336話 まっくら
「……?」
ふと、リットは目が覚めた。
目を開ける。
しかし、なにも見えない。
体を起こそうとした。
しかし、手足が自由に動かない。
どうしたんだろう?
なんだろう?
リットは頭の中で疑問符をいっぱいにした。
身動きできず、なにも見えない。
普通なら恐慌状態に陥ってしまうだろうが、リットは落ち着いていた。
動けないのなら仕方ない。
見えないのなら仕方ない。
そういう感じで、かなりあっさりと割り切っていた。
「んー……」
うまく言葉を喋ることができない。
テープかなにかで口を塞がれているようだった。
「……むぅ?」
リットは横になったまま小首を傾げた。
どうやら首は動かせるようだ、と思う。
次いで疑問に思う。
なぜ、自分は見知らぬ場所にいるのだろう?
どうして身動きできないようにされているのだろう?
わからない。
よくわからない。
まったくわからない。
リットの頭の中が疑問符でいっぱいになる。
「むー」
目を凝らす。
暗闇の中に、わずかではあるが扉らしきものが見えた。
どうやら自分は部屋の中にいるようだ。
そこまでは理解できたものの、やはりなぜ? という疑問がつきまとう。
アルムと一緒に城の中庭にいた。
猫を部屋に連れていけないかお願いした。
アルムが少し別のところに移動した。
そこから先は……
「……むぅ?」
よくわからない。
覚えていない。
後はもう、気がついたら暗闇の中だ。
「……」
わからないものはわからない。
動けないものも動けない。
なら仕方ない。
リットはそう割り切り、もがもがと動くのを止めた。
周囲を観察するのも止めた。
床の上に寝転がり、ぼーっとする。
ぼーっと。
ぼーっと。
ぼーっと。
なにも考えない。
なにも感じない。
それでいい。
だって自分は……
「……むぅ」
なにも気にしないはずなのに、ただ、なぜかアルムのことを考えてしまう。
アルムだけじゃない。
ブリジット、パルフェ、シロ。
ヒカリとセラフィー。
城で優しくしてくれた人達。
なぜ、彼らは自分に優しくしてくれたのだろう?
そんな優しい人達なら、自分がいなくなったことで慌ててしまうだろうか?
悲しくなってしまうだろうか?
「……んぅ」
それは嫌だな、と。
なんとなくではあるものの、リットはそう思った。




