48.
「で、どうして俺たちが隊名を賜ることを当てられたんだ?」
土方が、眉を顰め尋ねた。
「未来から来たから、・・それが答えです・・」
何度目かになる台詞をいいかげん嫌になりながら吐いて。
冬乃は、どうしようもなさに小さく溜息をついた。
「だったら今日起こることを当ててみろ!」
「本日は、新選組史に私が覚えているほどの大きな変化はありませんでした!」
すでに聞かれると予測していた冬乃は思わず大声になってしまいながら即答した。
唖然とこちらを見た沖田たちに。
「ついでに明日もです。」
冬乃は更なる未来予報を添える。
「・・・・ならば聞き方を変える」
(しつこ・・ッ)
「次に起こる大きな事件は何だ」
(何で聞くかな!信じてないんじゃなかったっけ?)
などとツッコミを入れたい衝動につい駆られつつも、冬乃は記憶の内を探った。
八一八政変の十日後から次に起こる事件といえば。
(って、確か・・・新見様の・・)
祇園。『山の緒』の料亭で土方沖田たちに、局長の一人である新見が切腹させられる事件ではないか。
(無理、)
「無理です。言えません」
冬乃は咄嗟に首を振っていた。
「なんだと?」
「人の・・生死に関わることなので、言えないんです」
冬乃はそう言って頭を下げながら。
自分がなんと恐ろしい知識を持っているのかということに、
今更気づかされる想いだった。
(あと少しもしないうちに、一人の人が確実に死ぬいうこと・・)
今は確かに生きていて。動いていて、温かい体を持っている人が。
あと少ししたらもう、いない。
そんなことを、
(知っていたくなんか、ないよ・・)




