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23.


 「腹が空いてるでしょう?」

 視線を泳がせていた冬乃に、沖田が観察するような眼差しを向けてきた。

 

 「夜になれば真っ暗だ。こんな処で食事させるのもさすがに、と思いましてね」


 その口ぶりからは、どうやら今は沖田が冬乃の扱いの全権を担っているようだった。

 彼ならば、夜通し冬乃をこの蔵に閉じ込めておくことはしまい。

 

 「はい、空いてます」

 冬乃は、ほっとしながら頷く。

 

 沖田はその答えを聞くなり、くるりと踵を返し扉へ向かった。

 藤堂が促すように冬乃に微笑みかけると、沖田のあとをついてゆく。

 

 それに続きながら冬乃は、先程より弱くなった橙の光へ沖田たちの後ろ姿がまるで吸い込まれてゆくさまを見た。

 

 

 「・・・」

 

 不思議な気分をおぼえ。

 

 それはどこか遠くの光景のようで。

 

 一瞬、自分と彼らはやはり違う世界の存在なのだと強く感じて、冬乃はいたたまれない想いに目を瞑るがごとく、早足で二人のあとを追った。

 

 蔵の外へ出たとき、沖田が振り返り冬乃を見やった。

 

 「で、記憶は取り戻しました?」

 

 冬乃は、ぎくりと見構えた。

 「・・・記憶もなにも、」

 

 どうしようもない。

 未来から来た、それ以上の何でもないのだからそれを繰り返し伝えるしか。

 

 「私が言うべきことは以前と変わっていません」

 

 「・・・・」

 冬乃の真剣な眼差しに、沖田と藤堂が困ったように顔を見合わせる。

 

 「・・・まあ、話は後でいいでしょう。まずは食事を」

 

 沖田が案外あっさりと打ち切って、藤堂のほうが驚いたように沖田を見やった。


 沖田はその場に屈んで、草むらから何やら掴み出し。

 


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