狂乱 3
来週2月22日(木)から、ラピスの心臓のコミカライズ版が始まります! 詳細は活動報告をご覧ください。
狂乱 3
一人で飛び出したディカを狙うムラクモの輝士隊が戦場に躍り出た。
初陣以来の悪夢のような光景を前に、ディカは手綱を震える手で引き、馬を止めた。
「ディカ様!」
聞き慣れた声に、ディカは頬を緩ませ振り返り、
「アーカイド……ッ」
かけつけたアーカイドと輝士たちが、ディカを守るように前面に展開した。
「いますぐお戻りください」
アーカイドの声は、微かに震えを帯びていた。
「ごめんなさい。アーカイド、こうなると思いながら、あなたを巻き込んでしまった」
アーカイドは目を見開き、
「私がディカ様を追うとわかっていて……」
ディカは頷いて、後ろめたさを隠すように視線を落とす。そのまま後方を見やり、
「お婆さまは……」
アーカイドは渋面で首を振り、
「いえ、残念ながら……」
「バライト重輝士、本隊が!」
随伴するアーカイドの部下が大声を上げた。
後方にいるはずの増援軍が、本隊を中心に前進を始めていた。
「まさか……」
その光景に、アーカイドは驚きの声を上げる。
ディカは前進する増援軍を見つめながら、
「動き出した……」
アーカイドはディカを見つめて、
「ここは目立ちすぎます、今すぐ戻りましょう」
ディカは胸の前で拳を握り、
「私は戻らない。身勝手なお願いだということはわかってる、でも、私に力を貸してほしい」
強固な意志をもってアーカイドを見つめた。
アーカイドは視線をディカに固定し、
「そのお顔――ディカ様の御母上を思い出します。あなたが生まれたその日から、私はあなたにお仕えしております、なんなりとご命令を」
一瞬頬を緩ませた後、厳しい表情で敬礼した。
ディカは頷き、
「中央のムラクモ軍を引きつけて司令官を援護する」
命令をたどたどしく伝えた。
「かしこまりました。防御隊形をッ――」
アーカイドが素早く指示を出すと、ディカを中心として輝士たちが隊形を整え、向かい来るムラクモの輝士隊に対し、迎撃態勢を整えた。
*
「く……ッ」
前へと押し流されていく軍を抱えつつ、エゥーデはひりつくような焦りを感じていた。
恐怖にかられた集団は、もはや制御不能に陥っている。後尾から広がる不安が、戦場という特殊な状況において、兵士たちを容易く混乱の渦に突き落とした。
「各隊隊長は隊列の維持を厳命せよッ」
部下たちが叫びながら命令を伝えるが、その声は集団が発する騒音に掻き消される。
「将軍ッ、手に負えません、このままでは!」
隊列を戻そうとする力と、前に逃れようとする力、相反する意志と意志がぶつかり合い、群れの統制は完全に消失する。
エゥーデは状況を深く理解していた。
戦場で統制を失った集団が、一塊になって前進を続けている。それはつまり、敵の晶士の前に無防備で晒されるということだ。
前方に見える景色のなかで、アーカイドがディカに合流する様子が目に入る。しかし、アーカイドは戻ることなく、ディカと共に戦場のさらに奥深くへと進み、ムラクモ輝士隊と交戦状態に突入した。
有能な副官がいない状況で、最後尾に陣取ったたった一人の人間に、大勢の兵士たちが正気を奪われている。
――なんということか。
鍛え上げてきたという自負のあった自軍の脆さを嘆きながら、エゥーデは天を見上げ、指揮杖を高く振り上げた。
*
レノアが率いるカトレイの輝士隊が、ムラクモの従士隊と衝突する。
叫声と金属音。鋭い武器と、飛び交う晶気。
人々の死にゆく音が、醜い旋律となって、戦場に似合いの血の色を塗り重ねていく。
