331.発表がある、と……。
お待たせしました。
すいません、本当は7章に入ってどんどん話を進めたいんですが…。
先ずはどうぞ。
『じゃっ、ここからはアタシとかおりん、それに~! ――なんと、立ゴンと木田ッちとも一緒にイベント、進めて行こうと思いまーす!!』
『皆、おはよう!』
『よろしくぅ~!』
志木の登場だけでも凄い反応だったのに、二人の登場で更に体育館内は湧き上がる。
「うぉっ、そうか、そう言えば今日まだ見てなかった!!」
「マジかぁぁぁ! ウチの学校、最高かよ!!」
「花織ちゃん結婚してぇぇぇ!! それがダメなら俺を罵ってぇぇぇ!!」
やっぱり志木や逆井の人気も凄いが、立石や木田も中々のものだ。
……何か凄い掛け声が聞こえたような気がしたが、うん、気にしたらダメな奴だろう。
その盛り上がりを保ったまま、サプライズのトークイベントはスタートした。
「あっ、はいはい! ……んんっ――花織ちゃん、ウチの学校に来てくれてありがとう!」
挙手して当てられた生徒が進行からマイクを受け取り、先ずは志木への歓迎を口にする。
その後、質問を元にトークを進めて行くようだ。
『ええ、こちらこそ。一度来てみたかったの。……フフッ、素敵な学校ですね』
志木のそんな一言でさえ周囲が沸騰する。
その笑顔は、普段“鬼”と言われる体育教師の表情でさえ綻ばせる。
流石だねぇ……。
……だが、俺は騙されないぜ!
「えっと、花織ちゃんは異性のどういう仕草にキュンって来ますか? あっ、ちなみに私は花織ちゃんのウィンク、凄いキュンてきます!」
『フフッ、“異性”って質問したじゃない。でもありがとう。そうね……』
今朝のメールの件があるからな。
志木のあの笑みが白かおりんのもの、とは断定できない。
もしかしたら第3のレインボーかおりんが爆誕しているかも。
……うん、今のは適当だった、すまん。
何だ、レインボーかおりんって。
『……“キュン”って言うかどうか分からないけれど――私が出来ないと思っていたことを、その異性の人が平然とやってのけた時、とか、どうかしら?』
『あぁぁ~! ……ん? でもそれかおりん限定じゃない? かおりん、何でも出来るし、ってかかおりんが出来ないことを出来る男子って、そもそもいるん?』
逆井のツッコミに、生徒から両極端の反応があった。
主に女子生徒からは笑いが。
逆に男性陣からは悲鳴が上がった。
「い、いやまだだ! 俺、志木ちゃんのためなら大食い出来るよ!! 3キロまでなら何とか!!」
「お、俺なんか2教科限定だけど、試験でいい点とってやる!」
「ハンッ、雑魚共が……花織様の犬となって四つん這いになる準備、出来ております!!」
……また何か凄い奴がいたような気がしたが、うん。
志木のファンには色んなのがいるんだな……。
ってか志木の回答はまあリップサービスと言うか、社交辞令みたいなもんだろう。
実際にはそんな男は多分いないけど、イベントだし、夢を与える職業だからな、アイドルは。
要するに建前的なもんだ、特定の相手をイメージしてではないだろう。
気にしない方が良い。
そうした個人的な趣味嗜好などの質問が続いた後、次に当たった生徒が今度はダンジョンのことについて尋ねた。
「折角、優秀な探索士さんが4人も揃ってるんだから、ダンジョンのこととか聴きたいかな~! えっと、お互いから見て、相手の活躍ってどういう風に映ってる感じなのかな?」
『なるほど……つまり、“シーク・ラヴ”から見た“Rays”、またその逆ってことね?』
女生徒が頷いたのを見て、檀上の4人がそれぞれ相手グループを見た。
まず話し始めたのは志木だ。
『うーん……私が気になるのは梓川君、かしら? 彼、不思議な感じがするし、意外にダンジョンでも活躍しそうっていつも思ってるの』
単に異性としての好奇心で終わらせず、ダンジョン攻略に関連した話へと持って行く。
生徒たちもそれで、志木が話題に挙げた相手を異性としてタイプだ、みたいな勘違いは起こさずに済んでいた。
『あ~それ分かる! 何か小さいのに、その癖凄そうなオーラって言うか! そう言うのあるよね!!』
……ってか逆井も志木も、普通に梓のことを知ってるからな。
梓川要として日常生活を送ってはいるが、その実奴は女だ。
仮に異性間の興味関心的な意味で誤解されても、まだダメージは少ない相手だろう。
「木田、ドンマーイ!!」
「その内お前のカッコよさ、気付いてくれるって!!」
「要君よりも、私は旭君の方が好きだぞー!!」
周囲が何故こうも木田を励ましているかは……あまり知らなくてもいいことだろう。
……木田よ、頑張れ。
その後反対に、立石達の番となった。
『……純粋に凄いよ。男女合わせても、初めてダンジョンを攻略したってだけじゃなくて、それ以降も実績を積み上げ続けている。偶然じゃ出来ないことだ』
立石の言葉に、納得を示すように体育館全体が低く唸ったように聞こえた。
リアクションを見て、木田も真面目顔を作る。
先程の逆井の答えで落ち込みを見せていたが、そこは切り替えていた。
『あぁ~マジそれな。……正直俺らも結構頑張ってるけど、ダンジョン攻略に関しては逆井達のが一枚上だわ』
……あれ?
