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政略結婚予定の婚約者同士である私たちの間に、愛なんてあるはずがありません!……よね?  作者: 鳴宮野々花@書籍4作品発売中


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34. 事の真相

「……謝っても謝りきれないわ。我ながら……本当に迂闊なことをしてしまった……。ごめんなさい、グレースさん」

「で、ですから、セレスティア様。どうかもう謝るのは止めてくださいませ。私もおかしかったんですから。あ、あんな……、過剰に反応して……」


 数日後。


 ようやく父に解放された私は脱兎の勢いで学園に戻り、セレスティア様と二人きりで話をする機会を得た。放課後、学園寮に戻った私たちは、私の部屋で向かい合っていた。


「あ、それと……セレスティア様、あの日私の部屋まで何度か来てくださったそうですね。本当に、すみませんでした……。ふ、布団をすっぽり被っておりまして……その……」

「いいのよ!あなたが謝らないで!私が全て悪いのだから。それだけあなたを傷付いてしまったってことだわ……」

「い、いえ、そんな……。……ふふ。もうお互いに謝罪は終わりにしましょう、セレスティア様。話が進みませんわ」

「……そうね。……ふふ。じゃあ、もうごめんなさいは止めるわね。それよりも、あなたに打ち明けなくてはいけないわ。……あの日のことを……」


 そう言って、セレスティア様は覚悟を決めるように大きく深呼吸をすると、目を伏せたままでぽつりぽつりと話を始めた。


「……クランドール公爵家始まって以来の恥よ。……他でもない、あの子のこと……。ミランダよ。あの子ね、ロゼルア王国第二王子の婚約者でありながら、とても人には言えない行動を……」

「……。」


 ゴクリ。

 先を聞くのが怖くなった私は固唾を呑んだ。


 聞けばミランダ嬢はなんと、家族や周囲の目を盗んではすでに複数の男性と不埒な遊びを繰り返し、関係を持っているということが発覚したそうだ。その発覚した経緯が、また驚くべきものだった。


「……下位貴族の子息たちと割り切った遊びをしていただけではないの……。どこでそんなことを覚えてきたのか……、いつしか買い物に行くと言って侍女たちと市井に出かけては、上手いこと言いくるめて護衛や侍女たちを巻いて、一人でいかがわしい界隈で男たちと遊んでいたと……。本人が言うには、勉強漬けの日々のストレスに耐えきれず、発散したかったんですって。お酒や、その、……そういった行為で……」

「…………。」


 恥ずかしそうに家族の恥を打ち明けるセレスティア様のことを、私はあんぐりと口を開けたまま呆然と見守るしかなかった。フォローの言葉も出なければ、相槌も打てない。ま、まさか……、嘘でしょう……?公爵令嬢よ?隣国の王子殿下の、婚約者よ……?


 嘘でしょう?


(っていうか、そんなにストレス溜め込むほどに勉強漬けだったかしら、あの人……。むしろ授業中以外で自発的に勉強してるのなんか一度も見たことないけど……。図書室でも自習室でも会ったことないし)


「発覚したのは、あの子の体調が、その……おかしくなってからなの。どうしていいか分からず、怖くて両親にも相談できずに、迷惑なことに私に打ち明けてきたのよ……。……痒くてたまらないって。……わ、分かる?その……」

「…………ハッ!……え、ええ。はい。な、何となく……」


 いけない、呆然とし過ぎた。

 信じられない。きっと、いわゆる性病というヤツだ。どこかの誰かから、それをもらってきたのだろう、ミランダ嬢は。


「我慢していたら患部はどんどんひどくなる一方で……。でも、バレるわけにはいかないと思ったらしいの。親や、世間や、ましてや、ロゼリア王国の方々には」


 そりゃそうでしょう。


「それで叱られるのを覚悟で、私に相談してきたわけ。もう私、血の気が引いたわ。まさか、我が妹がそんなことを……。本当に倒れそうだった。医者に診せれば、もちろん両親の耳には入る。そうするべきだったのかもしれないけれど、こんなこと両親の耳に入れる勇気も出なくて……。動転したまま、ベイツ公爵令息に相談してしまったの。ほら、彼の実家はそちらの家系でしょう。上手くいけば、他の誰にも知られずにお薬が手に入るかもしれないと思って……」


 たしかに。ベイツ公爵家は代々立派な薬師や医者を多数輩出しており、お父様も領地経営の傍ら医者もやっている。お兄様のケイン様だってあんなに薬学漬けの人だ。


「あの日、あなたに見られた時ね、ベイツ公爵令息に頼み込んで()()()の薬を持ってきてもらっていたのよ。万が一にでも誰かに見られたら、クランドール公爵家末代までの恥……。それに、まかり間違って私がその手の病気を患ったらしいなんて噂が立ったら、殿下に申し訳なくて、もう死ぬしかないと思って……」


 セ、セレスティア様……。

 そこまで思い詰めていらっしゃったのね……。


「それで誰も来ないであろう生徒会室にこもって、カーテンを閉めきって、ベイツ公爵令息からちょうど薬を受け取っていた。……その瞬間よ。あなたがドアを開けたのは」

「……た……、大変失礼いたしました……。そんなピンポイントなタイミングで……」


 セレスティア様の焦りを思うと、申し訳なくて変な汗が出る。


「いいの。あなたは何も悪くない。結局オリバー殿下まで来ちゃって、ごまかしきれなくて殿下にはある程度のことは話したわ。……かなり引いてた。頬が引き攣ってたわ」

「……。」


 でしょうね……。







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