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154話 平和の価値

「おっ、そうそう」


 満足して帰ろうとしたセラフィーだけど、ふと思い出した様子で足を止めた。


「そういや、アルムのことを探していたんだっけ」

「俺を? というか、それならばなぜ騎士団の稽古に参加を?」

「最近、暴れてなかったからな」


 定期的に暴れないとダメ、ということか?

 猛獣みたいだな。


「親父が探してたぜ」

「カインが?」

「なんか、話しておきたいことがあるんだってさ。あたしは詳細を聞いてないから知らねーぞ」

「ふむ?」


 カインの話……いったい、何事だろう?

 軽く考えてみるものの心当たりはない。


「ま、そこまで急ぎじゃねーみたいだから、適当なタイミングで親父のところに行ってみてくれ」

「わかった」




――――――――――




 夜。

 仕事を終えた俺は、カインの部屋に向かっていた。


 思えば、カインと仕事以外で会うのは初めてな気がする。


 かつては敵対したものの、今は仲間だ。

 もっとコミュニケーションをとった方がいいかもしれないな。


 そんなことを思いつつ、彼の部屋の扉をノックした。


「誰だ?」

「アルムだ」

「そうか、入れ」


 許可が降りたので部屋に入る。


 部屋の中はとてもシンプルだった。

 必要最低限の家具しか置かれておらず、それ以外のものはなにもない。

 ミニマリストというわけではなくて、単に、仕事に必要なもの以外を求めていないのだろう。


 彼はプロフェッショナルなのだ。


「話があると聞いたが」

「適当なところに座ってくれ」


 椅子などもないため、床に座る。

 そこにカインがコーヒーの入ったカップを渡してくれた。


「ありがとう」

「砂糖などはいるか?」

「いや、大丈夫だ」

「そうか」


 しばし、二人でコーヒーを味わう。


「……我々、暁のことだが」


 ややあって、カインが口を開いた。


「このままフラウハイム王国と契約を続けるべきかどうか、お前はどう思う?」

「止めるつもりなのか?」


 現状、フラウハイム王国は他国と戦争なんてものをする予定はない。

 戦う場があるとしたら、魔物や盗賊などを相手にしたものになるだろう。


 その場合、カインは満足しないのだろうか?

 暁という最強の傭兵団は、本格的な闘争がないと満たされないのだろうか?


「勘違いしないで欲しいが、我々は戦闘狂というわけではない。セラフィーが特殊なだけであって、他の者は、私を含めて、好んで戦いをするわけではない」

「そうなのか」

「現状、王国の待遇に不満はない。むしろ、満足している。ただ……」


 そこでカインが難しい顔をした。


「我々は、良くも悪くも有名だ。恨みを買っていることもある」

「……だから、迷惑をかけるかもしれない、と?」

「話が早くて助かる」


 カインは真剣に王国のことを考えてくれている様子だ。

 その悩み、迷い。

 できることなら解決したいが……


「たぶん、ブリジット王女はなにも気にしないと思う。暁は貴重な戦力だからな。ここにいてほしい、と願うだろう」

「災いを呼び込むとしても?」

「それは偶然かもしれないし、必然かもしれない。しかし、それを立証することは不可能に近いだろうな」


 というか……

 フラウハイム王国は、すでに暁とがっつり関わっている。

 ここで手を退いたとしても、関係者とみなされて、暁の事情に巻き込まれるかもしれない。


「今更だ。気にする必要はないと思う」

「そういうものか」

「そういうものだ。それに……なにか起きた時は、俺達がなんとかすればいい」

「……その通りだな」


 カインは苦笑して、コーヒーをもう一口、ゆっくりと飲んだ。

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