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306話 愉快犯の方がまだマシだった

 ブリジット王女の偽物。


 その目的は?

 どのようにして姿を真似ている?

 他国が関係しているのか?


 色々な疑問はあるものの……

 未だ、一つもまともな情報を得ることはできていない。


 ヒカリに調査を頼み、即日、ブリジット王女の偽物を見つけたという報告が。


 本物のブリジット王女の居場所などを確認して。

 それから、偽物の位置を特定して。

 そうやって、確かに偽物がいる、という判断をしたらしい。


 それから、俺に言われた通り、ヒカリはブリジット王女の偽物を泳がせた。


 その目的。

 背景にあるものを調べようとしたのだけど……


「うぅ……申しわけないっす……」


 俺の部屋にやってきたヒカリは、しょぼんと肩を落としていた。

 いたずらをして叱られた犬みたいだ。


「一度だけじゃなくて、何度も撒かれてしまうなんて……」


 ヒカリは、偽物のブリジット王女を泳がせて、その目的などを探ろうとしたのだけど……

 毎回、ある程度の時間が経つと見失ってしまうらしい。


 最初は、敵もなかなかやるな、と燃えたらしい。

 失敗を挽回してみせる、と。


 ただ、二度、三度と偽物を見失ってしまい……

 それがさらに続いて……そして今。


 だらだらと涙を流して、ついでに正座をして頭を下げていた。


「別に、そこまでしなくていい。というか、怒っていない」

「でもでも、アニキに頼まれた仕事なのに、申しわけないっす……」

「確かに、何度も撒かれてしまうというのは予想外だったが」

「うぐっ」

「逆に言うと、相手はそれだけの力を持っている、ということだ。それを知れただけでもよしとしよう」

「アニキぃ……うぅ、なんて優しい。自分、アニキにずっとついていくっす! いつでもどこでも、つきまとうっす!」

「付きまとわないでくれ」


 言葉の選び方。


「しかし、どうしたものか」


 偽物の目的はわからないまま。

 ただ、ヒカリの追跡を撒くことができる実力者であることが判明した。


 そのような相手を、目的を探るためとはいえ、長期間、泳がせていいのだろうか?

 下手をしたら、盗られるだけ盗られてそのまま消えてしまう……なんてこともある。


 とはいえ、目的がわからないと、なかなか動きづらいところがある。


 たとえば、他国の間者なら?

 絶対に逃亡は許さない。

 他国に情報を渡すことも許さない。

 それらの対策をまずは徹底して、それから捕まえないといけない。


 たとえば、ヒカリの言うように愉快犯なら?

 すぐに捕まえていい。

 今はブリジット王女の偽物はそこまで大きな話題になっていないが、それも時間の問題だ。

 これ以上、騒動が大きくなる前に捕まえるべき。


 どちらの場合にしても。

 あるいは他のパターンにしても、どのようにしてブリジット王女の姿を模倣しているのか、そこはしっかりと突き止めたいところだ。

 犯人を捕まえても、再び別の犯人が……なんていう展開になったら目も当てられない。


 慎重に行動しないと、その懸念が現実のものになるかもしれない。


「おいおい、そういう時こそあたしの出番だろ?」


 セラフィーがやってきた。

 盗み聞きしていたらしく、事情は理解している様子だ。


「えぇ……セラフィーは、犯人を捕まえるとか、めっちゃ向いてないと思うっす」

「あんだよ。あたしが失敗するってのか?」

「強さは誰よりも信頼してるっすけど、捕まえるとか、そういう繊細な作業は向いているかどうか……」

「だな。あたしは、ぶちのめす方がわかりやすくて好きだ」

「自覚しててその発言!?」

「だから、犯人もぶちのめせばいいだろ?」

「もはや蛮族の発言!」


 ヒカリのツッコミが冴えていた。


 まあ、そんな感想はどうでもいい。


「……アリかもしれないな」

「アニキ!?」

「おっ、さすがアルム。話がわかるじゃねえか」

「全てをセラフィーに任せることはできない。ただ、俺とヒカリで連携を組めば……」


 頭の中で作戦を練り上げていく。


 犯人の正体は不明。

 目的も不明。

 なりすましの技術も不明。


 ヒカリを何度も撒くほどの実力者。

 あるいは……


 今ある情報を元に作戦を組み立てて、現状、最善の正解を導き出す。


「一つ、試してみたいことがある」

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― 新着の感想 ―
ヒカルが犬みたいで可愛く感じました。頑張ったのに残念。多少なりともご褒美あると良いねぇ。
ヒカリを撒くほどの逃走術……やっぱり魔法で作られたブリジットのやりたい事とかが具現化した存在で、ある程度時間がたったらドロンと消えるとか?
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