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私は目を大きく見開いてデューク様を見つめた。
……びっくりしたわ。
「いいか?」
「は、はい」
私は戸惑いながらも首を縦に振る。
デューク様は建物の扉を閉める。最後に外をチラッと見ると、ミアはもう既に患者たちにストレッチをさせていた。
なんか慣れてるわね、ミア。
「なんでしょう?」
私はデューク様へと視線を移す。
すると、突然デューク様は私の体を引き寄せた。
……え、何が起きたの。
‥………私、今、デューク様の腕の中にいる?
デューク様の鼓動が聞こえる。
気付けば、私はデューク様に力強く抱きしめられていた。
「……次、アリシアと会えるのがパーティー当日になるかもしれない。アリシアを満たしておく」
…………なにこの甘い展開は。
私はどうすればいいか分からず、固まってしまう。
顔だけでなく、体中が熱い。緊張で心臓が爆発してしまいそうだが、デューク様の温もりに包まれながら私は幸せを感じていた。
なんだか心が溶けてしまいそうだわ。
「アリシア様~!」
ミアの声が外から聞こえてきて、私は勢いでデューク様から体を離した。
もう行かないと!
私は赤くなっている頬を手でおさえながら、デューク様を見る。
デューク様は満足気に笑みを浮かべていた。
「俺に負けるなよ」
デューク様の言葉が心に響く。
パーティーまでにデューク様は平民の心を掴み、私は貴族の心を掴む。それに対してのセリフだろう。
デューク様はそれだけ言うと、扉を開けて先に建物から出て行った。
私は必死に熱を帯びた顔を冷まそうと努力する。
いつもデューク様の方が余裕をもっている。それがなんか悔しいわ。
「デューク様、アリシア様は?」
「掃除の最終チェックをしている」
ミアの言葉にデューク様はそう返しているのが聞こえた。
私のために嘘をついてくれたのだろう。
……とりあえず心を落ち着けるのよ、私。
深呼吸をゆっくりと行い、気を引き締めて、建物の外へと足を進めた。




