表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/372

72.


 「話は何でしょうか」


 その場で切り出した冬乃に、だが男は、


 「貴女に見せたいものがあるので、もう少しついてきてもらいたい」

 などと言い。


 「・・・・」


 これで警戒するな、というほうが馬鹿げている。


 冬乃は、軽く首をふった。


 「すみませんが、今まだ、やらなくてはならない仕事が残っていて・・・」


 「すぐに済む」

 「明日ではいけませんか。」


 男が片頬を歪めた。


 「おぬしが密偵だということは、分かっている。その証拠を得た。それをこちらの出す条件に従えば、不問にしてやろうと思っていたところだぞ」


 不意に言葉遣いから丁寧さが消えた男へ、冬乃はどうしようもなさげに肩を竦め。

 「私は密偵ではありませんから、証拠なんて出るはずはございません」


 「証拠はある。今おぬしをここで斬り捨ててもいいのだぞ」


 (うわ。何コイツ)


 冬乃はおもわず、ふざけんな証拠なんかあるわけないでしょうが、と反論しかけて口をつぐんだ。


 相手がすぐに扱える武器を持っているのは、やっかいなのだ。


 (素手で白刃取り・・なんてほぼフィクションだしね)

 などと、戯れたことを思える時点で、もっとも冬乃は全く応えてないのだが。



 「どうか、」

 冬乃は、怯えた様子を装って、ちらりと男達を見た。


 「それなら証拠をここへ持ってきていただけませんか・・?私がこれ以上同行できないのは、正直、私を密偵だと信じている貴方がたに何をされてしまうのか、それが怖いからなのです」

 と、正直に言ってみた。


 男達のほうは、冬乃の言葉に顔を見合わせ。

 「おぬしが密偵である証拠は蔵に残っている傷にある、だからここへは持ってこれぬ」

 さもありなん、と思わせそうな言い分だが、


 蔵に残っている、傷?


 (マジに何なの、こいつら?)


 冬乃がいったい、どんな傷を蔵につけたというのか。


 沖田が蔵の鍵を壊したのは覚えている。

 その時の傷なのか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