十一話 お風呂には入ろう
ガチャンっと玄関扉が音を立てて閉まった。
暗闇の玄関は夏でも少しひんやりとしていて、どこか不気味だった。
(あまり音を立てるでないぞっ!)
葛葉や五十鈴を起こさないよう二人の会話は囁くほどのか細い声に自然となった。
(そんな警戒することは……)
(するに決まっておろう? あやつらを起こさん用にするのじゃからのう!)
まるで戦闘中の時のような警戒度で鬼丸は廊下を歩いていった。
抜き足差し足忍び足の如く。実際に鬼丸は足音すら鳴らしていなかった。
(そうじゃ、お主は風呂入らんといかんか)
(あ、確かにそうですね)
鬼丸が振り返り傷は消えたものの汚れまみれの律にそう言った。
その指摘に律は自分の身体を一瞥した。
確かに汚れまみれだ。
このまま布団に入ったならば、明日、五十鈴がシーツを洗う時に汚れを発見し激怒するだろう。
(うぬは先に風呂入っとれ、わしは寝る!)
(は、はい……)
突き放すように言う鬼丸に律は苦笑しながら返事をするのだった。
鬼丸は寝るため自室に向かい、律も着替えを取りに自室に向かう。二人が二階へと続く階段を一歩踏み締めた時だった、
「おかえり」
『⁉︎⁉︎』
真横から耳元で囁かれたのだ。
バッと暗闇の中、囁いてきたモノを把握するため二人は振り向き目を凝らし、声の聞こえた一点を見つめた。
暗闇に朧げに露わになってくる輪郭。
「何してたの?」
再び掛けられる声に二人はやっと気が付いた。
階段の隅で体育座りしながらこちらを伺ってくる、お団子ヘアの葛葉のことに。
「く、葛葉……」
「葛葉さん……」
キョトンと小首を傾げて見てくる葛葉に、二人は顔を見合わせて「うぅ」と呻いた。
「何、してたの?」
キョトンと可愛らしい顔なはずだが、その奥底には筆舌し難い恐ろしい何かがある。と鬼丸は確信していた。
冷や汗を一筋垂らす二人。
葛葉は真っ直ぐと瞬きもせず二人の事を見ていた。がはぁと嘆息をすると、ゆっくりと立ち上がると。
「お風呂、入るよ」
階段を降りて振り返り二人にそう声を掛けるのだった。
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