105話 別行動
街から整備された道を進むとダンジョン都市が見えてきた。
そしてアクセル達よりも前に西大陸に上陸し、同じようにダンジョン都市を目指す者達も数人見かける。
「俺達の他にも西大陸に着いてる奴って結構いるんだな」
「まぁ海を渡さえすればどうとでもなるからな」
「それもそうか…」
当然都市に入る際に金を取られたりすることは無く、すんなりと都市内に入ることか出来た。
そしてすぐ目に飛び込んできた光景は、異様な物だった。
道は磨かれた石で作られ、整備され尽くし、大通りの先には噴水まで見える。
そしてその脇に建ち並ぶ建物も材質から違い、異世界な迷い込んだかのような錯覚に陥ってしまう。
「これは……凄すぎてちょっと恐怖すら感じるな…」
「確かに…それほど財力や資源、人材が豊富なのだろうな」
大通りを進む中、道行く人も金属鎧や皮鎧をきた者が多く、冒険者であろうことはすぐに分かる。
そんな者達が昼前から酒を飲み騒ぎ、新たな武器を求め職人と言い合ったりと、大通りを少し進むだけでも大賑わいだ。
そして噴水のさらに先には、淡く金色に輝く文字の様なものが壁を波打つ神殿が目につく。
「あれがダンジョンか…」
「大きいし、なんか綺麗だね」
リックの話ではあの神殿内にダンジョンへ降りる入口があり、同じく内部に冒険者達の出入りを管理するギルドがあるそうだ。
そしてファミリーを立ち上げていないオラクル達の住居でもあるという。
リックにこの話を聞いた時、皆が声を無くすほどおどろいた。
オラクルが複数いるのは理解したが、ファミリーを持たないオラクルがかなり多くいるというのだ。
その者達の生活はどうしているのか等、リックもその辺は詳しく知らないとのことだったが、かなり昔から存在しているらしい。
一先ずは宿を確保し、話し合いをする事になった。
というのもこの都市の近くにきてから、ずっと視線を感じていたのだ。
「品定めといったところだろうな…」
「まぁ、新しい人材がきたら気になるよな。で、リックのいた街は新しい冒険者が来たって伝令も兼ねてると…」
ファミリーとしては戦力が多いに越したことはない。
それが味方になるにしても、競う相手になるにしても確認はするだろう。
こうなるのは予想していたが、問題も同時に浮き彫りになった。
アクセル達はファミリーに加入する気がない。
ファミリーに加入し、束縛されるのを嫌ったのだ。なによりエンチャントは得体が分からなすぎる。
エンチャントを施されると紋章が刻まれるだけと聞いているが、異常な力であるエンチャント、それを施す存在であるオラクルに身体を支配される可能性も捨てきれないのだ。
ダンジョンにエンチャント無しで入れるかは力を示し、交渉次第といったところだが、仮に入れたとしても、すでにアクセル達の存在は勧誘の為に偵察していたファミリーには知られている。
そんなアクセルがエンチャント無しでダンジョンを攻略していったとなればしつこい勧誘や活躍を妬み命を狙われる等、間違いなく面倒事が起きる。
「何かいい方法があれば良いが…」
「狙ってくるやつをその都度返り討ちにするのも面倒臭いしなぁ…まぁ最悪それでもいいけど」
「まぁそれは最終手段だな。とりあえず情報を集めるとしよう。ステラ、手伝ってくれるか?」
「うん!」
「では、私はこの街の食材について調べてみます」
ミラとステラはダンジョンに関して情報を集めることになったが、ソニアは食材について調べるようだ。
そもそもこの地域の食材はほぼダンジョン産だ。
それを口にしても問題ないか調べる必要があるのだ。リックにもいわれた過剰なくらい警戒をするのは当然なのだ。
「んー、じゃ俺は外見てこような。近くだけど気になる事もあるし」
「ふむ、では別行動といこうか!夜にはこの宿に集合で」
「「「おー!!」」」
こうして別行動をすることになった4人。
アクセルはダンジョン都市を出て、海岸に来ていた。
ここは最初の街から海岸沿いにある場所なのだが、その視線の先には大きめの島があり、西大陸に来る際にも見つけていた。
「うーん、こう見ると距離結構あるなぁ…多分あの島にいると思うんだけど……」
そう、ずっと気になっていた大型の動物や魔物。強い魔力を感じ取り、それがあの島にいると確信があるのだ。
「魔装球を足場にしていけばなんとかなるか…」
そう呟きながら、なんとも都合の良い力だと内心微笑してしまう。
気持ちを切り替え、魔装を施し、いざ向かおうと気合を入れた瞬間、海が僅かに波立ち、人影らしきものが視界に入る。
「人?まさか溺れてんのか?」
そう思いながら人影を見つけた場所に近寄っていく。
しかし突然、大きな水しぶきを上げ、海から人が飛び出してきた。
「どわ!!………は?」
アクセルが何とも言えない驚きの声を上げるのは無理もない。
飛び出してきた人は若く美しい女性だったのだが、腰から下が魚のヒレだったのだ。
その女性は近くにあった岩に腰掛け、アクセルをじっと見つめている。
「やぁ、こんにちは。人間さん」
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