332話 作戦の前に様子を見よう
ルーベンベルグの裏を完全に暴くため、まずは好きなように泳がせる。
なにかしら行動を起こしたとしても、最初は黙認。
してやられた、という感じで好きにさせる。
ルーベンベルグは策がうまくいったと勘違い。
そのまま最後まで事を成し遂げようとするだろう。
そうして徹底的に泳がせた後、一気に反撃。
油断しているところに痛烈な一撃を放ち制圧……それがこちらの立てた作戦だ。
あえて泳がせるため、ヘタをしたら思っていた以上の損害を受けて反撃に出られなくなるかもしれない。
なので、状況の見極めと、反撃に出るタイミングはとても重要だ。
そのあたりはブリジット王女に任せることに。
国政に特化しているかと思いきや、軍務にも長けている。
いざという時にずっと勉強してきたのだとか。
もちろん、ブリジット王女に全てを背負わせるつもりはない。
騎士団のトップが補佐について。
俺も補佐について。
それと、戦闘のプロである元傭兵のカインとセラフィーにも補佐についてもらうことにした。
ここまですれば、まず読み間違えることはないだろう。
ヒカリを筆頭にした諜報部からの報告によれば、ルーベンベルグはなにかしらの準備を進めているとのこと。
ただ、まだ時間はありそう。
なので俺は、今回の事件の中心にいるであろうリットの様子を見ることにした。
――――――――――
「にゃー」
「うなぁ……にゃん!」
「にゃー?」
「にゃ……にゃにゃ! にゃぅ」
「にゃー」
「にゃん!」
中庭。
リットが猫と会話していた……
「にゃん」
「にゃあ~」
俺は今、なにを見ているのだろう?
「……アルム?」
リットがこちらに気づいた。
猫を抱いて立ち上がる。
「なにをしていたんだ?」
「この子と話をしていた」
「……まさか猫の言葉が?」
「わからない」
だよな。
リットならありえるか? と一瞬、迷ってしまった。
「なんとなく話しかけていた。そうしたら、この子はよく動く」
「嬉しいんじゃないか?」
「嬉しい?」
「遊んでもらっている、と思っているんだろう」
「遊んでいる……遊んでいる?」
「違うのか?」
「……わからない」
困惑している様子。
本当にそう思っているようだ。
……最近、よく思う。
リットはブリジット王女にそっくりではあるが、しかし、中身はまったくの別人だ。
別人というか……
同じ人間なのだろうか? と疑問に思う時がある。
人間味がない。
感情が希薄すぎる。
もちろん、そうなってしまうような特殊な生い立ちという可能性もあるが……
それにしては違和感の方が大きい。
本当に、彼女はいったい何者なのだろう?
悪人ではないと思うが……
……うん?
今、俺はリットのことを悪人ではないと思った?
そう判断した?
「……俺もいつの間にか絆されていたのかもしれないな」
「なんのこと?」
「気にしないでいい。それよりも……」
最近のリットは活動的で、こうして自分から外に出ている。
猫と遊ぶことも多い。
そんなリットに対して、このようなことを告げるのは心苦しいが……
「リット……しばらく外に出ないで、部屋の中にいてくれないか?」




