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魔法使いの名付け親  作者: 玉響なつめ
第三夜 この世は不思議なことばかり!

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第三夜、開幕です!

 あれからジルニトラとヴィクターに温かく見守られつつも可紗はアドバイスをいくつかもらった。

 そして、まだウルリカの呪いに時間の余裕があるうちにウルリカを説得して、ジルニトラの元へ連れて行けるよう説得を試みることにしたのだ。

 

(とはいえ、どうしたもんかなあ……)

 

 学校に来て彼女を探してみたものの、可紗の姿を見つけると途端にしかめっ面をして背を向けてしまうので、話しかけることもできなかった。

 

「どうしたの? 昨日はお弁当一緒に食べる約束してたんでしょ?」

 

「あ、うん……まあ、そうなんだけど……」

 

「なんかあった? 誰か間に入ってくれそうな人がいないか、聞いてあげようか?」

 

「……ううん、大丈夫。ちょっとした行き違いだから、すぐなんとかなるよ!」

 

 周りの友人たちにも心配されてしまうし、話がややこしくなる前に少しでいいから二人になれる状況を作り出さないとこれはマズい、可紗はそう思った。

 とはいえ、呪いが……なんて話はそこらでできるはずもなく、誰かに手伝ってもらうにもそれがネックになって可紗もどうしていいかわからずため息が出るばかり。


 おかげで授業中も今ひとつ集中できず、このままではだめだと可紗は気合いを入れ直した。

 

(幸い、今日も部活はないし……放課後よ。放課後ならなんとか……!!)

 

 ウルリカが誰かと帰る約束をしているのなら、ほんの少しだけ二人で話したいとお願いすればなんとかいけるのではなかろうか。

 謝りたいことがあると言えば、相手だって無下にはできないはずだ。

 一人でいるなら、それはそれで好都合。


 そう、気合いを入れたはいいものの、可紗は放課後を迎えて戸惑っていた。

 

 なんと、ウルリカの腕を掴んで出て行く汀の姿を目撃したのだ。


 それは可紗だけではなく、帰ろうとする生徒や部活に向かう生徒たち大勢が見ている中の出来事だったのだ。

 隣のクラスが妙に騒がしいと思いながら可紗が向かった先で人だかりがあり、そこの先で言い争いをしている汀とウルリカの姿があったかと思うと二人が出て行ったのだ。

 

(え、え、なにがあったの……!?)

 

 昨日の今日で汀がウルリカに一目惚れして攫っていった……なんてことがあるとはさすがに可紗も思わない。

 呪いの出所がどこかなんて話もしなかったし、それがウルリカだなんて話もしていないが、彼らだけでわかるなにか(・・・)があってもおかしくないということに可紗はようやく考えが至った。

 

(とにかく、探さなきゃ……!!)

 

 しかし一体どこに、そう思って可紗はとりあえず駆け出した。


 人が多いということはそれだけみんなが視線を向ける先になにかがあるということでもある。

 彼らが驚いてなにごとかと視線を向けている先に、きっといると判断してのことだった。

 

(みんなが落ち着いちゃったらもうわかんなくなっちゃう……!)

 

 幸いにも下校時刻と言うことがあって大勢の人が廊下にいたため、彼らの進行方向はわかりやすかった。


 時折「あれ転校生だったよな?」「え、三ツ地ってああいうタイプが好みだった?」「えっ、痴話ゲンカ?」などざわついていたのが可紗の耳にも届く。


 途中途中、教師が廊下で立ち止まって固まっている生徒たちを散らしているようで、人もまばらになっていた。

 

 だが、最初にどちらへ行ったのかがわかったおかげでどこを目指したのか可紗にはもうわかっていた。


 図書室である。


 確かにあそこなら人が少ないし、汀がよくわからない力で人を寄せ付けないようにすることができるならうってつけに違いない。

 

 おあつらえ向きに今日の当番は、汀だったはず。

 

 しかし、図書館に近づけば近づくほど不思議なことに、『今日はなんとなくやめとこうかな』という気持ちが強くなるのを、可紗も感じる。

 

(きっとこれが、汀くんの言っていたヤツだ……)

 

 可紗はぶんぶんと首を左右に振って、ブレザーのポケットから指輪を取り出した。

 

 ジルニトラから〝お守り〟だと渡されたそれを小指に()めると、幾分か頭がすっきりした気がする。

 その勢いのままに図書室のドアに手をかけ、可紗は飛び込むようにして入り込み、後ろ手にドアを閉めた。


 なかなか派手な音が響いて勢いが強すぎたと内心反省する可紗だったが、目の前の光景に小さく「ビンゴ!」と呟いていた。

 

 なぜならばそこに、彼女の登場に目を丸くした汀とウルリカ。

 それぞれがまさに文字通り目の色を変えた状態でにらみ合っていたからだった。


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