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改訂版 妹と歩く、異世界探訪記  作者: 東郷 珠(サークル珠道)
第六章 それぞれの決着

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第百五十二話 神々の判断

 女神フィアーナは、神の住む天空の地に戻った。その地でフィアーナがみたものは、喧々諤々と意見を戦わせる神々であった。


 ラフィスフィア大陸の中央部で始まった戦争に端を発した混乱と、ゾンビの大量出現。そして、混乱に乗じて行われた魔道大国メルドマリューネの侵攻。それらに対し、神々の意見は様々だった。


 そもそも戦争は、虚飾の神グレイラスが仕掛けた事。そのグレイラスは神格を剥奪された。もう罪を負う者は存在しないと声高に叫ぶ神。


 帝国の内乱や戦争とゾンビの発生は、全く別物である。原因を十把一絡げにしてはならない。これはロメリアの戦略であり、奴はメルドマリューネを操り、再び戦争を起こそうとしていると唱える神。


 混沌勢は、三法を冒し神格の剥奪が決定している。直ぐにロメリアを拿捕し、神格を奪うべきだと主張する神。


 混沌勢が関与したとして、新たな侵攻はあくまでも人間同士の争いだ。人間同士で解決させるべきだと、我関せずといった神。


 ここまでラフィスフィア大陸が荒れたのは、混沌勢を好き勝手にさせた女神フィアーナの監督責任に有る。女神フィアーナと原初の神々は、その責任を負うべきだと、フィアーナに対し敵意を露わにする神。


 いっそ、ラフィスフィア大陸を終わらせて、タールカールで人間の国を再構築しよう。その際は我らが管理を行うと唱え、原初の神々を排除しようと考える神々。

 

 様々な思惑が入り乱れ様と一貫しているものがある。神々は『人間達がどの様な思想を持ち、どの様に発展するか』は、微塵も興味が無い事だ。


 多くの神々は戦争自体に関心が無く、己の信者やその信仰のみにしか興味を抱いていない。故に、魔道大国メルドマリューネの行いに怒りを感じていたのは一部で有った。 

 

 それは、神としての存在意義に依る所が大きかろう。信仰によって存在意義を保っている一部の神は、人が減るのは死活問題となり得る。

 故に戦いを容認できる神と、そうでない神も存在するのはやむを得まい。


 ただ、自らが定めた法により、身動きが取れないのも事実である。意見が飛び交う天空の地で、女神フィアーナは怒声を上げる。


「意見を戦わせるのは結構! しかし今がどういう状態か分かってるんですか? ロメリアは、ここまでに被害を拡大させた。これは、我々の怠慢でもあるんです。少しは理解なさい! これから、神々の協議を始めます! 直ぐに全ての神を集めなさい!」

 

 滅多に無い女神フィアーナ激高に、神々は震撼する。程無くして神々が一同に集合し、協議が始まった。だが会議は躍り、全く進展を見せない。


 元凶であるロメリアを、早く滅ぼすべきと訴える神。魔道大国メルドマリューネに、制裁を与えるべきと訴える神。果ては、ドラグスメリアから魔獣達を移住させ、魔獣の国にしてしまえと訴える神まで現れた。


 荒れる会議の中、一柱の男神が質問を投げかける。


「セリュシオネ。貴女はどうお考えなのですか? 現状で一番被害を被っているのは、貴女でしょう?」


 女神セリュシオネは、軽く溜息をついて答える。


「私は、別にどうでも良いよ」

「貴方は仮にも原初の神であろう! どうでも良いとは何て事だ! この現状に何も感じないのか?」

「そんな事は言って無いよ。最近眷属にした子が、とても優秀でね。知ってるかい? この間まで帝国の皇帝をやっていた子だよ。おかげで、色々余裕が出来た」

「どういう事だ? 貴女は何か企んでいるのか?」

「別に何も企んじゃいないさ。そもそも転生は、なにも人間に限った事じゃ無いだろ? 亜人でも魔獣でも良い。異界でもね」


 女神セリュシオネの発言に、問いかけた神は、真っ赤な顔で声を荒げる。


「まさか、貴女は貴重な魂を、異界に送ったというのか?」

「一時凌ぎだよ。怒らないで欲しいな。将来的に足りなくなった時は、連れて来ればいい。そういう約束になってる。だから君達が言う制裁やら、魔獣の国やらは、幾らでも実現させるといいよ。あの国の人間達より、魔獣達の方がよっぽど信仰心が厚いからね」


 女神セリュシオネは、顔色一つ変えずに言い放った。


 自分は優秀な部下を増やしたから、業務に差し支える事は無くなった。後は好きにしたらいい、それがどれだけ勝手な発言であろうか。

 原初の神の一柱である女神セリュシオネの言葉は、軽いはずが無い。議場は一気に騒めき立った。


 多少、人間が少なくなっても、繁殖力の高い生物に転生させればいい。それが、亜人だろうが魔獣だろうが、一向に構わないだろう。寧ろ、信仰心の高い方が、神に取っても都合がいいはず。この際、人間の大陸は消滅しても何ら問題は無い。

