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15.




 (同じ、光景・・)

 

 建物から一歩踏み出してすぐに、冬乃は視界に飛び込んできた景色を認識した。


 見間違えるはずもない、この目の前の前川邸の塀、

 

 今出たばかりの門を振り返ればそこには、少しばかり記憶のそれと雰囲気が違うものの、平成の世にのこる正真正銘の八木邸が聳え立っていて。

 

 八木邸も前川邸も、江戸から来た沖田達の、京都での滞在先 “屯所”であり。

 

 (壬生・・)


 ここは、確かに。


 壬生の地で。


 「・・・沖田様、」


 冬乃は隣の存在を震える瞳で、見上げた。


 (このひとは、本物の、沖田さま・・・)


 ずっと想い続けたそのひとが、今ここに、自分の隣に居るということが。


 (こんなことが起こるなんて)


 もう。


 夢でもいい。


 夢でもいい、永遠に覚めなければ。


 どうか、


 「沖田様、私はずっとここに居てもいいでしょうか」


 彼から離れたくない。


 いちど離れたら最後、二度と戻って来られないかもしれないのが怖い。


 だってもしもこれが奇跡とよぶものならば。

 それが幾度も叶う保障なんて、ない。


 「冬乃さん、貴女が事実、密偵の類ではないのであれば、貴女がどこに居ようと誰も構いませんよ」


 沖田の低い声が、静かに、しかし冷たい響きを帯びて冬乃へ届いた。


 (・・・っ)

 冬乃の心に痛みが奔り抜ける。


 「沖田様っ、私みたいな女が本当に密偵だなんてお思いですか!?」


 泣きそうな叫びで返した冬乃に、沖田は目を見開いた。


 「貴女は、自分がどこで倒れたのかも、覚えていないと・・?」



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