111話 第2の拠点
拠点同士を繋げようと提案するアクセルに対し、ミラが疑問をなげかける。
「それは時空間を使って…魔法陣を作り出すということか?だが、君は魔法が得意ではないだろう…」
「まぁ、そうなんだけど…でも前に氷漬けの地下で見つけた日記も少しは理解出来てきてるし、参考に出来ることは多いだろうからな!」
アクセルの言う日記、それは北大陸にある砂の海の地下で見つけたものだ。
そしてその日記はアクセルにしか読み解くことが出来ず、時空間について記されていたのだ。
「当然だけど、使うなら安全を確保してからだ!やってみる価値はあるだろ?」
アクセルがこんな提案をしたのには、勿論理由がある。
基本的に旅をしている間は皆で行動を共にする。しかし最近では街に長期で滞在する際は別行動をすることが多くなった。
ダンジョンがある街では、それはより顕著になるだろうと思ったのだ。これから先も皆がダンジョンに通うことになるだろうが、毎日とはいかず、全員でという機会は現状それ程多くない。
さらにステラとソニアが大きく成長したことも関係している。
2人はすでに、常に気を配っていないといけないような子供でもなくなったのだ。
「ねぇねぇ、マスター!マスターは明日、仮の拠点を見に行くんだよね?その間、僕ダンジョンに行っていい?」
「あ、であるなら私も」
「ん?分かった!気を付けて行ってこい」
「ふふふ、では私はマスターと共に拠点を見に行こうか」
こうしてステラとソニアはダンジョンへ、アクセルとミラは仮拠点を見に行く為、別行動となった。
翌朝、人の多いであろう時間を避け、全員でダンジョンに向かう。
前日と同じ受付嬢を見つけ声をかけようとしていたところ、受付嬢の方から声をかけてきて、それぞれに1枚のカードを渡してきた。
聞くとそれはギルドカードの様なもので、それを見せればいつでもダンジョンに出入り出来るのだとか。
そんな説明を聞いた後、ステラとソニアはダンジョンへ、アクセルとミラは拠点の購入を検討していると相談すると、受付嬢はいくつか見繕ってくれるといい、作業を始めた。
暫く待っていると受付嬢が1枚の用紙と共に戻り、案内してくれることになった。
「まずはここですね。さすがに予算の関係上、一等地とはいきませんし、少々手狭ではありますが、建物も綺麗でダンジョンからも比較的近く、周囲にはお店も充実してますよ!」
「うーーん、無しだな……」
「うむ」
「分かりました…では次の場所へ…」
恐らくここが最良物件だったのだろう。受付嬢は少し気落ちしながら再び歩き出した。
その後も色々見て回ったが、治安が悪い場所が近かったり、騒音があったり、土地のみで建物がなかったりと、決めきれずにいた。
「ここもダメですか……であればこれ以上は……」
「この最後に載ってる場所は行かないのか?」
「そこは一応記載しましたが、とても住めるような所では無いのです」
そこから付け加えるように色々と教えてくれたが、とりあえず見てみたいという希望を聞き入れ案内してくれた。
到着したのは郊外にある手入れも行き届いていないような場所だ。建物も草木に囲まれひっそりと佇んでいる。
「おぉ!!!ボロボロだな」
「……はい。さらにはダンジョンからもかなり遠いですし…次の拠点を買うまでの繋ぎとしても、恐らく買い手がつかないかと…………」
「良いな!!ここにしよう!!!」
「正気ですか!!?建物の修繕費を含めると高くつきますよ?それに……」
「まぁまぁ、落ち着けよ。建物全部直さなくても、使う所だけ直せば良いんだし、そういうの俺好きだしさ」
「ですが、貴方は良くてもお仲間の方達は……よろしいのですか?」
「あぁ、私達も皆こういう場所の方が好みだ」
売り手である受付嬢の方が戸惑う場所だったが、周囲の景観も良く、静かで、周りには人がいない。
アクセル達にとっては最高の場所だ。
その後、アクセルはその場に残り、早速周囲の整備を行っていく。建物までの道も草で塞がってしまっているのだ。
ミラは受付嬢と共に1度ダンジョンにまで戻り購入の手続きを、そして資材を購入していく。
その後、丁度いい時間となりステラ、ソニアと合流した後、共に購入した拠点に戻ってきた。
「ただいまぁー!!うわぁ!綺麗な所だけど、オンボロだぁーー!!」
「おかえり!建物の床、腐ってる所が結構あるから気をつけろよ」
こうしてボロボロではあるが当初予定していた予算の半分の値段で拠点を手に入れることが出来た。
買った当日はさすがに寝る場所の確保も出来なかった為、浮島拠点に戻ったが、その後、数日かけて補修を行い、とりあえず寝るくらいのことは出来るようになった。
そしてやっと当初の予定していた拠点同士を繋ぐ為の作業に入ることになったのだが、それは試行錯誤の繰り返しだ。
時間はかかるだろうと、ステラ、ソニアは再びダンジョンへ通い、ミラはアクセルを手伝うといった日々が続いていく。
そんなとある日の夜、夕飯を食べながらステラが尋ねてきた。
「モモチューって僕にも捕まえられるかな?」
「うーん、実力的には問題ないと思うぞ!あとはモモチュー達が出てきてくれるかだな…チュチュ袋欲しいのか?」
「うん!他の冒険者達見てたんだけど、戦いは他の人に任せて、収納とか運搬に特化した力を持ってる人がいるみたいなんだ。仲間内にいない人もお金で雇ったりしてるみたいだし」
「ステラと話し合った結果、ダンジョンに限らず私達も可能であれば所持していた方が良いのではないかと思いまして……」
「そうだな!分かった。場所は教えるよ」
未だにアクセルとミラは拠点同士を繋ぐ魔法陣の作成に付きっきりだ。その間にステラとソニアはチュチュ袋を手に入れる為、翌朝から中央大陸に戻ることになった。
「結果はどうであれ数日で戻ってきますので」
「行ってきまーす!!」
こうしてドラゴン姿のソニアの背に乗り、大きな荷物を背負ったステラは出かけていった。
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