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370.ちょっと、えっ、皆スルー!?

お待たせしました。


すいませんでした。

昨日の夜にちゃんと書いて更新できるかなーと高を括っていたらですね、見直しの時に凄い勘違いをしていたことに気付きまして。


“辻褄が全然合わないこと書いてるー(絶望)”となって泣く泣く却下で書き直し、今になりました……。


ではどうぞ。


「ご主人っ、準備出来たよー!」


「こちらも大丈夫です。いつでも行けますよご主人様」



 ダンジョンの広間、先に続く大きな扉の前での最終点検。

 ラティア達がチェックを終え、声を掛けてくる。


 学校終わりの後にダンジョンへと駆けつけたこともあり、やはり俺が一番最後になった。



「おう。もうちょっとかかりそうだから、しばらく自由にしててくれ」


「かしこまりました。……夕飯の支度も済ませてますし、焦らず着実に行きましょう」


「うん!」



 ラティアはルオに優しく語り掛ける様にして言う。


 だがルオも既に準備を済ませている。

 ルオに向けているようで、実際には俺に配慮しての言葉なんだろう。


“自分達のことは気にせず、焦らずに準備して下さい”てな感じで。

 ……すまんな、ラティア。



 ラティアの優しい気遣いに感謝しつつ、自分の準備を進める。

 今日はいよいよ自宅ダンジョンの5階層、その最奥へと挑戦だ。


 5階層に出たモンスターも大変だったが、更に別個に設けられた、異質な空気を放つ扉と部屋。

 5の倍数はやはり何かあるのではないかとの経験則から、今まで以上に慎重になる必要がある。

 

   

 薬草や回復ポーション。

 マジックバッグ内の回復アイテムを確認し、数が心細いものはDD――ダンジョンディスプレイにて購入する。


“Isekai”を開いていると、織部からメッセージが届いていることに気付いた。


 とりあえずキリが良い所まで操作を進めてから開くことに。


 ……そうして準備・確認をしていると、何やら言い合いが聞こえてきた。


 

「……クスッ。今日は最初から魔法をドンドン放てるので、貴方の出番はないかもしれませんね? ――ああすいません、私の女性としての魅力のせいで、貴方の存在感なんて元から(かす)んでましたよね。これは失礼」


「ハンッ。脳内に、淫乱、なことしかない、サキュバスはこれだから、困る。ちち、うえは貧弱な、サキュバス、など当てにして、いらっしゃらない。肉弾戦の、出来るワタシ、こそがちちうえの、お側にふさわ、しい!」 



 時間を持て余したラティアとゴッさんだった。

 …………。


 

「へぇぇ……リヴィル、凄いな。ゴーさんパンチの速度、かなり上がったよなぁ~」


「でしょ? レイネにも見てもらってよかった。純粋な足運びとか速さはレイネの方が指導出来そうだったし」


「Gigi! Gi.gigi――」


「わー速いでありますね~! ロトワも負けてられないであります!」



 ちょっと、えっ!?

 スルー!?


 ラティアとゴッさん言葉で殴り合ってるけど、皆触れないの!?

 


「あらあらっ、ウフフ。(あたか)も自分の方が強いみたいな言い方ですね? 現実が見えていない様子。ごめんなさい、滑稽で笑いが出てしまいました。私が淫乱一色なら、ゴブリンの頭の中にはそもそも脳はないんでしょうね?」


「ハハッ、弱いメス程良く、アンアンと淫乱に吠える。バカの、一つ覚えみたいだ。脳が淫乱になり過ぎて、まともな思考が、出来ない、のではないか?」 



 怖い怖い怖い!

 ラティアさん、ラティア様が出てるって!!


 ちょっと、仲良くしてぇぇぇー!! 


 何で二人はこんなに相性最悪なの!? 

 会う度いつも言葉で刺し合ってない!?



