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第18話 鉄よりも硬い木

俺は、

数分間、

その場で、葛藤した。


帰るべきか。

それとも、

関わるべきか。


俺の、内気な魂は、

「帰れ、帰れ」と、

大合唱している。

だが、

俺の、職人の魂が、

「あの、欠陥品を、

見過ごすのか?」と、

静かに、しかし、

力強く、問いかけてくる。


それに、

このまま、彼女たちが、

ここに、居座り続ければ、

俺の、工房の場所が、

見つかってしまう、

可能性も、ある。

それは、

避けなければならない。


「……はぁ」


俺は、

今日、何度目か、

分からない、

深いため息をつき、

茂みの中から、

ゆっくりと、姿を現した。


「! だ、誰だ!?」


護衛の男が、

剣の柄に、手をかけ、

鋭く、俺を、睨みつける。

赤毛の商人、エリスも、

驚いたように、

目を見開いていた。


「……あ、あの…」

「こ、困っているようだったので…」

俺は、

しどろもどろになりながら、

そう、言うのが、精一杯だった。


エリスは、

俺の、姿を、

頭のてっぺんから、

つま先まで、

値踏みするような、

鋭い視線で、一瞥し、

そして、

警戒を、解いた。

俺に、

何の、戦闘能力もないことを、

瞬時に、見抜いたのだろう。


「ええ、見ての通りよ」

「嵐で、木が倒れてきて、

馬車が、このザマ」

「あなた、この森の、猟師か何か?」


「……いえ、その、近くで、

暮らしている、者です」


俺は、

ひしゃげた、馬車に近づき、

砕け散った、車輪を、

まじまじと、観察した。

そして、

鑑定眼で、

その、構造を、

完全に、インプットする。


「……これ、修理は、無理ですね」

「新しく、作るしか、ありません」


「作るですって?」

エリスは、

呆れたように、肩をすくめた。

「こんな、森の真ん中で、

誰が、どうやって、

車輪を、作るっていうのよ」


「……俺が、作ります」

俺は、

ぽつり、とそう言った。


「は?」

エリスと、護衛の男の、

間抜けな声が、

森に、響いた。


俺は、

二人の、反応など、

お構いなしに、

工房へと、踵を返し、

自作の、道具を、

いくつか、持ってきた。

そして、

森の、奥深くへと、

分け入っていく。


俺が、探しているのは、

この森に、自生する、

鉄木てつぼく』と、

呼ばれる、

特殊な、樹木だ。

その名の通り、

鉄のように、硬く、

そして、重い、

最高級の、木材。


やがて、

俺は、

目的の、巨大な鉄木を、

見つけ出した。

俺は、

自作の、

『超振動ノコギリ』を使い、

その、幹から、

車輪の、大きさぴったりの、

円盤を、

一枚、見事に、切り出した。


工房に、持ち帰った、

その、円盤に、

俺は、

特殊な、加工を、施していく。

これが、

俺の、真骨頂だ。


俺が、取り出したのは、

アームドビートルの甲殻の粉末と、

ある種の、樹液を、

混ぜ合わせて、作った、

秘伝の、コーティング剤。

鑑定によれば、

これには、

木材の繊維を、

鉱物のように、変質させる、

『石化作用』が、あった。


俺は、

鉄木の、円盤に、

その、コーティング剤を、

刷毛で、

何度も、何度も、

塗り重ねていく。

そして、

最後に、

手のひらから、

高出力の、魔力を放出し、

表面を、

一気に、熱し、

そして、硬化させる。


ジュッ、と、

煙が、立ち上り、

木の、焼ける、

香ばしい匂いが、

あたりに、立ち込めた。

数分後。

俺の目の前には、

もはや、

木とは思えない、

黒く、

そして、

鈍い光沢を放つ、

完璧な、車輪が、

完成していた。


ジャーン!


・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


【超硬化アイアンウッド・ホイール】


Rank:B-


分類: 馬車部品


解説:

希少木材アイアンウッドに、特殊な石化処理を施した、究極の車輪。

鋼鉄を、遥かに凌ぐ強度と、木材ならではの軽量さを、奇跡的なレベルで両立している。


付与効果:


超々高強度(高)

衝撃吸収(中)

自己修復機能(微弱)

耐腐食・耐摩耗(高)

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆


(よし、これなら、

百年は、持つだろう) ( ̄ー ̄)


俺は、

完成した、

究極の車輪を、

エリスたちの、元へと、

運んでいった。

そして、

無言のまま、

馬車の、壊れた車軸に、

それを、

寸分の狂いもなく、

はめ込んでやった。


エリスと、

護衛の男は、

言葉も、なく、

ただ、

呆然と、

その、信じがたい光景を、

見つめているだけだった。

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