39.
「じゃあ本当に、沖田さんに逢ってきたと思うの・・?」
真弓の言葉に、冬乃はしっかりと頷いた。
涙の止まらない冬乃を心配したふたりは冬乃を問いただし、冬乃はついに折れて、ここでの”五分間” に体験したことを伝えたのだった。
真弓と千秋は黙って聞いていたが、最後に困ったように顔を見合わせた。
「けどうちら、冬乃の傍に、ほとんどずっと居たんだよ?」
千秋が戸惑ったように同調する。
「そう。うちらがここ出てる時も、さっきの人がちょうど入れ替わりで戻ってきてくれたし・・」
「どうして冬乃の体はここに在ったのに、向こうの世界にも存在したのかって・・不思議じゃない?」
ふたりの様子からは、やはり冬乃の言ったことを信じているようではなく。
夢を見ていたのではないかと言いたげな表情だった。
冬乃はそっと微笑ってみせた。
「千秋、真弓、」
冬乃を傷つけないようにと気遣ってくれてるふたりを心からありがたいと思う。
「むりして信じてくれなくてもいいし。ありがと」
「冬乃・・・」
「私のなかで記憶が強すぎるから夢だと思えないで、今も向こうの世界にひどく囚われてるだけ、・・」
・・・嘘。
あの世界に囚われているのは、
そんなことじゃなくて唯ひとつ、この世界よりも彼のそばに居たいと想うが為なくせに。
「心配かけてごめん。私は大丈夫だから・・」
本当は彼に逢いたくて逢いたくて、
壊れそうになってるのに。
「ねえ、冬乃、そういえば」
どうしたら戻れるかと、
意識を回復した私を喜んでくれるふたりの前で、
私はそんなことばかり、考えているくせに・・・・
「家に帰ったらさ、ねんのため、お母さんに倒れたコトちゃんと言っておくんだよ?」




