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改訂版 妹と歩く、異世界探訪記  作者: 東郷 珠(サークル珠道)
第五章 人間達の抗い

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第百十七話 シュロスタインの村

 再びペスカ達は、青い点滅の集合地点へ車を走らせる。そして数時間程で、集落に到着する、しかし集落の状態は、余り良いとは思えなかった。


 ただ、呆然と立ち尽くす男。地べたに突っ伏してる男。口を開け、天を仰いでいる女。膝を抱え蹲り震える子供達。集落の人々は、とても活発とは思えない。寧ろ精気が抜け、だらりとする姿が多く見られる。


「あ~。何だか酷いね」


 車から降りたペスカの呟きに、冬也達は頷いた。


「どうする? 俺が活を入れるか?」

「止めてお兄ちゃん! あの状況で神気を受けたら、みんな死んじゃう! 私に任せて!」


 ペスカは笑顔を浮かべた後、近くに落ちていた木の棒を拾い、クルクルとバトンの様に振り回し、クルリと回ってポーズを決めた。

 

「元気でろでろ、でろりんちょ!」


 光がペスカから飛び出し、村中を包み込む。人々からは、やや活気を取り戻した様に見えた。立ち尽くしていた男は、我に返って歩き出す。空を仰いでいた女は、キョロキョロと辺りを見回している。子供達はゆっくりと立ちあがった。


「ペスカの魔法、すげぇな!」


 冬也は感想と共に、ペスカの頭を撫でる。しかし空と翔一の反応は、今ひとつだった。


「うゎ~、ペスカちゃん。それ魔法少女?」

「そうだね。ペスカちゃん流石に年齢、いでっ!」


 ペスカは俊敏な動きで、翔一にデコピンを食らわせる。余計な一言で、お仕置きを受けた翔一は、額を抑えて蹲った。


「どうだ! お兄ちゃん直伝のデコピンの味は! 乙女に年齢の事を言っちゃ駄目なんだよ!」

「ペスカちゃん。なんで僕だけ!」


 翔一は額を抑えて蹲る。そんな翔一の肩を冬也は優しく叩いた。


「仕方ねぇよ。ペスカだし」

「冬也。意味が解らないよ」


 ただ、間違いなく村人達には、多少精気が戻った様に見える。


 軽く話しを聞いた限りでは、ほとんどの村人達が数日の間、まともな食事を取っていない事がわかった。

 確かに、多少は元気が戻ったと言っても表情は未だに暗く、ふらついて歩く者が多いのはそのせいだろう。


 急いで冬也と空は麦粥を作り、村人達を集めて振舞った。麦粥を食べた村人達は、僅かに体力が戻って来た様で、少しずつ笑顔を見せ始める。その間ペスカは、一人の女性から話を聞いていた。


「こんな辺境の村では、教えられる事は少ないわ」

「何か噂でも良いんだけど、知ってる事は教えて」

「そうね。モーリス将軍が捕らえられたって噂を聞いたわね」

「うそっ!」

「噂よ、噂。でもモーリス将軍がいれば、戦争は起きて無かったんじゃ無いかしら」


 女性の話しでは、村中の人々の気力が段々と失われていったのは、アーグニール王国、グラスキルス王国と三国間で戦争が起き始めてからとの事だ。

 また、モーリス将軍の名前で、現在地が明らかになる。ここはシュロスタイン王国。女性の話しでは、王国の北東に位置する村だという。

 

 悪い予感は外れて欲しかった。しかし、現状から推測するに、戦争は間違いないのだろう。

 確かに、女性の言葉通りだ。モーリスが健在ならば、戦争は起きなかったはずだ。ただ、あのモーリスが何故投獄されているのだろう? グレイラスが仕掛けた置き土産か? そんな負の遺産はうんざりだ。


 ペスカは少し眉間に皺を寄せ、考え込む様に口を噤む。そんなペスカに、麦粥を配り終えた冬也が近付く。

 冬也にも女性の話が耳に届いていたのだろう。少し驚いた様な声で、ペスカに話しかける。

  