輝士に対して、彩石を持たない従士は、なんら抵抗できる術を持たない。その二つの衝突の結果は、残酷なほどの力の差をもって、カトレイ輝士隊が蹂躙する結果となった。
レノアは晶気を使って体を変化させ、獣の目と、鋭い牙、強靱な尖った爪を伸ばし、馬上からムラクモの従士たちを一掃する。
カトレイ輝士隊とムラクモ従士隊の衝突は、わかりきっていた勝敗のままに喫した。
隊長らしき格好をした中年の従士を仕留め、レノアは浴びた血をそのままに、視線を周囲に泳がせた。
――そろそろか。
準備を終えたムラクモの晶士が砲撃を開始してもおかしくない頃だが、岩石の塊や巨大な水球が降り注ぐ気配は未だにない。
次の行動に迷いが生じかけたその時、
「お姉様!」
シルフが指さした先を見て、レノアは目を大きく見開いた。
ぽっかりと開いていた中央に向け、ボウバイト将軍が指揮する増援軍が前進している。
「馬鹿なのか……」
増援軍の様相を見て、レノアは独り言のように毒づいた。
進軍を開始した増援軍は、まるで統率のとれていない様子で、一塊の集団となって戦場に飛び出している。
「いや、違う――」
戦いにおいて、この場の誰よりも経験豊富であろうボウバイト将軍が、あえて晶士の前に無防備を晒すような愚を犯すのはおかしい。
「――なにかあったな」
その結論に至る。
――それなら。
レノアは従士隊の掃討が終わりつつある仲間たちに向けて、後退の合図を送った。
「一時後退する、後退だ後退、全隊退け!」
シルフが困惑を滲ませ、
「ですが、予定ではここで晶士の砲撃を誘発して散開するはずでは」
レノアはシルフに笑みを見せ、
「中央にでかい的が現れたんだ、それを利用しない手はない。カトレイ輝士隊は速やかに撤退、敵の視線をボウバイト軍に釘付けにする」
*
「准砂、増援軍が動き出しました!」
レオンから報告を聞き、シュオウは強く頷いた。
「これで形になった」
マルケはほとんど感覚のない手で手綱を握りしめ、
「もういい頃合いだろう、こっちも戻ってアリオト兵を前進させよう」
併走するバレンがマルケを睨めつけ、
「まだだ」
シュオウが後方から前を指さし、
「奥の線を踏み越える。喉元に剣をちらつかせて、向こうの全力を引き出す。下がるのはそれからでいい」
シュオウが示す先は、ムラクモ軍の敷く陣の目の前だった。
人と人との距離に快と不快があるように、戦いにおいても互いの距離感、間合いは大きな意味を持つ。
手が届く距離まで接近を許せば、晶士による砲撃では対処が難しくなり、中近距離を得意とする輝士が迎撃に出ざるをえなくなる。
「簡単に言ってくれるが……」
マルケは見開いた眼で、向かって来るムラクモの輝士隊を見つめつつ、さらに馬を走らせた。
シュオウがマルケの肩に触れ、
「話の続きを聞きたい、アゼリアスと盾はどうなった」
マルケは呆れる心地でシュオウを見やり、
「状況を考えてくれ、今聞きたがるようなことなのか?!」
「話し始めたのはそっちだ」
マルケは引きつった顔で馬を走らせながら深く息を吐き、瞼を下げて、半眼で語り始める。
「細かい部分は省くが、聖祖亡き後、四人の使徒たちは互いを疑い、争うようになった。各々が手にする神器を用いた戦いは凄惨を極める。剣が弓を断ち、槍が剣を破壊し、弓が盾を焼き、盾が槍を腐蝕させた。結果、それぞれの持ち主も命を失うこととなった。これが光受神話として語り継がれる聖典の一説だ」
話に耳を傾けていたシュオウは声を上擦らせ、
「……話がおかしい」
マルケは頷き、
