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『異』世界の警察 日本  作者: かり助
69/80

64話 首都防衛(2)

この間隔で投稿できたのは久しぶりですね。

この分量も久しぶりですね。

ダダダダッ ダダダダッ


普通日本の街中で聞くはずのない銃声が夜の街に響き渡る。

自衛隊が来るまで、自衛隊が来るまで、と言われ続けて彼ら警察官は市街戦を繰り広げていた。


ここを取られれば首相官邸等の政治 行政の中心に攻撃をされる。といういわば国家自体に関わる『戦略的要所』は東京に多数存在する。

それを全て守り抜かねばならない上、民間人を避難させなければならない。


機動隊員らが一斉に横に広がり壁となる。その間からサブマシンガンを突き出した銃器対策部隊が斉射をしている間に交番勤務の警察官に誘導されながらオフィスビルから次々と人々が逃げていく。


ダダダダッ


ひとりの魔導士が銃撃で倒れる。その瞬間に警官らは道の陰で魔導士から姿を隠している民間人を次々と後方に逃がすべく敵の元へ前進する。


「上だぁぁぁぁ、上にもいるぞぉぉぉ。」


長い戦闘でややガタガタするヘルメットを揺らしながら上をみると雑居ビルの屋上に魔導士の姿が見えた。


ダダダダダッ、ブヴァアアアアア


咄嗟に銃を構えて引き金を引いた銃器対策部隊の隊員もいた、攻撃を受けようと大盾を上に向けた機動隊員もいた。地面にへたり込んでしまった女性を庇おうとした若い警察官もいた。


その全てを上にいた5人ほどの魔導士らは一筋の業火で包みこんだ。


「ぐああああああ、やろうぅぅぅ、クソがああああああ」「あついあついあづいいいいい」「たすけてくれええええええ」




人々は逃げ惑う。本能に従おう、家が怖い、とどまるのが怖い。自分のすぐ近くに魔導士がいるのかもしれない。

安全な所に避難を、としか言わないテレビ。2017年 の弾道ミサイル発射の際にも問題になった『避難はどこにすればいいのか?』


とにかく家を飛び出す。マンションを飛び出す。その手にスマートフォンを持って....




「どこに逃げればいいの?どこに逃げれば....ツイッターは....け、警視庁?公式マークついてる。あっ避難場所は....ああここか、ここなら。リツイートしとこ」「避難場所?消防のやつだし、おかーさん。ここに逃げよう!!みんなに知らせなくちゃ、リツイートリツイート」



自衛隊の投入が決定され湾岸エリアの避難が始まってから、警察の任務は安全に住民を避難誘導する事であった。その間に戦闘に巻き込まれている警官もいるようだが、それは一部に限られている。


「ん?人が集まり始めたな?なんでだ?」


車両の誘導をする為赤い誘導灯を振っていた警官が同僚にボソッと言った。


「そうですねえ。なんででしょうか?たしかにここら辺広場になってますが特に避難場所として指定されてないですよねえ。」


「そりゃそうだ。こんな遮蔽物のない上に戦闘は起こってないとはいえそう距離は離れてないんだぞ。」


一旦誘導灯を振る手を休めるとあたりを見回す。


「いやいや、流石にこれはおかしいぞ。ちょっと署に聞いてこい。」


「は、はいっ」


そう言ってひとりの警官がパトカーに向かって走る。

しばらくして戻ってきた彼は首を振りながら言う。


「何もわかりません。署はおろかもっと上も何も知らないそうです。なぜ集まってるのかこっちが知りたいと。」





日本某所


キーボードを叩く音が途切れないこの部屋。机の上には菓子類やジュースのゴミが散らばっている。


「室長、できました。複数のアカウントの乗っ取りに成功しました。」


「よくやった。じゃあこれを....」


そう言って室長と呼ばれた男は持っていたスマホからモニターを見ていた男のパソコンにメッセージを飛ばす。


「ん?どう言う意味です?あいにく自分日本語は読めないんですよ、ハハハ。」


「信じていたものに裏切られるような文章だよ。」





「ここに人が集まってるのってコレが原因らしいですよ!!」


そう言って走ってきた警官は自身のスマホを取り出して周りの警官に見せる。


「ツイッターか....これって警視庁のアカウントじゃないか!?ほかにも消防庁、東京都....それも公式アカウント?」


「おいおい、じゃあなんで上はこのことを知らないんだ?」


別の警官が言う。


「しかしコレって正式な指示じゃないもんなあ。いくら公式アカウントとはいえツイッターだろ。コレに従うってのもなあ。」


そう話していると少し離れたところから悲鳴が聞こえてきた。


『おいっ何があった。』


無線で近くの警官に問いかける。


『ま、魔導士です。攻撃を受けてます。か、囲まれてます。』


無線機から流れてくるその絶望的な声を聞いて集まっていた警官は顔を見合わせる。


『それは本当「魔導士ですッ!!」』


無線で尋ねるまでもなかった。すでに魔導士はいくつかの射点を確保しこちらを攻撃してきている。

人も多く移動もできない。おまけに遮蔽物もない。特に目立つ警察官は優先的に狙われるのか聞いたことのある同僚の断末魔がスピーカーから発せられる。


話し合いのために集まっていた警官らは慌ててホルスターから拳銃を取り出すと応戦を始める。しかしすでに数少ない遮蔽物となりうる電柱や街路樹には人々が殺到しており到底頼れるものではない。


