七話 報せ
すみません、午前中にはあげようと思ってたのですが少し野暮用が……。
今日の分は絶対に今日中に投稿します!
絶対にです!
コンコンと扉をノックしてから中に入った。
緋月の後に葉加瀬が続き、ゆっくりと扉を閉めた。
「それで、話ってのはなんなのさ?」
毅然とした態度で緋月は目の前の人物に尋ねた。
目の前の人物―――ウルティムスは椅子から立ち上がり、二人の方へゆっくりと歩いていった。
「少し、思い出話をしよう」
渋い顔をほんの少し柔らかくした―――。
コトッと紅茶が注がれたティーカップがローテーブルに置かれた。
一礼しメイドが部屋から退室していった。
「此度の英雄は些か危ういな」
と単刀直入にそう言ってきたウルティムスに緋月は、空返事で返してしまった。
「英雄に足る器を持っていることは把握したが。……前英雄と比べるとなぁ」
空を仰ぐようにウルティムスはソファの背もたれに全体重を預け、物思いに耽る様に口にした。
「仕方ないよ、あの人は次元が違う。誰もあの人には勝てないって」
ウルティムスの言葉に緋月がティーカップを手に苦笑しながら言うと、ウルティムスはそれもそうかと笑うのだった。
「5年か」
それは前英雄が死んでから経った今までの月日。
10年前にこの世界に来て、5年前にこの世界を去った英雄。
「ボクはあの子に英雄にはなって欲しくない。あの子には言えないけどね」
疲れた様な顔で言う緋月に、葉加瀬が心配そうな顔で手を添えようとした時だった。
ウルティムスが徐に立ち上がり、コツコツとバルコニーへ向けて歩き出したのだ。
「私も、本心はそうだ。……この世界は狂っている、今日に至るまでの古今東西。英雄は決まって若い男女だった」
長い長いこの世界の歴史において、葛葉の様な英雄の出現は不自然ではなく、あって当然のものだった。
その度に矢面に立たされてきたのが少年少女達だった。
「……10年前のあの選択を私は今も悔やんでいる。だが、世界情勢はそんなことは知ったことではないと、無慈悲に悪化していく。今もそうだ。最近になって魔王軍が動き始めている、帝国の内政の瓦解、邪竜の復活」
それは今、この国が抱えている問題だった。
活発化しかなり被害を出している魔王軍の活動に、圧政による国民蜂起の可能性がある帝国内政問題、そして最後の邪竜の復活の兆しがあると言うもの。
今、葛葉を英雄として認めてしまえば10年前の世界情勢よりも悪化した今を、英雄として生き抜いていかなくてはならない。
それを少女一人に背負わすのは、
「やりたくない物だ」
そのウルティムスの言葉に緋月は表情を暗くした。
「肩書も責任も何かも、かなぐり捨てることが出来たとしても、世界に欲されていない我々では世界の安寧、平和は実現出来ない」
緋月の背中に手を当てながら葉加瀬は言った。
世界が欲しているのは【英雄】であるがために。そこらへんの有象無象では何をしても意味がないのだ。
「あぁ、選択の余地はないんだ」
葉加瀬の言葉を受け、ウルティムスは答えを出した。
沈黙が部屋の中に充満した。
ウルティムスは再び緋月の対面になるソファに座り、重苦しく口を開いた。
「……先ほども言ったが、邪竜の復活の兆しがある」
「……」
ほんの少しの沈黙の後緋月は救いを求める様な声で言った。
「『絶対なる覇者』?」
二体いるうちのもう一体の名を。
だがウルティムスは首を横に振った。
「復活の兆しがあるのは『星を眺める者』だ」
その名を聞いた瞬間、緋月の呼吸が止まった。気持ちの悪い脂汗がブワッと全身の汗腺から吹き出した。
心拍が上がる。動悸がする。目の前がチカチカと点滅し始める。
身体の平衡感覚を失い、緋月は座っているのにも関わらず顔から床に倒れそうになった、が葉加瀬が間一髪で緋月のことを引き寄せた。
「……」
「仕方がない、それほどの事だった」
心配そうに緋月の頭を撫でる葉加瀬も驚きを隠せていなかった―――。
「―――っ、葉加瀬……?」
気を失った緋月が目を覚め、葉加瀬はホッと息を吐いた。だが緋月が気を失っていた時間はそこまで長くはない一分二分程度だった。
「あぁ、そっか」
自分が何故葉加瀬の胸の中に抱かれているのか、緋月はすぐに思い出した。
「……」
「復活は今年中だそうだ」
緋月が先ほどまでのやり取りを思い出したのを察して、ウルティムスはいつ復活するのか言った。
ついこの前に八岐大蛇を討伐したのに、今度は前英雄を殺した邪竜が復活する。
だがそれ以前に、
「は、早すぎる!」
前英雄がその命までもを犠牲にして封印を施した。当時では度重なる検証の果てに、五百年は復活はしないと結論付いたのだ。
それなのにまだ予測の百分の一しか経っていない。
「な、なんで……一体……」
「封印の魔法陣に綻びがあったらしい。それが原因だと、ヴェリタは言っていた」
「……あの子が言うのなら、緋月。受け止めるしかない」
葉加瀬がウルティムスの言葉を聞き納得するものの、緋月は絶望したかの様な顔で言った。
「受け止めれるわけがないよ‼︎ ……だって、あの子が」
英雄が死んだと言う前例が出来ている相手と葛葉は戦わなければいけないのだ。英雄が故に。
「……すまないな」
ウルティムスのその言葉を最後に再び沈黙がやってくるのだった。
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