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・・・
・・・さん、
・・冬乃さん
「冬乃さん」
焦がれた、あの低い声が。
冬乃の鼓膜を緩く刺激して。
決して、懐かしいなどというにはまだ、
あまりにも早すぎるはずの再会を。
それでも、もう二度と逢えないかもしれないと
一度は恐れた心がいま、かみしめて深い安堵に包まれ。
冬乃は薄い霧の引いてゆくなか。
そっと目を開けた。
「冬乃さん」
覗き込んでいた彼は冬乃の目覚めを確認すると、ふっと息をついたようにみえた。
「沖田様・・」
「十日も何処にいました」
冬乃の声に、沖田の抑揚のない声が重なった。
「・・・?」
(十日?)
聞かれた言葉を、
(いま、十日って言った?)
冬乃が呑みこむまでに、
二人の間には沈黙が落ちた。




