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改訂版 妹と歩く、異世界探訪記  作者: 東郷 珠(サークル珠道)
第四章  神々の争いと巻き込まれる世界

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第百九話 犬の襲撃と大乱闘大会

 ドグラシアが国境門を越えて侵攻した。連絡係が告げる言葉に、キャットピープル集団は慌てふためく。そんな中、女隊長の言葉は集団に冷静さを取り戻す。


「者共、落ち着け! おい、状況を伝えろ!」

「ドグラシア国境に駐在していた兵が、突如として我が国の守備隊へ攻撃を開始。そのまま国境門を越え侵攻を始めました。真っ直ぐこちらへ向かっております」


 報告を聞くや否や、女隊長は表情を引き締めて大声で命令を下す。


「そうか。聞いたな! 全軍、迎撃態勢を整えよ! 急げ!」


 これが本来の女隊長の姿なのだろう。先程までの愛らしい姿とは一変し、隊を率いる勇ましい姿へ変貌を遂げていた。女隊長の命令で、キャットピープル達が敏速に隊列を整える。

 ただ、このまま衝突を眺めている訳にはいくまい。ペスカから、優しく問いかける様な声がかかる。


「ねぇ。そいつら、私達が何とかしてあげよっか?」

「何を言ってる! お前達人間が手を出して良い問題では無い!」

「おいてめぇ! 言う事聞くって言ったばっかだろ!」

「黙っていろ、人間! 我らの因縁に口を挟むな!」

「うるせぇぞ! 喚いてんじゃねぇ! てめぇらは、殺し合いがしてぇのか!」


 既に、集団は女隊長の下で、戦闘に向けて態勢を整えている。元々、両国は多少の小競り合いは日常茶飯事の間柄である。それ故かペスカの提案を、女隊長は素気無く断る。

 しかしその事が、冬也の怒りを買う事になる。冬也は周囲を威圧しながら、眼光鋭く近寄る。隊列を整えたばかりのキャットピープル達は、女隊長を中心に全員小さく蹲り震えだした。


「わかったニャ。お、お前、怖いから、近寄っちゃ駄目ニャ。言う事聞くニャ。来ちゃ駄目ニャ」


 ペスカは少し苦笑いして、女隊長に話しかける。冬也が集団から離れると、少し落ち着きを取り戻したのだろう。女隊長は、毅然とした態度でペスカに答えた。


「ドグラシアの侵攻途中に、町や村は有るの?」

「無い! この辺りは、三国の国境が近い。従って武力衝突が多い。だから、この辺りは平野で何も無い!」

「おおぅ、物騒だね。じゃあ、マールローネの兵士達に事情を話して、国境門からこっちに来て貰って」

「馬鹿な! 誇り高いキャトロールが、他国の兵と共に戦えるか!」


 熱り立つ女隊長に、ペスカは額を小突いて黙らせる。


「勘違いしないの。良いから言う事聞く! ほら、早く!」

「お前も痛い事するニャ。そんな奴は酷い目に合わせるニャ!」

「言う事を聞かないと、お兄ちゃんが来るよ」


 ペスカが冬也を見やると、女隊長は毛を逆立たせる。仕方なくといった感じだろう。ペスカの指示に従い国境門へと向かう。その間ペスカは、冬也達三人を集めて作戦を伝えた。


「ペスカちゃん、本気?」

 

 ペスカの作戦に、空が驚き声を上げる。しかしペスカは、至って平静であった。


「この事態は、私達を狙ってる神の仕業だよ。キャットピープルと魚人が、オートキャンセルに反応したのが証拠でしょ? もうそろそろ、黒幕に出てきてもらおうよ。こんな事が、ずっと続くの面倒でしょ?」

「ペスカちゃん。神様ってそんな単純なの? 出て来たとしてどう戦うの?」

「問題ないよ。何度も戦ってるしね。空ちゃんと翔一君は、キャンピングカーに隠れてて」

「操ってる手駒が大騒ぎをすれば、そこに僕等がいると考えた神が現れるって事だね。やるねペスカちゃん」

「翔一君、回りくどい解説どうも。それに免じて今回は出番をあげよう」


 作戦を今ひとつ理解していない冬也は、初めて見る魚人に対し感慨にふけっていた。


 女隊長がマールローネ側の兵達に事情を説明し、国境門に招き入れる。しかし、マールローネから入国した魚人の軍隊は、訳が分からずキョトンとしていた。

 そんな魚人達を見つめて、冬也は呑気に呟いた。


「魚人って人間と何処が違うんだペスカ? 姿は全く俺達と変わんねぇな」

「お兄ちゃんは少し黙ってて。翔一君は全体に結界張って。終わったら、魚人達に委細の説明。ちゃんと煽る事。空ちゃんは、魔攻砲でオートキャンセルの発射準備。充分引き付けてから撃ってね」


 ペスカの指示で、空と翔一は準備を急ぐ。


「なぁ、ペスカ。兄ちゃんにもわかる様に、優しく教えてくれよ」

「もう! お兄ちゃんは、ワンちゃん達を躾ける事だよ」

「おぅ! でも、魚人は?」

「うっさい! 緊張感無いよお兄ちゃん! 魚人の首元見て! えらが有るでしょ?」

「おぉ! すげぇな!」


 緊張感の欠片も無い冬也に対し、ペスカは不満気に答える。直ぐに結界を張り終えた翔一が、魚人達へ神の関与に関する委細を説明する。そうこうしている間に、ドッグピープルの軍隊が目を血走らせ、雄叫びをあげて近づいて来る。


