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マイペース☆ファンタジー  作者: 風白狼
1章 旅立ち
8/89

5.ただいま必死に勉強中

言わずもがな、説明回です

「それにしても嬢ちゃん、何であんなところに?」

 ネズミ型の人は、御者(ぎょしゃ)をしながら私に問いかけた。私はと言えば、荷物の積まれた車の中に座っている。

「訳あって今まで人里離れて暮らしていたんですけど、やっぱり世間を知った方がいいと思いまして。それで、旅をしていた所なんです」

 ついでに、まだ旅を初めて日は浅いのだという事も答えておいた。その方が相手も話しやすいと思ったから。ちなみに敬語を外し気味なのは、この人に「そんなに硬くなるな」と言われたしまったからである。それでも相手は初対面だから、これくらいの話し方になってしまうのだけど。

「へへっ、そうかい。あっしは荷物運びのコアズっていいやす。よろしくしてくれや」

「あっ、申し遅れました、私は満月(デュライア)といいます。こちらこそ、よろしく」

 言いながら、ネズミの人――コアズさんの細い指と握手を交わす。ちょっと見ると、かぎ爪が生えているのが分かった。それから私は、とがった顔の先にある鼻や、丸く広がった耳などを見回した。とりあえず、ネズミだ、という以外の印象はない。どうもじっくり見てしまっていたらしく、コアズさんはくすぐったそうに視線を泳がせた。

「あ、あっしなんて見てもいいもんじゃないでやんすよ?」

「え――ああ、ごめん」

 私は半ば上の空で答えた。正直ただの好奇心だったのだが、相手はそれに慣れていないらしい。せっかくだから、色々聞いてみようかな。

「やっぱり、種族とかってあるんですよね?」

 私が尋ねると、コアズさんは驚いたような顔をした。……ちょっと唐突すぎたかな? 自分はまだ世間知らずなのだと伝えると、彼は納得してくれたようだった。

「そうでやすねえ……嬢ちゃんみたいな姿をした種族は、『人族(ひとぞく)』っていいやす。で、あっしらは『ネズミ族』でやんすよ」

 他にも、オーク族やら牛族(うしぞく)やら、はたまたエルフ族など様々な種族と大ざっぱな特徴を教えてくれた。私はカバンからメモを取り出し、それらを書き留めておいた。何にするのかと聞かれたが、あくまで覚えるまでの備忘録である。うん、出会って覚える方が早そうだし。



 そうこうしていると、私のお腹の虫が大声で自己主張をした。

「し、失礼しましたっ!」

 そういえば、しばらく何も食べていなかったんだっけ。タイミングが悪いなあ。コアズさんは、そんな私の様子を笑って受け流した。

「嬢ちゃん、これでも食えや」

 そう言って、葉っぱに包まれた何かを取り出す。中には玄米か雑穀のにぎりめしが入っていた。一応、本当に食べてもいいのかと念を押すと、

「世界を見る前に飢えてしまいまさあ」

 と笑って返された。私はありがたくそれを受け取り、ほおばった。見た目通り、玄米の味だ。嫌いな訳ではないのでそのまま食べ進める。ちょっとした歯ごたえが心地よい。

「それに、嬢ちゃんはさっき3パースも払ってくれやした。あっしらにはもったいねえです」

 コアズさんはそう言って笑った。言い方からすると、私はこの人にぼったくられていたらしい。しかしなにぶん金銭感覚がないので、悔しいとは微塵にも思わなかった。ただ、ああ、そうなんだと思っただけである。何となくだが、階級区分みたいなのがあるのかもしれない。コアズさんは下の方におり、“常識的な”人なら銀貨3枚くれてやるのはもったいないと思うのだろう。やっぱり、お金についてはちょっと聞いておいた方がいいかな。

「あの、よければ貨幣についても教えてくれませんか?」

 私の言葉に、コアズさんの笑みは苦笑いに変わる。丸い耳が、心なしか下がった気がする。あ、今絶対世間知らずだと思われた。間違ってないんだけど、その視線はやや痛い。一体どんな田舎で育ったのだろうと(これは私が一番知りたい事なんだけど)、コアズさんは困り顔だ。表情を読めるようになったのはこの短時間での進歩だと思う。コアズさんは息を吐くと、親切に教えてくれた。



 この世界で普及しているのは、3種類の硬貨だという。先ほど私が使ったのが銀貨(パース)、それよりも価値の低いのが銅貨(クア)。そして、高価で庶民にはなかなかお目にかかる事がないのが金貨(オウル)だ――とコアズさんは説明してくれた。それぞれの関係は、120クアで1パース、72パースで1オウルとなっているのだという。10進法が基準である地球と違って、この世界の基準は12進法なのだ。見ての通り、貨幣の両替も12が基本となっている。1ダースって言葉を連想すると分かりやすいかな? とにかくそういう事であった。なんでと言われても、いつの間にか根付いた考えだから、きっと誰にも分からないだろう。

 私は農村・オミノでもらった袋を取り出してみた。中には数十枚ほどの銀貨(パース)が入っている。実はこれ、彼らにとっては大金だったのではないだろうか。なんか、今更不安になってきた。とはいえ彼らが喜んで差し出した物なので、私に非はないのだが。彼らが意外な金持ちであったらなあと思いつつ、私は揺れる車の中で頭を整理していた。

5話目にしてようやく主人公の名前が判明。

満月と書いて、デュライアと読みます。

こんな感じでゆっくりいろんな事が分かっていきます。


実は牛族とオーク族は既に登場していると気付いた人はいるでしょうか?

これからも様々な種族が登場予定です。


ちなみに、貨幣そのものを示す時は漢字表記(フリガナあり)、値段を表す時はカタカナ表記という風に使い分けています。

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