「ペスカ。まさか、モーリス将軍ってのが鬼強い人か?」

「そう。この国の将軍! まさか捕まってたなんて」

「どうする? 助け出すか?」

「そうだね、助け出そう。それで、戦争を止めてもらうの!」


 勢い良く拳を掲げるペスカに、翔一が質問する。


「その将軍って人が、戦争を起こしている張本人って可能性は無いのかい?」

「モーリスに限って、ぜ~ったい有り得ないね」

「万が一その将軍に問題が無かったとして、それだけ影響力の有る人なのかい?」

「この国の将軍だよ。鬼強いんだよ。翔一君なら覇気だけで、おしっこ漏らすよ」

「漏らさないよ!」


 翔一はモーリスの姿を幻視し、少し震える。

 

「兎に角、出発! 目指せ、王都!」


 ここで、これ以上の情報を聞き出すのは無理だと判断したのだろう。ペスカは車に乗り込むと、村人から聞き出した王都の方角と、車のスクリーンに映る光の点を照らし合わせる。

 それから遅れる様にして、後片付けを済ませた空と翔一が冬也に合流し、三人は車に乗り込んだ。


「恐らく、この赤紫の塊が王都だね」

「ペスカ、地図は?」

「こんな寂れた村に、地図なんて大層な物無かったんだよ!」


 ペスカが手を払う様な仕草で冬也に答えると、冬也は仕方なく赤紫の塊に向けて車を走らせる。

 目指すは、シュロスタイン王国の王都。戦争終結に向けた、ペスカ達の冒険が始まろうとしていた。


 ☆ ☆ ☆


 とある城の謁見室、そこには少年と美女の姿が有った。そして少年は玉座に座り、いやらしい笑みを湛えて美女を見下ろす。美女はうっとりと少年を見上げていた。 


「そっか、グレイラスがくたばったんだ」

「役に立たない奴でしたわ。結局、あのガキ共を連れてこれなかったですし」

「まぁそう言わないでよ、メイロード。彼だって役に立ったさ」

「どんな風にですの?」

「原初の神から離反する者を増やしただろ?」

「それはそうですわね」

「何よりも、大陸の中央部を滅茶苦茶にしてくれた」

「あれは、怒りに任せてですわ」

「良いんだよ、それで。おかげでやりやすくなったよ」

「それで、我が君はこれからどの様に?」

「中央部では死体が転がってるだろ? そいつを利用してもっと面白くしようと思ってるよ。離反者の追跡で原初の連中も混乱してるだろうしね」

「良いですわね。その間に我が君が完全に力を取り戻せば」

「そうさ。ようやく、あの忌々しいガキ共を殺せる」


 そして、男女は互いに笑いあう。それは大陸を終末へと導く笑いであった。


 ☆ ☆ ☆


 暗い檻の中に向かって、影の様に姿を隠した何者かが話しかけていた。


「閣下、帝国に攻め入った三国は死者で溢れております」

「これは、人間が出来る事じゃねぇよな」

「それと、エルラフィアの近衛隊長であるフィロス卿が、行方不明になられていると」

「あの御仁は、俺よりよっぽど強いじゃねぇか。また、神の気まぐれってやつか?」

「私からすると互角としか」

「煽てんじゃねぇよ、ミーア。それより、各国の情報収集を頼む」

「畏まりました」

「アーグニールやシュロスタインだけじゃなくて、帝国やエルラフィアの方もな」

「承知致しました。それで、モーリス将軍とケーリア将軍は無事なのでしょうか?」

「殺そうとしたって、死にはしねぇ連中だよ。それよりミーア。帝国やエルラフィアの方が気になるな」

「十中八九、帝国は終わりかと。エルラフィアが無事なら、いつでも連携が出来る様に連絡を取っておきます」

「こんな事態だ。俺の名ばかりの肩書なら、どんどん使ってくれて構わねぇぞ」

「ところで、閣下はいつまでここにおられるのでしょうか?」

「まぁ、あと暫くはな。今は、ここにいた方が色んな声が聞こえてくるからな」


 そして、影の様に姿を隠した何者かは、檻の前からいなくなる。その後、少し経ってから檻の中にいる閣下と呼ばれた男は、独り言ちた。


「賢帝の死と三国の侵攻。国王陛下のご乱心に、アーグニールとシュロスタインとの戦争かよ。加えて、あの禍々しい瘴気。こりゃあ、二十年前よりも酷い事になりそうだな」

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