“1枚”だけでいいの?
もう少し枚数増やした方がよくない?
『でも俺らも! 負けじと頑張ってんぜ! 男で初のダンジョン攻略者ってだけじゃなく、実力も、男の中じゃピカイチだって自信はある! ――なぁ、立石ッち!!』
『おう! これから益々ダンジョンに関わる人は増えるだろうけど、頑張って“シーク・ラヴ”を追いかける! 勿論、男の探索士の中で最先端を走り続けるつもりだ!!』
二人の熱い宣言に、体育館内が今日一番の盛り上がりを見せる。
志木が登場した時以上に生徒・教師全員が興奮しているのだ。
まるで、未来の英雄が誕生する瞬間を目の当たりにしたと言う様に。
一方で逆井や志木はと言うと……。
『あ、あはは~! こ、これは追いかけられる方も大変だね、かおりん! アタシたちも頑張らなくっちゃ!』
『……ええ、そうね』
逆井は苦笑し。
志木に至っては、黒かおりん出現の一歩手前だった。
しかも参加者全員の視線が立石と木田に集中している間に、何かキョロキョロと探しているのだ。
……あっ、こっち見た。
……目が合っちゃったよ。
わっ、わー、嬉しいな!
超人気アイドルのかおりんたんと、目が合ったおー!
『……フフッ』
ヒィェェェすみません!!
なっ、何で!?
何で俺にだけ分かる意味深な笑みを向けてくるの!?
俺が何か悪いってか!?
……だっ、だってしょうがないだろ!
別に立石も木田も、嘘ついてるわけじゃないし!
“男の探索士で一番狙う”って言ってんだから、俺、関係ないし!!
その後熱狂が収まり、トークが再開するまで、俺は目を合わせぬよう足元へ視線を落とし続けた。
……ただその間、檀上から降り注ぐ視線が、何故かこちらを向き続けていたらしいことを、後で担任から聞かされたのだった。
□◆□◆ □◆□◆ □◆□◆
『――あっ、そうだ! 皆さんに素敵な発表があるのを忘れてました』
トークイベントも終わりに近づいた頃、志木が唐突にそう切り出した。
舌をちょびっと出して見せる小悪魔な仕草に、胸を撃ち抜かれた男子生徒は多い。
……桜田でも参考にしたのだろうか。
「えっ、来月のライブのことかな? ――大丈夫! 俺、もう既にチケット手に入れたよー!!」
「まさか……ここに来て新曲か!? 逆井と花織ちゃんとのユニットじゃないのか!?」
「えっ、ここで言っちゃうの? ……仕方ないな。花織ちゃん――いや、花織。俺に一目惚れしちゃった、そうだろ?」
……うん、まあそう思うんならそれでいいんじゃないの?
志木はファンの母数自体も多いからな……一定数凄い奴がいるのは仕方ないのかもしれない。
ただ、志木自身が強いからあまり心配はしてないが、ストーカーとか、大丈夫だろうか。
……まあ大丈夫か。
雇う金もあるだろうし、ボディーガードの一人や二人、その気になれば付けるか。
『……フフッ』
体育館内の反応を見ているのか、志木は笑顔を浮かべるだけで、まだ先を告げない。
そんな思わせぶりな態度に、更に生徒たちはざわつきを大きくする。
逆井の奴は……。
『ニシッ、ニシシ~!』
ニヤついて、生徒の反応を楽しんでいるように見えた。
……つまり、逆井も知ってるってことか。
うーん……。
学生を前にして発表するって言うんだから、アイドル関連ってのは違う様な気がする。
それこそ新曲を出すってんなら、流石にメディア関係者の一人や二人は中に入れるだろうし。
『かおりんかおりん! そろそろ、良いんじゃない?』
逆井が待ちきれないと言った様に志木に呼びかける。
……何か逆井が連続で“かおりん”と口にすると、とある目覚まし時計を連想するのでやめて欲しい。
『まああまり焦らしてもいけないかしら。……では発表しましょうか』
志木が檀上の一歩前に進み出る。
その動作一つ一つに注目が集まった。
そして――
『では発表します――今年、私の所属する月園女学院。そして皆さんのこの学校、最後に赤星颯さんや桜田知刃矢さんが通う高校、この3校が合同で学園祭を開催することになりました!』
志木の口から告げられた後、数秒遅れて地鳴りのような歓声が起こった。
夏の終わりの寂しさ・物悲しさに参る暇もなく、秋の慌ただしさがやって来たようだ。
申し上げるのが遅れましたが、12月は特に忙しく、その中でも頭から中頃にかけてプライベートな時間が殆ど取れない状況にいます。
この執筆自体もかなり大変でして、しかもWiFiがほぼ息をしていなくて……そんな場所にいます(涙)
申し訳ありませんが、それまでは中々更新が難しい日が続くと思いますので、気長にお待ち下さい。




