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第75話 尾張の悪役令嬢様との思い出(58)
《《あの頃》》の俺はいつも悲痛顔……。まあ、涙という奴をポロポロと垂らしながら叫びつつ、自分の腹部を両手で押さえつつ床の上をのたうち回るこだぬきポンポコリンへと変わる。
……でもそんな悲惨な様子の俺を見ても吉の奴はいつもニヤニヤと妖艶に薄ら笑いを浮かべつつ歓喜するだけで。
その後のアイツは、何処から用意してきたのかわからない本物の鞭でね、《《あの頃》》の幼い俺の身体をね。
《パチン!》
《パチン! パチン!》
《パチン! パチン! パチン!》と。
《《尾張の悪役令嬢さま》》はいつも手加減なく叩き始めるから。
幼い俺の小さな口からも自然に。
「痛い!」
「痛い!」
「吉姉さま痛いよ!」
「堪えてよ!」
「助けてよ!」
「僕にこれ以上酷いことをしないでおくれよ」
「吉姉さま頼むよ!」
「頼むから~、吉姉さま~!」と悲痛な声や叫び。
まあ、《《あの頃》》の俺はいつも泣きながら《《尾張の悪役令嬢さま》》へと嘆願を繰り返す日々が続いた。
しかしアイツはみんなも知っての通りで、日の本一の最悪の悪女さまであり、第六天の魔王! 覇王! 織田信長だから! 奴の口からはいつもね……。