「Giii――」


「おっ、フットワークも軽いな! 見てない間もちゃんと鍛えてる証拠だな、うん! 感心感心!」


「ゴーさんは寡黙(かもく)な努力家だからね~。フフッ、そういう所、何かちょっとマスターっぽいよね」



 レイネ、リヴィル、お二人さんちょっとぉぉぉ!?

 あっちの二人の険悪フィールドそっちのけで、ワイワイと会話を楽しまないでぇぇぇぇ!! 



 ――そっ、そうだ!!


 織部、助けてくれ織部ぇぇぇぇ!!



 準備が出来ているからと自由時間にしたのが悪かった。

“Isekai”でのアイテム調達を切り上げ、即座に織部との通話を試みる。


 織部と協力関係になって初めて、心から織部との通話を望んだのだった。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



『トリック・オア・トリート! 新海君、お菓子くれないと、悪戯(いたずら)しちゃいますよ?』


「…………」


 織部は、ルオのお祝い会の時にリヴィルが着ていたようなサキュバス服を身に纏い、画面に登場した。

 早くも切りたくなった。



『あれ? おかしいな、反応がないです……えーっと――トリック・オア・トリート!! 新海君、お菓子くれないと――』


「聞こえてるから、やり直さなくていいから!」


 

 頭痛の種を取り除こうとしたら、また別の悩みに直面させられる。

 何なんだコイツ、狙ってやってるのか……?



「えーっと……。その、何だ? それはあれか、ハロウィンだからか」   

 

 時期的には確かにハロウィン直前だった。

 

 織部は露出の多いサキュバスコスで一度クルっと回って見せ、恥じらい混じりに頷いた。



『あはは、はい。やっぱり異世界にいても、地球のことは気にしていたいですからね。イベント事はだから大事です!』



 まあ、ね? 

 ずっと異世界、それに今は大精霊のダンジョンに籠りっきりだって言うし。

 

 織部がホームシックに陥らないためには、適度に地球との繋がりを実感してもらうことも必要だろう。


 ただ……何でその恰好?



『うぅっ……あ、あはは。やっぱりちょっと照れますね! その、自分でも分かりますもん。“サキュバス”のコスプレ、何かエッチな感じの着てるなーって』



 いやいや、歩く公然わいせつスレスレのブレイブカンナさんが何をおっしゃる。

 コスプレをしたいならそれこそ“勇者の格好”が正にそうだと思う。

 

 それでなくてもナースとかポリスとか、あるいはゾンビとかの定番もある。

 

 ……まあ“露出の多い格好がしたかった”と言われたらもうそれ以上ツッコめないけどさ。

 


「あっ、カンナ様! その服……着て下さったんですね?」



 口喧嘩を止めるためにラティアを呼び寄せると、画面内の織部の格好に直ぐ気が付いた。


 ラティアの今の一言で、何となくの経緯を察する。



『はい! その、着る瞬間は勇気が要ったんですけど……着てみると案外馴染んで、良いですね!』



 サキュバスの衣装が馴染むって何だ!?

 いや、確かにリヴィルが着た時は案外様になってる感じではあったが。


 ……織部のサキュバス服は、何か別の意味で危ない感じがするんだよなぁ。

 


「そうですか! それは良かったです。今度また何か送って欲しい衣服等ございましたら遠慮なくご相談下さいね?」



 ゴッさんとの険悪な雰囲気など見間違いだったかのように、ラティアは穏やかで優しい笑みを浮かべる。


 ……本当、何なんだろうね、あの相性の悪さは。



 ラティアと織部だって、初めて顔合わせした時はぎこちなかったが、今ではとても仲の良い友人みたいに見える。


 

『ラティアさんのサキュバス姿はお手本そのものですからね、今後も参考にさせていただきます!』


「フフッ、私で宜しければいつでも試着の代わりをいたします。気になる衣装などございましたらおっしゃってください」


 

