第13話 再びの来訪者と、言葉にならない贈り物
ステラの装備を、
勝手に、
魔改造してしまってから、
数日が、過ぎた。
俺は、
どこか、落ち着かない、
そわそわとした、
奇妙な、日々を、送っていた。
(……来ないな)
(もしかして、もう、
この森には、
近づかないつもり、だろうか…)
作業台に、向かってはいるものの、
どうにも、
モノづくりに、集中できない。
彼女が、もし、
二度と、ここに来なかったら。
この、俺が、
全霊を、懸けて作り上げた、
最高の、剣と鎧は、
一体、どうなるんだ?
(あの子に、渡せなかったら、
ただの、自己満足じゃないか…)
「きゅん?」
そんな、俺の様子を、
心配そうに、
シズが、足元から、
見上げてくる。
「…なんでもないよ、シズ」
「ちょっと、考え事だ」
俺は、
シズの頭を、撫でながら、
何度目か、分からない、
ため息を、ついた。
その、時だった。
工房の、外から、
微かに、
人の、気配がした。
俺は、
慌てて、潜望鏡モドキを、掴み、
窓から、外を、覗く。
そこにいたのは、
紛れもなく、
栗色の髪を、揺らす、
ステラの、姿だった。
(キタッ!)
俺は、
心の中で、
ガッツポーズをした。
だが、すぐに、
新たな、問題に、直面する。
(やばい、来たのはいいけど…)
(なんて、言って、渡せばいいんだ…?)
(『君の装備が、あまりにひどかったから、
勝手に、作り直しといたよ』なんて、
言えるわけ、ないじゃないか…!)
俺が、
頭の中で、
必死に、言い訳のシミュレーションを、
繰り返していると、
工房のドアが、
コン、コン、と、
優しく、ノックされた。
「イツキさーん! ステラです!」
「この間の、お礼に、
街の、美味しい果物を、
持ってきましたー!」
明るい、声。
俺は、
観念して、
ギギギ、と、
重い、決意と共に、
ドアを、開けた。
「……ど、どうも」
「あ、イツキさん! こんにちは!」
ステラは、
太陽のような笑顔で、
果物の入った、籠を、
俺に、差し出した。
「こ、これは、どうも、ご丁寧に…」
「どうぞ、中で、お茶でも…」
俺は、
またしても、
ぎこちない、応対しかできない。
工房の中に、入ったステラは、
まず、
俺の足元に、すり寄ってきた、
シズの姿を見つけ、
「わぁっ! もふもふ!」
と、目を、輝かせた。
シズも、
ステラからは、
敵意を感じないのか、
警戒しながらも、
尻尾を、振っている。
和やかな、雰囲気に、
俺の緊張も、
少しだけ、ほぐれた。
今だ。
今しか、ない。
俺は、
壁に、立てかけておいた、
剣と、鎧を、
無言で、手に取り、
ステラの、目の前に、
そっと、差し出した。
「え…?」
ステラは、
何が、起こったのか、
理解できない、という顔で、
俺と、
目の前の装備を、
交互に、見つめている。
俺は、
恥ずかしさの、あまり、
顔が、真っ赤になるのを、
自覚しながら、
床を、見つめ、
ぼそぼそと、つぶやいた。
「……あ、あの…」
「この間の、装備…」
「ちょっと、危なそうだったんで…」
「…その、勝手に、
少しだけ、いじらせて、もらいました…」
「迷惑、だったら、すみません…」
それが、
俺の、精一杯の、説明だった。
ステラは、
恐る恐る、
俺が、差し出した、
剣を、手に取った。
その、瞬間。
彼女の、表情が、
驚愕に、変わった。
「…かるいっ!」
「それに、
この、バランス…!
手に、吸い付くみたい…!」
次に、
鎧を、羽織ってみる。
それは、
彼女の体に、
まるで、オーダーメイドのように、
完璧に、フィットした。
「信じられない…」
「こんなに、軽いのに、
すごく、安心感がある…」
「それに、
すごく、動きやすい…!」
彼女は、
冒険者だ。
その、道具の、
異常なまでの、品質を、
瞬時に、
そして、正確に、理解したのだろう。
彼女は、
自分の、鑑定スキルを、
発動させたようだった。
そして、
その、結果を見た瞬間、
言葉を、失っていた。
「Rank…C…?」
「こんな、すごい装備、
見たことない…」
「街の、一番の鍛冶屋でも、
作れない、逸品…」
ステラは、
生まれ変わった、自分の装備を、
呆然と、見つめ、
やがて、
その、潤んだ瞳で、
俺を、真っ直ぐに、見つめた。
俺は、
その、あまりにも、
真っ直ぐな、視線に耐えきれず、
再び、
俯いてしまうのだった。