「そう、一つ目が破壊された時点で、四つの神器すべてが破壊されたという話に矛盾が起こる。四使徒四神器はそれぞれが象徴となり、今現在に至るまで、それらを崇める個々の宗派が存在するが、この話は大昔から神の性別がどちらであるかという論争と同じく、各宗派間の争いの火種となっているんだ。だがそもそも、この神話にはさらにおかしな点があってだな――」
強い関心を見せるシュオウが身を乗り出してマルケの顔を見て、
「どんな?」
マルケは向かって来る青い軍服の輝士隊を前に上半身を仰け反らせ、
「今話した四神器すべてが、現存しているということだッ――――」
「准砂!」
バレンが大声で上げ、前方を指さした。
集団で向かってきていた輝士の群れから、重輝士を乗せた巨体の戦馬が一騎で飛び出した。
ムラクモの輝士たちが扱う長剣よりもさらに長く太い剣を持ち、左腕を守る籠手は、目立つ赤と黒色に塗られている。
怯えや気負いのない顔付き、自信に満ちた姿勢、虎視眈眈と獲物を狙う鋭い目つきでシュオウを睨むその重輝士は、見るからに名のある英雄の気を溢れさせていた。
マルケは顔を引きつらせ、
「くるぞくるぞ、いかにもな奴が、引き返すかッ?!」
シュオウが剣を構えた直後に、発光する晶気を纏った一本の矢が、甲高い風切り音を残して真横を通り抜けた。
放たれた豪速の矢は弧を描くことなく、一直線にムラクモの重輝士に向かって飛んでいく。
重輝士は放たれた矢に気づき、前面に晶壁を張り巡らせる。離れていてもはっきりと形が見えるほどの強固な晶壁に、放たれた矢が衝突した瞬間、接地面から強烈な光が鉄火の如く飛び散り、矢は晶壁を貫いて、重輝士の胸を守る防具ごと、大きな風穴を開けて貫通した。
重輝士の体が地面の上に転がり落ちる。
後方から追従するクロムが、立ち乗りの姿勢から、白い歯を見せて成果を誇るように胸を張った。
「なんて奴だ……」
マルケは驚嘆し、クロムを見やった。
正確無比な狙撃と、晶気を纏わせた矢の威力、輝士として一国に一人いるかいないかの傑物であるのは間違いない。
シュオウがクロムを見て腕を高く掲げると、クロムは途端に勇壮に引き締まっていた顔を崩し、
「はああッ――」
子供のような無邪気さで必死に手を振った。
思えば、マルケの目から見るシュオウとその仲間達の繋がりは、理解の及ばない関係だった。
北方の名門家出身のクロム、類い希な身体能力を持つ南方人のシガ、そして燦光石を有する大貴族サーペンティア家公子のジェダ。この三人は一目でわかるほど、それぞれが傑出した才能の持ち主だ。その三人が、シュオウという彩石も持たない平民出身の男の元に集っている。
シュオウはクロムから視線をはずし、前を向いて笑みを零し、おもむろに口を開いた。
「予定を変えて、このまま奥まで突っ込む」
信じられないような言葉を聞き、マルケは目を丸くした。
「敵陣深くをかすめて主力を誘い出し、温存したアリオト兵で一気に叩く手はずだろう?」
「それはもういい。敵の主力を突破して、一気に片を付ける」
たった六人だけで大軍に飛び込むと言い出したシュオウに、マルケは振り返ってその顔をまじまじと見つめる。
シュオウは猛獣のように鋭い眼を見開き、
「――負ける気がしないんだ」
凄絶な笑みを浮かべた。
「…………」
マルケはもはや、前から感じる恐怖心を忘れつつあった。
歴戦の兵士であろうと、生死を賭けた場に出れば、怯えや緊張で多少なりとも縮こまるものだが、シュオウにはそれがまるで窺えない。
――こいつは。
前にあるものより恐ろしいものを後ろに乗せているのではないか、という疑念に囚われる。その感情が恐れとなって身震いを呼び起こした。
マルケの鼻から、吸い上げたはずの鼻水が、再び長く垂れ下がった。
*
「アリオト軍本隊が未だ動く気配がありません」