「くそお、これが狙いだったか。」


すでに弾がなくなった拳銃をホルスターに納め、気休めの警棒を降り出した田口巡査長が吐き捨てるように言う。


「そうですね、このこと早く署に伝えないと同じことがなんども。おっしゃあああああ、見たかぼけええええ!!」


運よく撃った拳銃が魔導士に命中し奇声をあげているのは松木巡査。理性が持つか持たないかギリギリのところを踏ん張っている一人であった。

しかし軍人ではない。警官としての意識か自分が撃った相手の様子を確認しようとする。


シュダダダダダッ


あっという間に自分たちがどこから撃たれたか確認し、カバーに入る魔導士たち。5人ほどの班で動いているがその動作は見事な連携である。


「うおっ、あぶねええ」


反射的にその攻撃を避ける松木巡査。なんとか物陰に転がり込んだが、近くで見ていた田口巡査長は「大丈夫か?」の一言も失っていた。


「はぁはぁ、危なかった。」


そういって今まで自分が立っていた位置を見ると脱げた制帽が夜、街灯の中でもはっきりわかるほどズタボロに引き裂かれていた。


「まじかよ・・・どうなってんだよ・・・。」


彼の力の抜けた腕から拳銃がズルリと抜け落ちた・・・




「狙撃班配置に着きました。いつでも撃てます。」


目出し帽を被った隊員がそう報告する。


「了解した。」


そういって現場の指揮官は無線のハンドマイクをとる。


『我々の第一の任務は一刻も早い犯人の制圧である。民間人の犠牲は最小限が鉄則であるが、犯人制圧が優先(・・・・・・・)である。30秒後に射撃を開始。以上。』


ヘッドセットからその指示を受けたスナイパーたちはどう思っただろうか。対策本部からいち早くこの場所に向かうよう命令され、それぞれが配置についた時から若干感じてはいた。

スコープから見える逃げ惑う民間人の姿を見て犯人への射撃を戸惑ってはいけない。いや、


『たとえ民間人が、子連れの母親が、青春を謳歌する学生が、職場帰りの会社員が盾にされていたとしたら彼らの体を撃ち抜いてでも犯人を制圧しろ』と


そう言うことなのだと。

観測手が射撃開始の時間をスナイパーらに告げた時、彼らは引き金を絞った。




パンッパンッパンッ


断続的に続く乾いた音は魔導士の攻撃ではない。銃声だ。

その音と同時に魔導士が倒れているのを見るとSATか何かの狙撃だろう。


そう考えていた田口巡査長は驚きの光景を目にする。


仲間が次々と倒れて行くのに混乱した魔導士の一人が逃げ惑う群衆の中に飛び込むと、女子高校生と思しき人物をひったくるようにして自分の前に振りかざす。そう盾にするように、どこにいるかわからない自分を攻撃してくる者たちに見せつけるようにして・・・


パンッ、パンッパンパンッ


「撃ったのか・・・おい、撃ったのか・・・」


そう言うと田口巡査長は手に持っていた警棒をそこらへんに投げ捨てると駆け出す。


「嘘だろ・・・本当に・・・どうなってんだよ・・・」


魔導士は確実に射殺されてる。間違いない。しかしその魔導士が人間の盾にしていた女性も魔導士と同じく、いやそれ以上に銃弾をそのか細い体に受けていた。


「おおおおおおおおおおおおおおいいいいッ、どうなってんだよおおおおおおおおおおッ。何をしようとしてるんだああああああああああああああああああああああああ。」


あたりには悲鳴、銃声、抵抗する魔導士の攻撃の音、そして大切な人を他人(・・)から奪われた人たちの絶叫がこだましていた。





「現時点をもって官邸の機能を立川防災基地に移す。」


伊佐元の声が会議室に響く。

それは実質的な日本の敗北宣言だった。

すでに湾岸エリアの警察力は低下し非常線を突破されている。

追加で投入した機動隊は想定以上に消耗し、SAT、銃器対策部隊もこれ以上の継戦は軍隊のような後方支援機構を持たない警察では厳しい上に数が無い。


現在投入できている自衛隊側の戦力は練馬の第1師団のみであるがいくら政経中枢型師団とはいえ歩兵には限りがある。おまけにただでさえ多数ある重要防護施設の防護を行わなければならないため積極的な魔導士の掃討に割ける余力はほぼない。


しかしこの限られた中で警察は良くやった。湾岸エリアの避難誘導はあらかた終了した。一部では多くの民間人の被害が出るような戦闘が起こったようだが数だけで見れば(・・・・・・・)想定の範囲内である。


「では、これよりここ(官邸)のヘリポートに待機してあるヘリコプターに乗っていただきます。」


職員がそう言うと閣僚らは会議室を後にする。


「塚本防衛大臣。第一空挺団が東京に入りました。すぐに普通科教導も入る予定です。」


官邸の廊下を歩きながら秘書がそう声をかける。


「わかった。直ちに掃討に移ってくれ。」


「了解しました。」


閣僚らを乗せたヘリは西の空に飛んでいった。

さて今回は日本がやられている展開となりました。さらに日本の黒い部分が若干見えましたねえ。


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