 ……仲が良くなりすぎるのも考えものだがな。


 それと……。

 織部用の服の試着をするのなら、白瀬辺りを巻き込むことを考えたら、良いんじゃないかな、と思います。



□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆



「……で、話はそれだけじゃないんだろ? メッセージには送って欲しい物があるって書いてたが……」



 チラッとリヴィル達の様子を見ると、まだ話し飽きたという様な雰囲気はない。

 待たせている上にこっちで話し込んで、更に時間がかかるのは避けたい。


 丁度荷物を整理していた所だから、もし手持ちにあるようだったら今すぐに送ってやれる。


 

『あっ、そうでしたそうでした! 今日はただ新海君に悪戯する確約を貰うために連絡しただけじゃなくて――』



 おい、何でもないように怖いことを言うな。


 えっ、お前俺がお菓子を持ってないタイミングを見計らったの? 

 もうそれこそ既に悪質な悪戯みたいに思えるんだが……。 

  


『よいしょっと――すいません、見えますか? 今もダンジョン内にいるんですけど、階層の防衛の仕方がシフトしたみたいで……』



 織部が自分のDDを持ち上げて周囲が見えるように掲げる。

 そこは、以前に見せてもらった砂漠っぽい感じの場所ではなかった。

 

 石造りの神殿の内部のようにシーンと静まり返り、壁のあちこちに幾何学模様が施されている。


 

『今丁度26階層で、モンスターは殆ど出なくなったんですが、代わりにトラップ・謎解き型がここから続くようでして』


「ああ、なる程……」


 

 階層数が多いダンジョンだと、そう言うのあるよな。

 モンスター戦が中心の階層とか、頭を使わないと先に進めない階層とか、あるいはその組み合わせとか。



『で、ですね。地球(そっち)のPCとかスマホ辺り、ですか? それのアプリとか機能を駆使したら多分楽勝そうなんで、送って欲しいんですけど、大丈夫ですか?』



 ……おいおい、今挑戦してるのって、大精霊の試練的なサムシングじゃないの?

 文明の利器でゴリ押しして私TUEEE!ってアリなんだろうか……。

 

 大精霊が“それ、試練を課した趣旨からは想定してない攻略法なんですけど……”ってならないのかね?



「えっと、分かった。まあ送るのは良いけど……そっちこそ大丈夫か?」

 

『え? あぁー良いんです良いんです。サラとオリヴェアさんも言ってますし。“省略できる方法があるんなら良いんじゃないですか?”とか“ついでに旦那様の血なんかも送って下さると、もっと攻略が捗るんですが”って』



 オリヴェアのそれは関係なくない!?

 ただ男の血が飲みたいだけな気がするんですけど!!


 ルオのオリヴェアはやはり綺麗なオリヴェアだったんだな……。



 話を聴くと、やはり攻略が長期に渡るので、協力してくれる五剣姫も入れ代わりながらになっているらしい。

 今、シルレがいなくなって、代わりにオリヴェアがインしてる、と。



「はぁぁ……了解した。ただ流石に今すぐは無理だぞ? 安くない買い物になりそうだし、発電機とかバッテリーとかも一緒にいるだろ?」


『ああ、それは勿論です! すいません、いつもいつも……。それに今から新海君達もダンジョンなんですよね? 梨愛達のライブも近いって聞いてますし、それが終わってからでも大丈夫です』



 織部達も26階層に降りたばかりだから、直ぐに攻略を開始するわけではないらしい。

 今の俺達と同じようにまた準備期間を設け、それが整ったら再び攻略を開始する、と言うことだろう。



 織部との通信を切り、やることリストに買い物を追加した。

 そして改めて、5階層最奥の攻略準備を急いで終わらせるのだった。


  

 

織部さんが出てくれると書きやすい反面、暴走しがちで後から困ることも出てくるので悩み物ですね……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 問題が起きて織部さんを呼べば、問題が大問題になるだけなんだよな~
[一言] > 織部、助けてくれ織部ぇぇぇぇ!!  その人に助けを求めると事態を解決しないままにややこしくしてしまうと思うの。 > 織部は、ルオのお祝い会の時にリヴィルが着ていたようなサキュバス服を身…
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