カトレイ輝士隊が後方へと下がる途中、シルフがレノアに報告を伝えた。
レノアは一瞬のうちに思考を巡らせ、
「主力をまだ温存するのか……?」
戦場の各所からばらばらに攻め立て、敵を混乱の渦に巻き込み、早期に決着をつける作戦だったはず。
当てにできない中央のボウバイト軍の存在を考慮に入れても、司令官の意を反映して行動をとれるアリオト軍の投入は、勝敗を決する重要な決め手である。
――それをあえて遅らせているのだとしたら。
レノアは拳を上げて、
「後退、止め」
全隊に停止を命令する。
「全隊停止ッ、その場に留まれ!」
シルフが自発的に副官のような役割をこなし、レノアの出した指示を徹底させる。
戦場のど真ん中で、レノアは瞼を下げて熟考する。
先行したシュオウが敵の主力を誘い出し、撤退と見せかけて晶士による砲撃を浴びせ、無傷の歩兵と輝士によって一気に攻勢を仕掛ける手はずになっていた。
その作戦の進行にズレが生じているのだとしたら、理由はおそらく、敵の誘い出しが完了していないということ。
戦場の後方から流れてきた突風が髪を強く押し流した瞬間、レノアは大きく目をかっぴらいた。
「どうするのですか……?」
シルフが不安げに問う。
レノアは前を見つめ、
「待機中の歩兵と晶士を前進させて、作戦の進行を早める」
急な予定変更を告げられ、シルフは僅かに難色を示し、
「それはなぜ、ですか」
レノアは僅かに頬を緩ませ、
「我々の司令官閣下が、敵を弱いと判断したかもしれない」
シルフは困惑顔でレノアを見つめ、
「ムラクモ軍が、弱い……?」
その時、
「砲撃が!」
その報告があがると、爆音を轟かせ、発光する巨大な水球がムラクモ軍から打ち上がった。
レノアは無様なほど統制を失っているボウバイト軍を見つめ、
「的当てが始まった――後続との合流を急がせろ」
「はいッ」
指示を受けたシルフは手慣れた様子で各隊に指示を飛ばしていく。
――めちゃくちゃだ。
未知の戦況に直面し、選択肢を迅速に判断しなければならない中で、レノアは内心で焦りを感じながらも、表面上の冷静な態度を保ちつつ、必要な策を練り続けた。
*
轟音が空に鳴り響く。
必死に後退を命じていたエゥーデは、その音を耳にして全身から血の気が引いていく感覚に襲われた。
「まずい――」
エゥーデは馬を操り、集団から一人抜け出した。
「――輝士隊前進ッ、我に続けぇ!」
その意図に気づいた者達が素早く後に続く。
増援軍は塊となったまま、意志もなく戦場に取り残されていた。
退くことも出来ず、もはやエゥーデに残された判断は、愚直に兵を前に進めることのみである。
不気味な重低音と共に、空に巨大な水球が打ち上がる。
「散れッ、前進しつつ散開ッ!」
集団から抜け出した戦馬を駆る輝士たちが、全速力で前へと駆けだした。
状況を理解した歩兵たちも、必死の形相で四方に散っていく。直後に、放たれた水球がボウバイト軍の目前に着弾した。
爆ぜるように水球が弾け、直撃を受けた一部の兵士たちが、無残な姿で横たわる。
そしてまた、
「さらに砲撃ッ、こちらに向かってきます!」
絶叫に近い報告が上がる。
爆音が鳴り、巨大な岩石が軌道をずらして打ち上げられた。
エゥーデは形相険しく歯を剥き、
「総力を以て敵陣に突撃する――行けッ!!」
遠くに見えるディカの姿を目で追いながら、指揮杖を強く振り下ろした。
戦場から無傷での撤退を目論んでいたボウバイト軍は、いまや無計画の捨て身で突撃をかける、烏合の衆と成り果てていた。
*
全身に伝わる四足の振動を感じながら、シュオウは白道埋める人の群れを凝視していた。
一つの意志を基に動く集団は一つの生命と同じだ。
