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47.



 (なんで)

 

 冬乃は沖田に目を合わせられないまま胸中呟いて。

 

 (そんな平然と。)

 

 全部脱がせた?

 


 (・・そんなのって。)

 


 「もしかして嬢ちゃん、脱がされたこと怒ってるんじゃねえ?」

 

 「・・・原田おめえ、どこまで聞いてたんだ」

 

 「え?はは」

 まるで土方たちの会話をしっかり聞いていた様子の原田に、土方が苛立って聞くのへ、原田が肩を竦めてみせる。

 

 「すみませんね。そうして調べるほかありませんでしたから。なるべく見ないようにはしましたが・・」

 

 沖田が今更困ったように同じく肩を竦めた。

 

 「見ないようにしたぶん、触ったんだろ」

 

 (ええっ!?)

 原田の言葉に冬乃は目を白黒させて沖田を見た。

 

 ・・・なんとも余計な言葉を付け足した原田だが、

 

 確かに書類の有る無しを確かめるには、見るか触るか両方かの三択ではないか。



 (もう最悪・・泣きたい)

 


 ますます憤然とする冬乃に。

 

 「そんくらいの事ぁいちいち気にしてんじゃねえ!」

 

 あろうことか、土方が煩わしげに吐き捨てた。

 

 「どうせ寝ている間で気づかなかったんだからいいだろが」

 

 (うわ)

 

 綺麗な顔して、吐く言葉は女の敵さながらの台詞だ。

 

 (大体“そんくらい“ って事ないでしょ・・!?)

 

 おもわず目を剥いた冬乃に土方は、だがふと何を思ったか、にやりと妖しく笑んだ。

 

 「脱がされた程度で済んだんだから良かったと思っとけ」

 

 (・・・はあん?)

 

 「へたすりゃ、おめえ今ごろ責問受けてたんだぜ?」

 

 「・・・・」

 

 なにそれ。

 

 (ほんとに、どんな責問うけるんだったっての)

 

 「土方さん、」

 

 呆れたように沖田が遮って別の話題を持ち出した。

 「これから彼女をどうします」

 

 「どうするって」

 「八木さんちに滞在させますか。彼女がいうには、帰る場所は無いんだそうですよ」

 

 (あ・・)

 

 どきり、として沖田を見やった冬乃を振り返り、

 

 「貴女はどうしたいんです」

 

 沖田が確かめるように尋ねた。

 


 (・・・沖田様。)

 

 恋してやまない存在に。

 

 いくら彼にとっては仕事だったとはいえ、冬乃の知らぬまに既に二度も体を見られていたともなれば、恥ずかしさに今すぐこの場を逃げ出したくもなるけれど、

 

 (てか逃げ出したところで帰ってくる場所って、此処しかないものね・・)

 

 ああ、もう。

 

 「居させて、ください」

 

 冬乃は。

 

 「お願いします」

 

 心を決めて。

 

 沖田を見つめ、

 

 土方と原田を順に見て、頭を下げた。

 

 「信じてください。だって他に帰れる場所がありません」

 

 「俺は信じてやるぜ、嬢ちゃん」

 

 「俺は信じねえ。」

 

 「・・っ」

 

 吐かれた土方の声に、顔を上げた冬乃の前。

 

 「だが、おめえが此処に居ようが居まいが、八木さんがいいっつうんだったら俺は構わねえよ」

 

 (あ・・)

 

 「ありがとうございます・・!」

 

 冬乃はとっさに沖田を見上げた。

 

 目が合い。

 

 沖田がふっと微笑んだのを、冬乃は心の強張りが解けてゆく想いで見つめ返した。





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