 それは人間の消滅を、容認する事に他ならない。纏まらない議論は更に白熱し、怒号が飛び交い始めた。

 

「皆、静まりなさい。それとセリュシオネ、協議の場で不用意な発言は控えなさい」


 一喝し、女神フィアーナは喧騒を静める。そして、女神セリュシオネに向かい、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「セリュシオネ。貴女は人間を見限ると、言いたいのですか?」

「フィアーナ。それも仕方の無い事だと思いますよ。貴女がどれだけ人を愛そうと、人は過ちを繰り返します。メルドマリューネは、行き着いた結果の一つです」

「感情を失い、ただ命令を聞くだけの木偶が、人間の未来ですって? 馬鹿な事を言ってはいけませんよ!」

「何を馬鹿だと言うのです? 管理の出来ない社会など、必要ないとは思わないのですか? そもそも人間に余計な感情を与えるから、混沌勢が生まれるんです」


 亜人は同族で決して争わない。魔獣はドラゴンを頂点に、完全な弱肉強食の世界で、生き残りをかけて戦い続ける。人間だけが欲望に任せて同族を殺す。

 

 女神フィアーナと女神セリュシオネの言い合いは、原初の神々がロイスマリアを誕生させてから、永遠と続けられた問答である。世界の開闢より、答えの出ないまま今に至る問題である。


 人間という種族が、世界にとって害悪か否か。クロノス・メルドマリューネは、その一つの答えとして北の大国を作り上げてみせた。


 魔道大国メルドマリューネで生まれた者は、魔法により感情を奪われる。人は意思を持たず、余計な疑念を持たず、混乱を起こさない機械的に動くアンドロイド。生まれた後は、死ぬまで己の役割を日々果たし続ける。

 魔道大国メルドマリューネでは、自由は有り得ない。しかし犯罪が無く諍いも無い、誰もが等しく平和を享受出来る国であった。


 女神フィアーナは、言葉を続けた。その瞳には燃え盛る炎が宿り、周囲を焼き尽くさんとする勢いだった。


「セリュシオネ、私は諦めませんよ。不完全だからこそ、神の予想も覆す未来を掴むのです。それが人間です」

「それは、貴女の息子達を指してるのですか?」

「他にも大勢いますよ。現に貴女も先程認めていたでしょ?」

「何の事です?」

「帝国で皇帝をやってた貴女の眷属ですよ。優秀だと言っていたのは、誰でしたか?」


 女神セリュシオネは、深々と溜息をついた。そして女神フィアーナに、酷く冷徹な目線を向ける。


「いいでしょう。今回は引いて差し上げます。その代わり条件を頂きます」

「条件とは?」

「クロノス・メルドマリューネの魂魄。あれを私の眷属にします。これから、私の仕事は益々忙しくなるんですから、眷属をもう一人増やしても構いませんよね?」

「構いません。好きになさい」


 不敵な発言をする女神セリュシオネを黙らせても、会議が進展した訳では無い。再び騒めき出す神々を、女神フィアーナは一喝した。


「いい加減になさい!」


 静まり返る協議の場で、アンドロケイン大陸の大地母神である女神ラアルフィーネが、女神フィアーナに問いかける。


「フィアーナ。結局、貴女はどうしたいの? 人間を滅ぼす気は無いんでしょ?」

「当たり前でしょ!」


 女神フィアーナは、一呼吸つくと会場全体に響く様に声を張る。


「大地母神の名において命じます! 大陸で起きる戦争に介入し、止めさせなさい! これ以上、死者を増やしてはなりません!」


 だがその言葉に、不満を感じる神も存在はするのだ。


「あれだけの事をしておいて、制裁は無いのですか? 万死に値する所業では無いですか?」

「制裁は行いません! 決着は人間の判断に任せます」

「何故ですか? あれだけの数を殺せば、世界のマナが著しく調和を乱す。それがどう影響するのか、貴女が一番ご存知でしょう」


 女神フィアーナは、異論を唱えた神を真っ直ぐに見据えた。


「勘違いをしてはいけません。我等は世界の管理者で有り、執行者では有りません。人間の罪は、人間が裁くのです。そこに我等が介入すれば、いずれ破綻をきたします」


 言い終わると女神フィアーナは、全ての神々をに届く様、議場をぐるりと見渡した。

 

「人間の世界は終りません。終末の時にはまだ早いのです! 一番重要なのは、元凶のロメリアを捕らえて、早く混乱を収める事! ロメリアはメルドマリューネにいます。徹底的に探しなさい! 後はマナの調和を優先しなさい! わかりましたね!」


 女神フィアーナの迫力に押される様に、議場には拍手が起こる。その拍手につられ、他の神も拍手をする。しかし、それも全体の半数程度でしかない。

 不満を募らせる者達は、ただ口を噤む。好機が来るその時まで。そんな中、神々の直接介入が行われようとしている。


 これが事態の改善を見せるか否かは、神ですらわからない。

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