129.
(この先も言いつけを守れないぶん・・ちゃんと私なりの反省を示さなきゃ)
結局、沖田の言うとおりで。
冬乃は。罰せられたいのだ。それによって、この罪悪感を緩和してしまえたらと。
沖田が用意してくれる“おしおき”なら、きっと冬乃に真に追従不可能なものなど無いのだから。
沖田の為に危険な事をするなと、
そんな、ただ一つの。従うことの叶わない命令だけを除いて。
懸命に途中まで漸う脱いでみせた服は、少しはだけたままに。やがて、
「よくできました」
そんな囁きと共に優しく、まるでごほうびのように、再び冬乃の唇は塞がれた。沖田の手は、そっと冬乃のはだけた服の内へと入って。
(総司・・さん・・っ・・)
大阪から沖田が帰ってきたあの夜のように。冬乃の、全ての感覚が、意識が。彼へと向かいゆくのを感じる。
またたくまに幾重もの、身の芯を駆け抜ける情感に圧されて冬乃は、乱れだす息を、唇の隙間で懸命に紡いだ。
(・・こんな・・に)
愛する存在に、心だけでなく、この身を愛されることが、
これほど深く。現の意識まで抉るほどの、幸せな陶酔に冬乃を溺れ込ませてしまうのなら。
それなら、
いつかに沖田が答えたように。
肉体に魂が囲われるこの世での、これ以上ない限界にまで、
互いの、肉体が、
魂が。
近づけた時には。
(その時は、・・いったい・・どんなに・・・)
冬乃は深く吐息を零した。
(・・総司さん・・・)
このまま愛する想いの儘に、
貴方に、最後まで近づきたい。
全てが貴方の事だけになって。
他の何にも、囚われず。
決して叶ってはならない、この想いは。
もうずっと、前から、今そして更に、こうして沖田に触れられるたびに強くなってゆくばかりで。冬乃の心を残酷なまでに蝕む。
こんな、もうひとつの、禁忌など。
いっそ破ってしまえたなら。
「そぅ……じ……さ…ん…」
整わない呼吸のなか、無性にせつなくて冬乃は沖田を呼んだ。
すぐに温かな眼差しが返り。
「冬乃」
優しい声が応え。
大きな手が降りてきて、冬乃の頬を撫でて。
その熱い手に頬を包まれながら額に、目尻に、頬に、順に口付けられた冬乃は、
最後に半身を抱き起こされて、優しい抱擁で包まれた。
「いったん夕餉に行こうか。夜は、まだ長い」
冬乃の頬に直に響いたその言葉に。
冬乃は顔を上げる。
「あとはたっぷり休息所でやるから。覚悟してて」
(う、そ)
お仕置きも、ご褒美も。未だ、終わっていなかったのだ。
いや、何より、
(休息所・・って・・・っ)
冬乃は。
再び急激に加速した、鋭いまでの鼓動を胸に。今一度、小さく喘いだ。




