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改訂版 妹と歩く、異世界探訪記  作者: 東郷 珠(サークル珠道)
第四章  神々の争いと巻き込まれる世界

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第百二話 帝国の反撃

 戦場というものは、たった一日、いや一時間でも状況が大きく変化する。もし、シグルドという男が三人もいたならば、また違ったのだろう。しかし、そんな事は有りえない。


 北方と南方の二国からの戦線は瓦解し、シグルドが前線に立っている中央部まで、南北の辺境軍は撤退を余儀なくされていた。

 シグルドですら、その窮地を打開する策は持ちえなかった。せめて、南北から撤退してきた辺境軍をまとめて立て直しを図る位だろう。


 しかし、見通しは暗い。中央からの軍勢に合わせて、南北からの挟撃に遭うだろう。それでは、全滅も止む無しだ。

 そんな時、シグルドに一報が入る。それは、シグルドの目を再び輝かせる内容だった。


「そうか、到着したか」

「はい。これで」

「あぁ。我等は撤退をしながら、援軍と合流する。それからが反撃だ!」

「北方と南方からの軍勢は如何に?」

「あれは、中央の軍と集結させてしまった方がいい。どの道、それぞれが違う国の軍だ、足並みも揃うまい」

「では、挟撃を防げる所まで、撤退をすると?」

「その通りだ。殿は私が引き受ける。合流するまで、君達は耐えるんだ!」

「それではシグルド殿が……」

「私なら問題ない。それに、我が近衛が来ているのだろう?」

「え、ええ」

「それを率いているのは、ルクスフィア卿とメイザー卿だ。君達は、彼等の指揮にしたがうんだ」

「わかりました。ご武運を」


 伝令の兵が駆けていくのと同時に、シグルドは剣を抜いて陣を飛び出した。


 援軍が来るとわかっているなら、話しは早い。自分独りが囮になって、敵軍を集中させればいい。雑兵など、幾らいても相手にはならない。守るべき味方が居ないなら、暴れまわるだけでいい。単純な方法だ。


 もし冬也なら、同じ選択をしただろう。

 もしペスカなら、大規模な魔法で敵軍を蹂躙しただろう。


 二人の真似は出来なくても、近しい事なら出来る。ここは、もう自分の戦場だ。そして、シグルドが単騎で敵軍に突っ込んで行く中、帝国軍は撤退を開始した。


「一人だってここは通さない! かかって来い蛮族共!」


 そして、シグルドの戦いは始まった。敵軍に突っ込んで行ったシグルドは、あっという間に囲まれる。しかし、シグルドの強さは桁違いだった。

 

 全方向から槍で突き刺そうとしても、それら全てが叩き折られる。そして、一瞬で命を奪われる。どれだけ剣を振り下ろそうとも、全ては跳ね返される。そして、また命を絶たれる。


 魔法を放とうとも、シグルドに通じない。全ての魔法を叩き落して、ただひたすらに襲い来る敵兵を切り捨てる。それは正に鬼神の様だった。


「何をしている! 相手はたった一人だぞ! 殺せ! 殺せ! 奴を殺せば、我々の勝利は目前だ!」


 敵将が何を言おうと構わない。そして、シグルドはここで死ぬつもりすらない。ただ、力任せに相手を切り殺し、この場に引き留められれば良いだけ。時間を稼げば良いだけ。


 そうすれば、自ずと勝ちは転がって来る。クラウスとシリウスが、ペスカの作った兵器を携えて到着する。近衛隊も到着する。そうなれば、今度はこちらが蹂躙する番だ。 

 

