112話 次の世代へ
出かけていった2人を見送りながらミラが感慨深そうに口を開く。
「本当に逞しく、頼もしく育ったものだ……」
「そうだなぁ……ついこの間まで色々と世話焼いてたのが嘘みたいだ」
「恐らく2人共そのことに関して引け目を感じていただろうからな……だが、やはり心配はしてしまうな」
「だな!まぁ、今のアイツらをどうにか出来るやつの方が少ないだろうから、帰りを待とうぜ」
「うむ!では我らも行動するとしようか……魔法陣の方は…頑張ってくれ」
「おう!」
この日、アクセルとミラもそれぞれ別行動をする予定だ。
というのも、昨夜ステラからチュチュ袋の話を相談された後、もう1つ相談を受けていた。
それは投擲武器について知りたいというものだ。
ステラも、街を見て歩いたがこれといった物に出会えず、また種類も豊富というわけでもなかったそうだ。
深く考えを聞きはしなかったが、投擲武器が欲しいというわけではなく、どんな物があるか知りたいようだ。
そして出かけることが決まると、手が空いた時にでも調べて欲しいとお願いされていたのだ。
こうして見送りの為、街の外に出ていた2人は街に帰り作業に取り掛かった。
▽▽▽
まだ朝日が出て間もないうちから、ダンジョンのある街を出発したステラとソニアは凄まじい速さで空を進んでいた。
目的は定まっているため、最速で行動しようとしていたのだ。
その甲斐あって、中央大陸までは午前中には辿り着くことが出来ていた。
その後、大きめの街に入り、食料など山篭りに必要と思われる物を買い込み、再びモモチュー達が目撃される村を目指した。
そして昼前に辿り着くことが出来た。
「多分あの村だね……ここまで凄く速かった!!さすがソニア。ありがとね」
「あぁ、だが聞いていた話とは少し様子が違うな…人が少ないように思えるが……」
そんな疑問を抱きながらも2人は徒歩で村に向かう。
そしてアクセルから聞いた、モモチューの情報をくれた老人の家の近くまで行くと、老人ではなく中年の男性が何やら作業をしていた。そんな男に声をかける。
「こんにちは!!ここにモモチューって魔物に詳しいおじいちゃんが居るって聞いたんだけど、居るかな?」
「………オヤジなら数年前に死んだよ……それにあの魔物達も、もうこの辺で暫く見てない」
作業の手を止め、汗を拭きながら男は答えてくれる。
この答えにステラも目に見えて落ち込んでいるが、代わりにソニアが質問する。
「モモチュー達は突然姿を消したのですか?」
「いいや………オヤジの言うことを無視した馬鹿な奴らが、大勢で無理やり魔物を捕らえようと森に踏み込んだんだ。それからだよ……」
親切に教えてくれた男に礼を言い、自分達も少し探してみると伝え、その場を後にした。
そして森に入り、アクセルがモモチューに出会ったという場所であろう所に到着し、様子を見てみる。
「凄く綺麗な森だね……」
「あぁ、これ程の森だ……もしかしたらモモチュー達も戻ってきているかも知れないな」
暫くその場に腰を落ち着け待ってはみたが、現れる気配もないため、もう少し奥に進んでみようということになった。
そして人では辿り着けない様な場所を越え、少しすると浮島の拠点と同じように円形にポッカリと開けた場所に出た。
中央には泉があり、その傍には大きな岩がある。
「うわぁーーー!綺麗な場所!!!」
「折角だ。ここで食事にしよう」
チュチュ袋を持つ2人が居ない為、出来上がった料理をそのまま出すことが出来ない。
準備をしながら改めてチュチュ袋の有難みが身に染みる。
2人で簡単なサンドイッチを作り食べていると、森の方に何やら白い物体が見えた気がした。
と思った瞬間、それはステラのすぐ側に来て匂いを嗅いでいる。
「うわぁ!びっくりした………この子がモモチューかなぁ………これ、食べたいの?」
ソニアも黙って様子を見ているが、どうやらその袋を担いだ白い魔物は食べ物より、それを持つステラの手の匂いを嗅いでいるようだった。
そして満足したのか、トコトコと歩いて森に帰ってしまった。
「私達ではダメだったのだろうか……」
そんな考えが頭を過ぎり、沈んだ気分のまま食事を終わらせる。
そして片付けをしている時だった。
いつの間にか2人のすぐ側に白い魔物が来ていたのだ。
そして、その魔物が岩を見上げる。
連られて2人も岩の方に視線を向けると、同じく袋を担ぎ、耳の間にトサカのような毛がある魔物がふんぞり返っていた。
「やっぱり!!!この子達がマスター達に袋を譲ったモモチューなんだ!!」
姿を消したと聞いていたモモチュー達を見つけれたことに大いに喜ぶステラ。
そんなステラの様子を見たモヒカンモモチューは短くモチュっと鳴くと、岩の上からぴょんと飛び、ステラの腕の中に収まった。同時に白いモモチューもソニアの豊満な胸に飛び込む。
「うわっとっと………」
「これは?……」
そんな不可解なモモチュー達の行動に首を傾げる2人。
だが、腕の中で寛ぐモモチュー達の可愛さに負け、腰を下ろし思う存分撫でまわした。
少しすると、モヒカンモモチューはステラの腕の中から抜け出し、森の方に向いて鳴くと、ステラの腕の中ではなく、隣にポテッと腰を下ろした。
すると、森の方からやや体も袋も小さい2匹のモモチューが2人の前に現れる。
そして空のような毛色をしたモモチューはステラに、桃の果実のような毛色をしたモモチューはソニアに、それぞれビシッと指差した。
「えへへ、僕達と遊びたいんだね。よーーし!やるぞぉーー」
「うむ!!望むところだ!」
そんな様子をモヒカンモモチューと白いモモチューは岩の傍で見守るように並んで座っていた。
読んで頂きありがとうございます。よろしければお気に入り登録、評価お願いします。




