37/372
36.
ざわついた音、遠くで姦しい人の声が、冬乃を眠りから引き戻した。
「ん・・」
体が重く、ひどくだるい。
布団にすっぽりくるまったまま冬乃は覚醒していく頭の隅で、ここが何処だったかをじわじわと思い出す。
(そうだ、ここは壬生・・・)
もう皆、起きてるかな・・?
起き上がろうと布団をよけた時、おでこに不意に手が置かれた。
(為三郎?)
にしては、大きい手・・・
「大丈夫?」
手が離されるとともに冬乃の視界が広がってゆく。
目に飛び込んできたのは、白衣に聴診器をつけた、まだ若い男だった。
(・・・・?)
一瞬、目に映った姿の意味がわからず、冬乃は言葉が出なかった。
「どこか苦しいところ、痛むところは?」
「・・・」
ぼんやりと首をふりながら、冬乃は周りを見渡す。
部屋の片隅の椅子には冬乃の剣道具や着てきた私服、バッグなどの荷物が置かれてあり。
(?)
ふと、かちゃりと音がして、向こう側の扉が開かれた。
「冬乃・・!?」