 十分が経過しようが、二十分が経過しようが、シグルドが倒れる気配は無い。それどころか、シグルドの体内では猛烈な速度でマナが巡り、体を動かしている。


 鬼気迫るシグルドの様子に、段々と攻撃の手が緩んで来る。自分達の攻撃が通じない事がわかったのだろう。殺せない事を理解したのだろう。そして死ぬのは自分達である事も。


 もう、そこはシグルドの独壇場だった。


 敵兵は怯え始めている。それは、徐々に伝播していく。どれだけ敵将が声を荒げ様と、自軍を鼓舞しようと、通じなくなっていく。


 そして、一時間が経過しようとする頃に、北と南側の国から領軍を追い込もうとした軍勢が、中央からの軍勢と合流する。ここに、凡そ三十万近くの兵力が集まる事になる。

 しかし、それはシグルドの読み通りだった。


 混乱し始めた中央の軍と合流しようと、三国は別々の指揮系統を持った軍だ。それを率いる総大将が存在するはずもない。

 三国は、個別に攻めるしかない。しかし、大軍が集中する中では指揮系統が乱れて統率が取れない。そして、前線はシグルドによって崩れ様としている。


 そんな中だった。それは現れる。


 大きな音と共に打ち出された弾は、敵軍のど真ん中に着弾し爆発する。一発で数百の敵兵が吹き飛ばされる。

 

「来たか!」


 シグルドは呟くと共に、二発目が敵軍に着弾する。そして、再び数百の敵兵が吹き飛ばされた。


 集中した三国の軍勢は、何が起きたのかわからず混乱を極めていた。そこに、集中砲火が続く。慌てて、撤退の指示を出そうとしても、指揮系統が混乱している。

 更に悪い事に、南北の両方からも砲撃が行われた。


「何が、何が起きている!」

「閣下! 北から敵が攻撃をしかけて来ています!」

「伏兵か? そんなもの居なかっただろ!」

「帝国の援軍かと」

「くそっ! 魔法で応戦しろ!」

「しかし、軍が集中し過ぎたせいで、正確な伝令が!」

「そんなもの何とかしろ!」


 それは、南の国からの軍でも同じ光景が繰り広げられていた。それぞれの国の軍が混乱をしていた。

 反撃の暇を与えんとばかりに、砲撃は続く。中央に集中した軍勢は多くの兵を失い続ける。そして大半の兵を失った所で、ようやく三国の軍勢は撤退を始めた。


 もう、シグルドを囲む兵もいない。後は、完全に国境まで追い返すだけだ。


「シグルド隊長。遅くなりました」

「いや、来てくれて助かった。それで、ルクスフィア卿とメイザー卿は?」

「ルクスフィア卿は北方へ、メイザー卿は南方へと追撃を開始致しました」

「流石だな。こちらの意図を酌んで、進路を変えてくれたのか」

「はい、隊長の思惑通りです。我等は中央の軍を追撃しましょう」

「ルクスフィア卿とメイザー卿には、くれぐれも油断しない様に伝えてくれ」

「神が降臨される可能性でしょうか?」

「いや、もう降臨しているかもしれない。何か異変が起きたら、直ぐに撤退を。戦車なら、直ぐに帝都まで戻れるはずだ」

「直ぐに伝えます。それと、隊長は戦車にお乗り下さい」

「あぁ」


 この戦況は、直ぐにトールの耳にも届く。それは議会にも届いた。議会内には歓声が響く。そして、トールはその歓声を鎮める様に、声を大にした。


「皆様! ここからです! 直ぐに和平の使者を送りましょう!」

「して、誰が行く? トール・ワイブ少将、其方に任せても良いのか?」

「いえ。お言葉ですが、和平の使者は我が国の近衛隊長、シグルド・フィロスに賜りたく存じます」

「何を言う! シルビア殿!」

「いいえ。正式な和平交渉なら、貴国の代表がなさるべきでしょう。しかし、戦争は未だ終わっておりません。何が有るとも限りません」

「それでは、シグルド殿が!」

「人が相手であるなら、シグルド・フィロスは負けません。どうか皆様、使者は我等にお任せを!」

「それなら、フィロス卿に任せよう。皆も良いだろう?」

「何を!」


 議会は、シルビアの言葉に賛同した。しかし、トールは納得がいかない様子で、顔を真っ赤に染めている。

 

 内戦を救われ、三国の侵攻からも救われ、それで更に和平の使者まで友好国に頼ろうと言うのか。


 冗談じゃない! そんな恥も外聞もない事をしてたまるか! 如何に帝国の基盤が緩もうが、誇りを忘れて帝国人と呼べるのか!


「和平の使者は我が国から派遣すべきです! 私が参ります!」

「トール・ワイブ少将、もう決まった事だ」

「ですが!」

「くどい! これで、今日の議会は解散だ。次回は引き続き新たな皇帝陛下を選ぶ事にする!」


 トールの要請は議会に受け入れられない。そして、後にトールはこの事を後悔する事になる。

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