68.
皆が食事を終えて、和気藹々と語り合う、
そんな夕餉後の穏やかなひとときの中。
そろそろ厨房に戻らないといけないかなと、席をたつきっかけを計りつつ、
隣では沖田が近藤山南と政治の話をしていて、冬乃は正直驚いていた。
沖田の後世のイメージというと、
むしろ政治には関わることを避け、あくまで沖田自身は近藤と土方を武でもって護る懐刀の存在───近藤を仁、土方を智、沖田を勇とした三幹───であるからで。
その三幹の精神ならば確かに、沖田と近藤のやりとりから明らかに見て取れる。
だがその互いへの根本での親愛とともに、この時代の若者らしく、政治や思想の面での信頼もまた、共にあったのだと。
おそらく沖田は、この手のはなしには普段は黙して語らないのだろうが、近藤や山南などの前でなら自由にふるまうのだろう。
新選組とは敵対関係にある、多くの若い反幕府側の志士たちが、指導者的存在の思想に深く共鳴し、その指導者の思想をもとに行動していたように、
沖田もまた、近藤達の思想に深く共鳴しているようだった。
冬乃はその姿を隣に見ながら、目が開ける想いだった。
(そういえば、新選組や近藤様に、政治や思想が無いなんて、そんな間違ったイメージですら、まだ後世に根強く残ってるくらいだっけ・・)
広間で話をしていた者たちが、いつのまにか近藤の談義に、静かになって耳を傾けている、
その横で冬乃はふと、茂吉がこちらにやってくるのを見て、そっと後ろへ膝で移動した。
冬乃とその向こうの茂吉を見やった沖田へ、冬乃は目礼し席を立った。




