ。つまり違う場所同士を繋げる扉みたいなものを作ってるんだね」


アクアのこの言葉がきっかけで時空扉は完成にまで辿り着くことになったのだが、それはまた後の話。


礼を述べたあと、まだそれぞれ聞きたいことも多くあった為、アクアから1つ提案が出された。


それはこのまま人魚の国に行かないか?という夢の様な提案だったのだが、仲間が不在の為と断り、近々帰ってくることも伝えた。


そして後日再会の日を取り決め、その時全員が揃ってなければまた後日。という具合に段取りを話し合った。


そして再会を予定している後日というのが、明日。

つまりステラ達が帰ってきた翌日だったのだ。


当日。


再会の約束を朝と定めてはいたが、流石に日の出からということもないだろうと、日の出の時刻から訓練をした後、ゆっくりと準備をして海に向かう。

それでもまだ朝の早い時間だ。


が、海に着くとすでに到着していたアクアが、岩陰に隠れ様子を伺っていた。


「もう!遅いよ!」


「アクアが早すぎるんだよ」


そんな会話の後、ステラとソニアも自己紹介を済ませ、早速人魚の国に向かうことになった。


「はい!じゃこれ飲んで」


アクアはそう言うと、予め聞いていた人数分の小さなビンに入った魔法薬を渡してくる。


聞くとそれは水中で活動出来るようになる薬だという。


それを聞くと躊躇いもなくアクセルが飲み、それに皆が続く。


すると直後、体を包むように膜のような物が目で見て取れる。


海に飛び込むアクアに続き海に入ると、アクセルにとっては妙な感覚。それ以外の3人は親しみのある感覚が体に伝わってきた。


それは水中にいながら、浮きもせず、沈みもしない。正に浮遊の感覚だったのだ。


そして呼吸も可能で、会話も出来る。体も浮こうと思えば浮き、沈もうと思えば沈む。

持続時間も丸一日は保つと、水中活動においてとてつもなく便利な魔法薬だった。


流石に人魚のような速度で泳ぐことは出来なかったが、それでも通常より遥かに速く泳ぐことも出来た。


アクアに連れられ海底をまるで散歩気分で散策していく。


見たこともない景色に皆が舞い上がっていたが、とある疑問をアクセルがアクアになげかける。


「海の中も凄いけど、この薬も凄まじい効果だな。ホントに貰ってよかったのか?」


「勿論!薬の材料なんて、ほとんどが魔法だからね。私達人魚は、効能のある物を混ぜて薬にするわけじゃなくて、魔法を液体と混ぜて薬にする技術を持ってるんだ。だからさっきの薬も、ただの水と私の魔法ってわけ!」


それを聞き、陸上で生きるもの達とは違う文化があるのだと納得する一方で、言い換えればあの薬も魔法の1種。

覚えることが出来るのではとステラが興味を示し、アクアに興奮した様子で詰め寄っていた。


アクアもそれを快く聞き入れ、後で教えることを約束し、人魚の国に向かう。


そしてしばらくアクアの後に続き進んでいると、アクアが待ったをかけた。


現在はそれなりに深い場所まで来ているが、薬の効果だろうか、視界も良好であった。しかし目の前の地形は渓谷のようになっており、その先は全くの光が届かない暗闇となっている。


「あの先に人魚の国があるんだ。私達人魚には問題ないけど、皆は真っ暗でしょ?だから迎えを呼んでるんだ」


その直後、その暗闇の中から大型の何かが凄い速度でやってくる。


暗闇を抜け、その巨体が顕となった。


その巨体はソニアがドラゴン化した時の半分程もあり、ヒレのような尾を含めるとドラゴンに迫る大きさだ。


さらにその背には岩のような甲羅を背負っており、ヒレのような手足、さらに首が太く長い。


「おぉ!こんなやつ見たことないな。亀………ではないし、ドラゴンと言われると納得する部分もあるし…」


「お?流石に鋭いね。この子は水竜に分類される子だよ。生まれて間もない頃に親とハグれた所を私が見つけて育てたんだ。名前はスフィア。仲良くしてあげてね」


こうして水竜スフィアの背に皆で乗り、人魚の国に出発する。

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