302.調査隊のとある一幕……。
お待たせしました。
休む予定だったんですが、グッスリと寝て、かなりマシになったので更新です。
ただあまり頑張り過ぎも良くないと思ったので、様子見で少し短めに。
そして申していた様に第三者視点となります。
ではどうぞ。
□◆□◆Another View ◆□◆□
「帰るまでが調査隊です、皆さん。気を引き締めましょう」
「は、はい! 律氷さん!」
時は夏休みの真っただ中。
場所はとある市街地付近に出来たダンジョン。
攻略を目的とはしない調査隊が組織され、その隊を皇律氷が率いることとなった。
今までに動画投稿サイトにアップされた攻略動画にて、その統率者としての適正を評価されたからだ。
「ははっ、律氷ちゃんの言う通りだけど、あんまり気を張り過ぎてもあれだから。適度に、リラックス、ね?」
「はいっ、ありがとうございます颯さん!」
自分の言葉に律儀に反応する研究生たちを見て、苦笑を漏らすのは赤星颯だ。
律氷が今回の隊を組む際に志木からアドバイスを受け、颯に副隊長を任せた。
調査だけを目的とするのなら、この二人がいれば余程のことでもない限りは無事にこなせるからだ。
律氷に颯、もう一人のシーク・ラヴメンバーを入れて3人の探索士。
そこに、研究生である補助者3人を含めて計6人での調査隊だ。
「それにしても律氷さん、流石です! 指揮も適切だし、普通にモンスターの戦闘もこなして、素直に尊敬します!」
「本当そうです! 私、今日まだ2回目のダンジョンだったんで緊張してたんですけど……凄くやりやすかったですし!」
「は、はぁ……どうも、ありがとうございます」
自分よりも年上の女性からの誉め言葉に、律氷は戸惑いながらも礼を言う。
探索中や戦闘が始まった場合はスイッチが入ったように、年上でもちゃんと指示を飛ばせるのだが、今はもう後は帰るだけという状況。
単なるコミュニケーションに関しては、“初対面の研究生が相手”+“年齢差”という要素がそのまま反映されてまごついてしまったのだ。
「…………フフッ」
そんな様子を、颯は微笑ましく思いながら見守っていた。
律氷が少々困っている様にも思えたが、助け船を出すことはしない。
シーク・ラヴのメンバーや、彼女たちが親しく接している青年たち。
それ以外ともコミュニケーションを取るいい機会だからだ。
これから先、律氷が何かのグループや組織、集団の中でリーダーとなって統率を取る機会は増えてくる。
今の内から練習を重ねた方が良いだろうという、颯なりの気遣いだった。
(……もっとも、律氷ちゃんにとっての難敵は彼女の方、か)
颯はそう心の中で独り言ち、この調査隊3人目の探索士を盗み見る。
彼女も、シーク・ラヴメンバー12人の本生の内の一人だ。
ファンの中で使われる分類、所謂派閥の中では、中立派閥に属する。
長い髪を揺らし、アイドルの中でも更に小さいと評される顔を、頻繁に律氷へと向けている。
だが律氷がその視線を感じて振り向くと、サッと逸らすのだ。
「……えっと、“凛音”様、どうかされましたでしょうか?」
律氷にとっては同性の年上・目上の相手の際よく使う敬称を付け、その少女の名を呼んだ。
颯も、成り行きを見守る。
行きの時に既に、帰りに邪魔となるだろうモンスターは排除した。
自分が後ろで警戒すればいいと、この二人の関係の発展をサポートするよう動いたのだ。
約1年、同じグループ内にいるのに、殆ど会話らしい会話がない律氷と“凛音”と呼ばれた少女。
赤星も、そしてこの隊を組織する際に相談を受けた志木も。
この二人の行く末を心配していたのだ。
そして、それは当人――光原凛音も同様だった。
「――う、うむ! え、えーっと……」
尊大に応じながらも、まさか律氷から話しかけてくるとは思わず、あたふたする高校2年生。
彼女はカラコンで作ったオッドアイをキョロキョロ右往左往させ、銀色メッシュを指先で摘み、持て余すように弄る。
そして言うべき言葉が浮かんだのか、思い切って口を開いた。
「そ、その、我も! 小さき妖精の活躍、大いに満足しているぞ!」
「え、えーっと? ど、どうも?」
何となく褒められたと感じ、律氷はとりあえず礼を言っておく。
ちなみに今のは翻訳すると“律氷ちゃん! 私も凄く感謝してるから! ありがとう!”である。
…………。
――光原凛音は、大病を患っていた!
そこがファンからするとキュンキュン・きゃわわなのかもしれない。
しかし、日常彼女と接するメンバーの多くは、その言語の壁故にコミュニケーションに支障をきたしていたのだ!
志木や颯等、分からないなりにもコミュ力・人間力が高いメンバーは、自然に仲を深めることができた。
そうでない者は、凛音の双子の姉か、もしくはこの言語に通ずる空木・白瀬を頼り、何とか日々をやり過ごした。
ただ律氷は、その前に圧倒的に凛音と接する時間そのものが欠けていたのだ。
そのため二人は、私的なコミュニケーションとしてはこれが初となるのである。
「っ!! ――ふ、ふふ! 白き小さな妖精は自らを大きく見せないのだな! それに我に、神をも絆す慈愛の心で接する! “全てを統べる魔の女王”とは天地の差よ!」
翻訳:“律氷ちゃん、謙虚だよね! それにいつも私なんかに凄く優しくしてくれるし!! 本当、花織ちゃんとは大違い!!”
「? えっと……そう、ですね?」
ただ今回は、全てが通じていたわけではなかったらしい。
律氷は何となく自分が褒められてるくらいしか感じ取れず、曖昧に返事するにとどめることとなった。
……だが最近、凛音の双子の姉である“和奏”から凛音検定2級を貰った颯は苦笑い。
最後の一言の主体が誰か、理解していたからだ。
(あ、あはは……ま、まあ折角できた二人のコミュニケーションの機会だし、ね。……ゴメン、志木さん)
この後も似たようなやり取りが続き。
意外に言葉のキャッチボールが出来ていると喜ぶ当事者二人に反し。
その中に志木の愚痴が7回ほど混じっていたのを聞いて、颯は曖昧な笑みを浮かべながら帰還をするのだった。
□◆□◆Another View End◆□◆□
ツギミーが出て、残り出てないシーク・ラヴメンバーが3人となっていたので、これで残り2人ですね。
ただまあ凛音ちゃんの情報にある通り、実質名前が出てないのは1人……ですよね?
私の記憶やメモが正しいとそうなんですが……だ、大丈夫ですよね?(震え声)




