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豊穣神イナリの受難  作者: 岬 葉
人間の街へ

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23 お部屋訪問

「ただいま、エリス姉さん、次どうぞ!」


 リズがリビングへと戻ってきて、エリスに声をかけた。


「あ、わかりました、すぐに行きます」


「ま、待つのじゃ!話はまだ終わってないのじゃ」


「また今度しっかり聞きますので、今日はもう勘弁してください……」


 リズの呼びかけを聞いたエリスはすぐに席を立ってリビングから出て行った。


「ど、どうしたの?」


「エリスは我がいかに神聖な存在であるかがわかってなかったようじゃからな。懇切丁寧に説いておったのじゃよ」


「あー……。どういう流れでそうなったのかはわからないけど、ちょっと無理があるんじゃない?イナリちゃんはどちらかというと元気とか、そっち系のタイプじゃないかな」


「む、どうやらお主にもしっかりと我の神聖さを説明する必要がありそうじゃな」


「私は遠慮しておこうかな。ほら、えっと、イナリちゃんの良さはさ、言語化できないものだから!そうでしょ?」


 イナリがターゲットをエリスからリズへと変えようとしているのを察知したリズは、どうにかそれらしい言い訳でそれを回避しようと試みた。


「……確かにお主の言うことにも一理あるのじゃ」


「うんうん。エリス姉さんもきっとそういうことが言いたかったんじゃないのかな」


「なるほどのう。皆、言葉にできぬだけでわかっておるのじゃな。我、勘違いしてたのじゃ」


 割とイナリの説得は簡単であった。リズは、後でこの言い訳をエリスと共有しておくことにした。


「そうだ、エリス姉さんが戻ってくる前に、先にリズ達の部屋行っておこうか」


「ふむ、よかろう。案内するのじゃ」




 先ほど井戸へと行くために歩いた廊下の途中にあった扉の一つがリズとエリスの部屋であったらしい。リズに先導されてイナリは彼女らの部屋へと入った。中は明かりがついておらず暗かった。


「今魔力灯つけるから待ってね」


 リズが魔力灯と呼んだものを操作すると、部屋が明るくなり全体が見えるようになった。


 部屋には両端に一つずつベッドが置いてあり、片側にはエリスが着ていたのと同じような服がかけられた戸棚があったり、机の上には教会の意匠が付いた道具等が丁寧にまとめられていた。もう片側には大量の本や杖、何かの石などが乱雑に散らかっている。よく見るとベッドのシーツも反対側と比べると若干乱れていた。


 どうやら彼女らはこの部屋を半分に分けて使っているようである。そして、誰がどちらを使っているかも一目瞭然である。


「リズよ、お主、もうちょっと身の回りの整理はした方が良いのではないかや……?」


「あー、流石に言わなくてもリズがこっち側なのはわかっちゃうかあ……」


 リズが部屋の色々と散らかっている側に立って呟いた。


「その、リズも何度か整頓しようと思ったことはあるんだよ?だけど魔術の研究ノートとか、すぐに参照できる位置に置いておきたいものもあるから。それに、店で見つけたいい感じの魔石とかも気が付いたらすぐ増えてるし……」


「うーむ。前者はともかく、後者は何とかなりそうではあるまいか?見つけても拾ってこなきゃいい話じゃろ?」


「いや、ダメだよ!その場で見つけたものが次来た時もあるとは限らないし!何より質がいいものはあればあるほどいいんだから!」


「うーむ、我にはあまりわからん感覚じゃな。そもそもそんなに所有している物が無いからかもしれぬが」


 イナリはそもそも持ち物と言えるものは風呂敷一つに収まるレベルであるし、収集癖のようなものも無いので、あまりリズの気持ちに共感できなかった。


 リズは床に落ちている魔石や本を踏まないように気を付けながら、彼女の机の隣の椅子に座った。


「痛っ!うわ、椅子の上に魔石落ちてたんだけど……」


「本当に、一回掃除とかした方がいいんじゃなかろうか……」


「うーん、一応これでもどこに何があるかは把握してるからさ、変に動かすとむしろわからなくなりそうなんだよね。イナリちゃんって整理整頓とか掃除ってできる人?」


「人じゃなくて神じゃよ。我が住んでいた場所は管理人がいてそやつが大体全部やってたからの、整理整頓とは殆ど縁がないのじゃ」


「イナリちゃんの住んでたところ、聞けば聞くほど本当にどういう場所なのかわからないんだけど……」


「まあその辺は気にしなくていいのじゃ、もう戻ることもあるまいしの。で、我も見様見真似ではあるのじゃが、とりあえずこの石を何かの箱にまとめるところから始めてはどうじゃろうか?それだけでも結構変わると思うのじゃが」


 イナリはその辺に転がっていた魔石を両手に一つずつ拾いあげてリズに問いかけた。


「それはエリス姉さんにも言われたんだけどね、魔石によっては属性を持ってるものがあって、お互いの性質を打ち消しちゃったり、逆に増幅させちゃうものがあるから、あまり意図せずにそういうことが起こると困っちゃうんだよね。例として、打ち消すものだと水属性と火属性の物を長時間近くに置いておくとかするのが代表的かな」


「あ、また解説の時間が始まってしもうたじゃろうか。我あまりわかっておらぬから、そこまで詳しくなくても――」


「で、イナリちゃんが持ってるその二つは火属性と雷属性で、質次第ではくっつけた瞬間爆発したりもする」


「うぉあっぶな!?!!?」


 イナリは慌てて二つの魔石をもとあった場所に戻した。


「そ、そういうことはもっと早く言うのじゃ!」


「あはは!大丈夫、流石に爆発したりするのは本当に質もそうだけどもっと大きくないとダメだから!」


 リズはいたずらが成功したとばかりに笑う。


「本当にシャレにならないのじゃ……。ていうかそんなものなら、なおの事こんな杜撰な管理でよいのかや?」


「本当ですよ。イナリさんもこう言ってるのですし、リズさんにはもっとしっかりしてほしいのですが……」


 イナリが呆れているところに、体を流し終えたエリスが部屋に顔を出した。


「大丈夫大丈夫!一応こう見えてある程度の分類はしてるし、魔力を流したりしなければただの石だから!」


「常に部屋が爆発炎上するかもしれないと思いながら寝ている私の事も考えてほしいです……」


「お主も苦労しておるな……」


「とりあえずエリス姉さんの髪も乾かすから座って!」


 リズは、普段エリスが使っていると思われる机の椅子を引いて、エリスにそこに座るよう促した。




 リズがエリスの髪の毛を乾かし終えると、エリスがイナリに問いかけた。


「ところで、ベッドが二つしかないので、イナリさんにはどちらかのベッドで二人で寝て頂いてもよろしいでしょうか?」


「うむ。問題ないのじゃ」


「……どちらで寝ますか?私のベッドの方が清潔でおススメなのですが、いかがですか??」


 イナリは黙ってリズの方のベッドへと足を動かした。

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