蟻や蜂、その他多くの生物や、時には狂鬼にもそういった習性を持つものを、シュオウはその目で目の当たりにしてきた。
人間も同様に群れを形成する生き物である。
群れの中には序列があり、高みから下される命令が、集団の行動手順を決定するが、軍隊はそうした体系の極地ともいえる存在だ。
一つの意志を元に動く集団、それが優秀であるほど、意志の実行は乱れることなく行われるが、その状態はまさしく、集団が統一された一つ意志のもとに行動する巨大な一個の生命に等しくなる瞬間でもある。
一方、シュオウが司令官として抱える軍は、その対極に位置する存在だった。
アリオト兵は渋々に従っている状態で、ボウバイト将軍が率いる増援軍はまるで協力する意志がない。唯一といっていい味方であるカトレイは、自我の強いレノアが半独立状態で指揮を執っている。
ムラクモ軍は優秀な群れだ。統制のとれた組織、洗練された階級制度に、従順な兵士たち。
だが、しばらくの間その一員として関わってきたシュオウは、そこから生じる脆さも知っている。
軍隊という組織内で統一された意思を持って戦う集団は、綺麗に戦うことに慣れすぎている。
アマネの下で学んできた技は、単純な武術の教えではない。その技の理念の根底にあるのは、心を掌握する術である。
体を打たれても意志は保たれる。
肉を覆う皮膚を切られても、まだ心は残る。
行為そのものではなく、生物は痛みによって、その心が濁りと淀みに囚われるのだと教わり、それをまた、シュオウは身をもって学んできた。
心の芯に届く痛み、全身の根幹を成す骨に痛みが届いた瞬間に、平常心は脆く砕け散る。
我を忘れた四肢は、原始的な衝動によってのみ制御され、単調と愚直さに塗れた精神は無防備となり、掌握を容易く実現させる。
シュオウはいま、目の前に在る一つの群れを、一個の生命として捉えていた。
巨大な狂鬼と対峙した際に、一心に弱点となる輝石を狙うのと同じように、ムラクモ軍という一つの命が抱える弱点を、最短距離で狙う必要がある。
運び手として馬を操るマルケが、鼻水を垂らしながらなにかを必死に訴えているが、シュオウの耳にその声はもう届いていなかった。
隻眼を見開き、前方に展開する兵士たちの動向を細かく頭に刻み込む。戦馬の軌跡、剣を抜き放つ輝士の目線、一心不乱に突撃をかける従士たちの一歩の歩幅。
視るものすべてに線を引き、その関係性を結びつける。
マルケの襟を掴み、右へ左へと振り回す。進行方向を最適な進路に調整し、従士たちの集団との衝突を避け、複数の輝士隊とすれ違いながら、最小の動きで障害となる相手を切り捨てる。
左右をアガサス家の盾が固める。後方からクロムの正確無比な狙撃が輝士たちを仕留める。全身をバネのようにしならせたシガが敵軍の中に飛び込み、並外れた膂力によって輝士や従士たちを蹂躙する。
敵を圧倒しつつ、厚い兵士の層を駆け抜け、突破した。
その視線の先にあるのは、地面に立ち、杖を握って立ち尽くす、ムラクモ軍の後衛晶士たちだった。
ここはムラクモ軍の中枢、急所へと至る道。
集団は一個の生命と同じく、剣が皮膚を裂き、刃が肉を切り開き、痛みが芯に届いた瞬間、我を忘れて発狂する。
シュオウは馬から飛び降り、剣を振りかざす。その視線の先に居た晶士の一人が、青ざめた顔で後ずさり、空気をつんざく悲鳴を上げた。
青い軍服の群れが、不可逆的な狂乱の谷底へと堕ちていく。
逃げ惑う晶士たちの背中を見た瞬間、シュオウはこの戦いの勝利を確信した。
来週2月22日(木)から、ラピスの心臓のコミカライズ版が始まります! 詳細は活動報告をご覧ください。




