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三話 旅食!

 パキッと音が鳴り薪が崩れた。

 辺りは真っ暗で唯一の灯りは焚き木のみ。葛葉達は野営をしていた。


「はい、葛っちゃんも」

「パンと干し肉……」


 渡されたのは旅の御用達食材。干し肉に硬いパン。

 どちらもこの世界では旅の定番として重宝されている。


「それっぽい!」


 小さく喜び、一口齧り味を噛み締める。

 この夜食に対して別に不満はない。というか逆にワクワクしてきているほどだ。


「ごめんねー、ほんとはもっとちゃんとしたのを用意してあげたかったんだけどねー。あれに積めなかったからさ」


 と申し訳なさそうに言ってくる緋月に葛葉は全然と頭を横に振った。

 律達に目向ければ誰も不満そうにはしていない。この食事だけでも十分なのだ。


「……積むって何をですか?」

「ん? まぁ色々なものかな。魔力コンロとか調理器具とか食器とか食材とか。けど、そしたら地竜の負担が大きくなっちゃうからダメって」


 一杯なのかと思っていた葛葉だったが、予想外にも少なく別に平気ではと思ってしまう。

 そんな話をする葛葉と緋月の間に割って入り、葉加瀬が補足と言わんばかりに説明をしてくれた。


「命名式までそんなに時間がない、あと六日ほど。だから地竜の足を遅くさせるようなことはNGなの」


 指でバッテンを作り葉加瀬は至極簡単な理由を説明するのだった。

 なるほどと納得する葛葉とは対照的に、緋月は「でも〜」と不満たらたらだった。

 どうしてそんなにも不満なのか葛葉には皆目検討が付かなかったが。


「どんな訳でもボクは葛っちゃん達には良い物食べててもらいたいのー!」


 緋月にとっての御託を並べる葉加瀬に、緋月はプンスカと起こりながらそんな事を宣う。

 そして襟首を葛葉に掴まれ阻止されてしまうのだった。


「緋月さん、気持ちは嬉しいんですけど。でも、それ以前にやるべき事があるんですよね!」


 クルッと緋月の身体を180度回転させて、言う事を聞かない子供を諭すような親のように、葛葉は緋月へ言う。


「それを終わらせてからにしましょう?」


 葛葉の言葉に「うぐぅ」と意気消沈した緋月。

 葛葉は苦笑を浮かべながら葉加瀬へと振り返る。

 すると葉加瀬は小さく手で親指を突き立てていた。


「全く、あれがギルド長とはの〜」


 そんな光景を遠巻きに見ていた鬼丸は嘆息しつつ嘆きを呟いていた。

 その隣にいる五十鈴が鬼丸の手の、あきらか渡された量より多い干し肉を取ったのだ。


「なっ! ……ぬぅ〜」

「鬼丸様、なんですか? これは?」

「ひっ!」


 威厳のなさで言えばトントンだ。

 どんぐり乗せ比べとはこの事。自分のことは棚に上げて他人のことは言う。鬼丸に天罰が降ったのだ。

 夜の森に「許すのじゃ〜‼︎」という悲鳴が木霊するのだった。

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