 ペスカが合図し、空が魔攻砲でオートキャンセルを放つ。放たれた光は、ドッグピープルの軍隊の頭上で拡散し降り注いだ。オートキャンセルを浴びた途端に侵攻を止め、ドッグピープル達は立ち尽くす。


「ほら、お兄ちゃんの出番だよ。ワンちゃん達の調教タイム開始!」


 冬也は腕を回し、神気を高めながら、ドッグピープルの軍隊に近寄る。冬也が近づく度に、ドッグピープル軍団は大声で叫び威嚇する。

 

「なんだか、近所の犬みてぇだな」


 叫ぶドッグピープル軍団に、キャンキャンと吠える近所の犬を彷彿とさせた冬也は、一喝して黙らせた。

 

「てめぇら、ぶっ飛ばされたくなきゃ黙れ!」


 冬也の一喝にドッグピープル軍団は、一斉に仰向けになり服従のポーズを決める。


「よ~し、良い子達だ。全員立って整列だ!」


 ドッグピープル軍団は、冬也に従順で素早く整列をする。


「よ~し、よし。良い子だ」


 冬也が褒めるとドッグピープル達は、少し嬉しそうに口元を緩める。


 冬也は無自覚にも一喝した時に、とても攻撃的な神気を放っていた。それが、ドッグピープル達の服従に繋がったのだろう。そして褒める時は、とても柔らかく包み込む様な穏やかな神気を放っている。

 二つの神気を無自覚に操り、冬也はあっさりとドッグピープル達の調教を終えた。

 

 ドッグピープル達を引き連れて、冬也はペスカ達の元へ戻る。途中ざっくりと冬也は神の関与について、ドッグピープル達に説明をした。しかし冬也の説明では良く理解出来ない様で、首をかしげていた。


 国境門から離れた所に、キャットピープル軍団、魚人軍団が揃って整列させられている。キャットピープル、魚人共にペスカによって、武器を取り上げられている。冬也も同様に、ドッグピープルから武器を取り上げ整列させた。


 整列させられた亜人達は、困惑の表情を浮かべている。そして徐に、ペスカが大声で話始めた。


「諸君等は、何故ここに集まっているかわかるか?」


 亜人達は揃って首を傾げる。


「全て邪悪なる神の仕業だ! 諸君等はまんまと踊らされたのだ! 悔しく無いのか!」


 説明は受けていた。流石に真実だとは思わなかった。しかし、真剣な表情で語るペスカを見て、真実だと理解したのだろう。徐々に亜人達が騒めき立っていく。


「勇敢なるキャットピープルの諸君! 神に騙され人間を追い回し、あまつさえ犬達に攻められた事、悔しいと思わないか!」

「悔しいニャ! 許せないニャ! やっつけるニャ~!」


 女隊長を筆頭に、キャットピープル達の間に怒号が飛び交う。


「海の戦士達よ! わけもわからず神に操られ、踊らされた事。悔しいと思わんのか!」


 魚人達の間からも怒声が飛び交い始める。


「誠実なるドッグピープルの諸君! 神に言われるがまま、猫の国に攻め入った事を悔やんで無いのか! それでも、諸君等はドグラシアの戦士か!」


 ドッグピープル達の間に、激しい怒声が巻き起こる。


「良いか! 貴様等は、神に踊らされた只の愚か者だ! 屑野郎共だ! 貴様達は、戦士では無かったのか! 国の為に命を掛ける戦士が、神の言いなりに成り下がった! 屑野郎のままで良いのか!」


 亜人達の熱気は最高潮に高まっていく。亜人達の熱気にあてられ、ペスカのテンションが上がっていく。


「屑野郎から卒業したいか~!」

「おお~!」

「貴様等は戦士か~!」

「おお~!」

「ならば戦え~!」

「おお~!」


 ペスカに煽動者としての才能が有るのではないか、そんな事を考える位、亜人達は一つにまとまっていく。まるでコールアンドレスポンスの様に、亜人達は一体となりペスカの掛け声に応える。そして、ペスカのテンションが最高潮まで高まる。


「これから、貴様等の武を示せ! 貴様等全員、武器と魔法を使わず、拳と拳で戦い合え! 勝ち残った者には神を殴る権利をやろう!」

「うぉおおおおおおおお~!」


 亜人達は興奮して、絶叫する様な雄叫びを上げる。

 

「さぁ、開始だ屑野郎共! 戦え~!」


 ペスカの合図で、キャットピープル、魚人、ドッグピープル、三種類の亜人が入り乱れたバトルロイヤルが開始された。

 興奮状態の亜人達は、蹴り殴り掴み投げ、持ち得る体術で戦う。鼻血を吹きだし、投げ飛ばされても亜人達は果敢に戦う。やがて骨折等、負傷しリタイアする者が現れ始める。


「怪我した人は、こっちですよ~」

 

 翔一が怪我人を集めて、空がまとめて魔法で治療を施す。ただ予想外なのは、治療された途端に、亜人達は戦いに復帰する。発端のペスカが止め辛い程に、周囲の空気は戦い一色に染まっていた。


「ペスカ。やべぇんじゃねぇか?」

「うん。怖くて止められないね」

「どうすんだよ!」

「どうしよう、お兄ちゃん」


 熱い戦いが繰り広げられている様子を、ペスカと冬也は顔を青くし、ただ傍観していた。暫く傍観していると、突然ゴンっと鈍い音と共に、ペスカの頭に痛みが走る。


「あなた何やってんの! せっかく見つけたと思ったら、こんな騒ぎ起こして!」


 ペスカと冬也が振り向くと、そこには女神ラアルフィーネが立っていた。

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