表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
223/372

129.




 (この先も言いつけを守れないぶん・・ちゃんと私なりの反省を示さなきゃ)

 

 結局、沖田の言うとおりで。

 冬乃は。罰せられたいのだ。それによって、この罪悪感を緩和してしまえたらと。

 

 沖田が用意してくれる“おしおき”なら、きっと冬乃に真に追従不可能なものなど無いのだから。

 

 沖田の為に危険な事をするなと、

 そんな、ただ一つの。従うことの叶わない命令だけを除いて。

 

 

 

 


 

 懸命に途中まで漸う脱いでみせた服は、少しはだけたままに。やがて、

 「よくできました」

 そんな囁きと共に優しく、まるでごほうびのように、再び冬乃の唇は塞がれた。沖田の手は、そっと冬乃のはだけた服の内へと入って。

 

 (総司・・さん・・っ・・)

 

 大阪から沖田が帰ってきたあの夜のように。冬乃の、全ての感覚が、意識が。彼へと向かいゆくのを感じる。

 

 またたくまに幾重もの、身の芯を駆け抜ける情感に圧されて冬乃は、乱れだす息を、唇の隙間で懸命に紡いだ。

 

 

 (・・こんな・・に)

 

 愛する存在に、心だけでなく、この身を愛されることが、

 これほど深く。現の意識まで抉るほどの、幸せな陶酔に冬乃を溺れ込ませてしまうのなら。

 

 それなら、

 いつかに沖田が答えたように。

 肉体に魂が囲われるこの世での、これ以上ない限界にまで、

 互いの、肉体が、

 魂が。

 

 近づけた時には。

 

 

 (その時は、・・いったい・・どんなに・・・)

 


 

 冬乃は深く吐息を零した。

 

 

 (・・総司さん・・・)

 

 

 このまま愛する想いの儘に、

 

 貴方に、最後まで近づきたい。

 

 全てが貴方の事だけになって。

 他の何にも、囚われず。



 決して叶ってはならない、この想いは。

 

 もうずっと、前から、今そして更に、こうして沖田に触れられるたびに強くなってゆくばかりで。冬乃の心を残酷なまでに蝕む。

 

 

 

 こんな、もうひとつの、禁忌など。

 

 

 いっそ破ってしまえたなら。

 

 

 

 


 「そぅ……じ……さ…ん…」

 

 整わない呼吸のなか、無性にせつなくて冬乃は沖田を呼んだ。

 

 すぐに温かな眼差しが返り。

 「冬乃」

 優しい声が応え。

 大きな手が降りてきて、冬乃の頬を撫でて。

 

 その熱い手に頬を包まれながら額に、目尻に、頬に、順に口付けられた冬乃は、

 最後に半身を抱き起こされて、優しい抱擁で包まれた。

 

 「いったん夕餉に行こうか。夜は、まだ長い」

 

 冬乃の頬に直に響いたその言葉に。

 冬乃は顔を上げる。

 

 「あとはたっぷり休息所でやるから。覚悟してて」

 

 

 (う、そ)

 

 お仕置きも、ご褒美も。未だ、終わっていなかったのだ。

 いや、何より、


 (休息所・・って・・・っ)


 冬乃は。

 再び急激に加速した、鋭いまでの鼓動を胸に。今一度、小さく喘いだ。

 

 

 

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