表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/372

27.


 

 「・・おい」

 

 黙ってばかりの冬乃に、芹沢が苛ついた様子で促す。

 

 (・・素直に言えば?)

 どうせ未来から来たとつっぱねてるんだから、今更何を言おうが変わりゃしない。

 

 冬乃は心に決めた。

 

 「たまたま、ここに来る前に着・・」

 「どこから、来る前にだって?」

 

 いきなり遮った鋭い声に、冬乃は咄嗟に、そのほうへと視線をずらした。

 

 その先で土方が、やはり睨むようにして、・・いや、本当に彼の場合は、睨んで、こちらを見ている。

 

 いいかげん冬乃は呆れたい気分で、その土方のほうへと向き直った。

 「ですから未来からです」

 

 「まだ言ってんのか」

 土方のほうも呆れた様子で返してくる。

 

 大概にしろと、その目は明らかに怒っていた。

 


 (なんだか・・)

 

 冬乃は冬乃で、あまりに取り付く島もないさまに、いいかげんに腹が立ってきた。

 

 「・・本当に、どうすれば信じてもらえるんですか。例えば私が明日起こることを当ててみれば信じます?」

 

 冬乃は売り言葉に買い言葉で返していた。

 

 「ほう」

 

 土方がさらに言葉を買い。

 

 「当ててみれるなら、やってみろ」

 そう言うと嘲笑を口元に浮かべる。

 

 「まあまあ、」

 みかねた藤堂が、苦笑いを浮かべ間に入った。

 

 「食事の時くらい、とりあえずいいじゃない」

 

 「いつまでもタダ飯食わすほど、うちは裕福じゃねえんだよ。とっとと吐いてくれねえと俺たちの飯が減る!」

 

 (んな、)

 そ、そんなに減るほど食べてないでしょー!?

 

 おもわず心内で叫んだ冬乃を、土方がぎらぎら光る目で見返した。

 「当ててみろ!そしたら信じてやらあ」


 「もう、土方さんってば!冬乃さんも、気にしなくてもいいからね?」

 

 (藤堂様って優しい・・)

 冬乃は救われる想いで、こちらを窺う彼に頷き返した。

 

 「土方さんの言うとおりですよ」

 

 (え?)

 だが突如、隣から沖田の言葉が降ってきて。

 

 (・・いま、なんて)

 「沖田様・・・」

 

 驚いて見上げた冬乃を彼は、静かに見返した。

 

 「当ててごらんなさい。こちらが信じるとしたら、それしか無い」

 



 「・・・」

 

 場に沈黙が、落ちた。

 

 皆から一斉に注がれた視線に、冬乃は息を呑み。

 

 (・・・本当に当てる、たって)


 明日が新選組史にのぼる日でもないかぎり、冬乃とて、明日なにが起こるかなど知るべくもない。

 

 再び見やれば、土方があいかわらずの疑わしげな視線をこちらへ投げている。

 当てられるはずがないだろう、と言わんばかりの表情がそこには浮かんで。

 

 「・・・」

 

 今一度沖田を見上げると、彼は無言のまま冬乃を見返し。

 

 その眼は、何を思うのか伝えることはなく。

 


 冬乃は心をかき乱す想いに、一瞬、目をきつく閉じた。

 



 (・・沖田様・・・)

 

 彼に逢えたのは、

 

 何故・・?

 


 冬乃は今なお沸き起こる疑問を胸内に繰り返していた。

 

 ・・・この身に起こった事象。

 これは誰にでも起こり得た偶発なのか。

 何かが作用して。たまたま冬乃の身に起こっただけなのか。

 

 それとも、

 もしも偶然なんかではなくて。

 

 必然の。成るべくして成ったものなのだとしたら。

 


 ・・・あるいは。

 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