334話 消えた女の子
「……リット!」
大きな声で呼びかけるものの反応はない。
嫌な予感がして、すぐに周囲の気配を探る。
……人はいない。
「俺が離れている間に、どこか別のところへ? いや、しかし……」
リットは変わっているところがあるものの、子供のように素直だ。
見知らぬ人が言うのならともかく、俺の言葉はいつもちゃんと聞いてくれていた。
それなのに勝手に姿を消した?
待っているように言ったのに?
「ヒカリ!」
「はいっす!」
慌ててヒカリを呼ぶと、秒で駆けつけてきてくれた。
本当に助かる。
「リットを見なかったか!?」
「え? いえ、特に見てないっすけど……なにかあったっすか?」
俺の様子を見てただ事ではないと察したのだろう。
ヒカリが険しい表情になる。
「リットがいなくなった」
「えっ」
「人を呼んで城下町を探してくれ。俺は城内を探す」
「了解っす!」
すぐに状況を理解して動いてくれるのが助かる。
城の塀を飛び越えて。
同時に口笛を吹いて異常事態を仲間に知らせて、駆けていく。
「リット……いったい、どこに!?」
嫌な予感がした。
それが外れてほしいと思っているのだけど……
――――――――――
「……リットちゃんが消えた?」
「申しわけありません」
あれからリットを捜索したのだけど、どこにも見当たらず。
蜃気楼のように消えてしまった。
リットが自分で姿を消したのか?
それとも、敵……ルーベンベルグにさらわれたのか?
それすらもわからない状態だ。
「現在も捜索を続けていますが、未だ発見には至らず……」
「……ルーベンベルグの仕業かな?」
「そちらも調査中ですが、今のところ関与は低いかと」
城内、及び城下町の捜索をしてもリットを見つけることはできなかった。
痕跡もまったくわからない。
次に、もっとも怪しいであろうルーベンベルグの周囲を探った。
もしかしたら、ヤツがなにかしら特殊な方法でリットをさらったのかもしれない。
しっかりとした警備網は敷いていたものの、それをすり抜けた可能性はある。
……しかし、ルーベンベルグに動きはない。
ヤツの配下が動いた報告はなし。
なにかしら大きな動きを見せることもない。
決定的なのは、未だリットを探している様子を見せていたこと。
もちろん、それはフリで、俺達の目をごまかす可能性もあるのだけど……
それにしてはいつもと変わらなさすぎて、可能性は低いと判断した。
「うーん……」
「申しわけありません……全て私の責任です」
「そんなことはないよ。アルムくんは、ちょっと目を離しただけ。警備網とか、色々としっかりしていたんだよね?」
「ですが、目を離すべきではありませんでした」
「でも、やっぱり仕方ないと思うな。リットちゃんは女の子なんだから、どうしても目を離す時は出てくると思うよ」
……トイレのことか?
いや。
そこを指摘されると、そうとしか頷くことはできないのだけど……
「そもそも、そういうちょっと目を離しても大丈夫なようにしていたんだよね? それなのにリットちゃんが消えちゃった。アルムくんに責任はないと思うよ。それよりも、誰が悪いってところよりも、リットちゃんを見つけてあげないと」
「はい」
「どうしたらいいのかな、って考えてみたんだけど……一つ試してみたいことがあるんだ」




