第32話 尾張の悪役令嬢様との思い出(15)
【鬼武蔵】の奴はスペインの闘牛士のように、可憐にヒラリと先ずは恒興の振り下ろした拳を避け──。その後あいつの捨て身タックルもあっさりと交わして見せるから。
【鬼武蔵】の奴は、そのまま恒興の阿保の捨て身タックルの勢いも利用しつつ避けながら、自分の拳を恒興の顔面へと殴り込むから。
《ドン!》
【鬼武蔵】の奴に勢いよく殴られた恒興の奴はそのまま地面へと後頭部から勢いよく。
「うげっ!」
「げろ!」
恒興は変な顔と声を漏らしながら倒れ込み、車に轢かれた蛙のように大の字で地面に転がる。
だから今度は恒興の奴が俺のように【鬼武蔵】から見下ろされ、見下され、侮られながら嘲笑いの刑に遭うのだった。
◇◇◇
「ほら、ほら、立てよ、恒興~! こんなんじゃうちも遊べないから面白くないし、姫さまも満足できないだろうから早くたてよ~、恒興~。ひっ、ひひひ~。はっ、ははは~」
《《あの時》》の【鬼武蔵】は、地面に大の字で転がる恒興を見下ろし、見下しながら嘲笑いと罵り。
その後は異世界ファンタジーのラブコメのテンプレ通りに【鬼武蔵】の奴は高笑いをしながら恒興の顔や身体を蹴鞠にして楽しみ始めていたよ。
この手のパターン……。
俺や恒興……。
その他の者たちがヤンキー姉ちゃんの誘いにノリ──【鬼武蔵】へと『うり~!』、『わりゃ~!』の捨て身タックルや渾身の拳を交わされ、避けられ、倒れ込み、地面を枕にすることがあればね、大抵の者たちは今の恒興のような悲惨な様子……。




