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113話 それぞれのやり方

ステラ、ソニア共にモモチュー達を捕まえる為気合いを入れる。


最初に動いたのはステラだ。


常人の目からすれば消えたと錯覚する程の速度でモモチューに迫ったステラだが、モモチューはあっさりと躱し木の枝の上で余裕を見せている。


「ふわぁ!!凄いね!マスターみたいに速い……よーし!遠慮はしないよ」


そんなステラ達の動きを見た後、ソニアも動き出す。


が、結果は散々だった。


この日はすぐに日も落ちてきたこともあり、追いかけっこは中断する。


泉の傍に戻ってきた2人は無言で野営の準備を済ませ、それぞれが思案している。


(うーん、全く追いつけないし、このままじゃ捕まえられないなぁ………)


(……何か別の方法を探さねば……)


2人も現在の状況は理解しているようで、現状のままでは駄目だと共に思っているようだ。


翌日


ステラはモモチューが姿を見せた後、ヨロシクねと言うと早々に追いかけ始める。


一方ソニアはモモチューが姿を見せると、体からメキメキと音をたてながら、翼と尾を生やしてみせる。そんなソニアを見たモモチューは全身を震わせていた。


「この姿では駄目だろうか?」


そんな問いかけにモモチューはビシッ!とはいかないものの、震えながらにソニアを指差した。


「そうか……感謝する」


ソニアはそう告げると動き出す。


ドラゴンと人、双方の特徴があるこの姿。しかし炎を纏い高速で移動する方法はとっていない。


自身の纏う炎が森を焼くことを懸念してのことだ。


しかし暫く追いかけたが、距離は一向に縮まらずにいた。


(………ならば!)


ソニアは心の中でそう叫ぶと、自らの尾を地面に着け、しならせる。


その反動を利用し、高速で飛びかかった。

しかし、それすらも躱される。が、手応えはあった。


(ソニアも何か掴んだみたいだね!ボクも何か打開策を見つけないと…)


ソニアの動きに変化を感じたステラもそんなことを考える。


そしてより一層集中し、観察しながら追いかけていると、ある事に気付く。


それはモモチューが移動する際に出す、ほんの僅かな音。


ステラ以外には聞き取れ無いほどの音を感じ取ったのだ。


目で追いきれなくとも音で判断すればいいと、ステラも調子を上げていく。

そしてステラは獣人。森に適応する力は本能的に優れているのだろう。ますます調子を上げていった。


追いかけっこを始めて2日目。

ステラは捕まえることはできなかったが、それでもあと少しで触れれるといったことが数回あった。


ソニアは相変わらず苦戦しているようだ。


そして3日目。


休む間もなく追い回し、ステラは度々惜しい所まではきていたのだが、後一歩が足りなかった。


しかし水色モモチューも余裕はないようで、焦りも見えていた。


(次で決める…)


ステラはそんな決意を内に秘め、モモチューを追い込んでいく。


そしてあと少しという場面になるが、それはこれまでも同様の場面はあった。

しかし今回は違う。ステラが一瞬とてつもない加速をしたのだ。


それはアクセル同様に、魔力を使い身体能力を強化する方法。


だが、ステラはアクセルのように長時間の維持が出来ない。

その為、最後の最後まで見せずに温存していたのだ。


そして……


水色モモチューの胴体をがっしりと掴むことが出来た。


「ぃやっっったぁーーーー!!!」


モモチューも観念したのかステラに掴まれたまま大人しい。


「えへへー!僕の勝ちだね……楽しかった?」


ステラの問いかけにモモチューは一声鳴き答えると、ぴょんと飛び、ステラの腕の中に収まった。そんなモモチューを見るとステラも余程嬉しかったのか、顔を押し当てグリグリしていた。


少しすると満足したのか、抱いたまま泉のある場所に戻るとモヒカンモモチューと白いモモチューも姿を見せ、腰を下ろしたステラの腕の中に飛び込んで行く。


そして3匹の魔物を抱いたままステラが呟く。


「ソニア…がんばれ……」



▽▽▽



ステラがモモチューを捕まえたことなど知りもせず、ソニアはひたすらにモモチューを追いかけていた。


慣れない移動方法をしたせいか、体中に泥や土がついている。

恐らく何度も転んだのだろう。


しかしその甲斐あってか、現在ではかなり惜しい所まで距離を詰めている。


ステラから遅れること2日、5日目のこの日、ソニアは尾をしならせ反動を使い移動するだけでなく、翼で姿勢を制御し、器用に尾で方向も即座に変えるなど、まるで追い込むかのようにモモチューに迫っていた。


桃色モモチューも最初こそソニアの姿に怯えていたが、それは最初だけ。実際はかなり余裕をもって逃げれていた。


しかし現在ではドラゴンが小さくなり、迫力そのままに追い回してくるのだ。

とても平常心を保ち逃げるのはまだ経験の浅いこのモモチューでは不可能だった。


そしてどんどんと小さな選択の失敗が積み重なり、追い詰められていく。


一瞬の隙をつかれ、ソニアの腕が迫ってくるが、それを間一髪で躱す。

が、直後体に太いなにかがまとわりつき、自由を奪われた。


気付くとモモチューはソニアの尾に捕まっていたのだ。


ソニアはそんなモモチューを優しく抱き直す。


「君のおかげで私は新たな道を切り開くことが出来た……感謝する」


フワフワの体に顔を近付け感謝を述べる。


そしてステラ同様に抱いたまま泉の場所にソニアも戻ってくる。


「すまない…随分と時間がかかってしまった」


「ううん!大丈夫!!」


ステラはすでに水色のチュチュ袋を受け取っているようだ。


そして程なくソニアも桃色のチュチュ袋を受け取り、モモチューを見送った後、1度村に戻りモモチューのことを教えてくれた男に自分達も去ることを伝え、村をでた。


そして超高速で西大陸に向けて出発した。

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